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先々週末のイースターを、オランダで過ごしました。たまたまむかし農場だった家に住んでいる友人が、そのロケーションを生かして、イースター・パーティを主催してくれました。
↑イースター恒例の「卵探し」中・・・
オランダ人は殆ど外食をしません。倹約を尊ぶ気質なので、レストランに行って食事をするということ自体、贅沢なことのようです。昼食だって、みんな食パンにチーズを挟んだだけの質素なものを持参します。レストランに行くのは、何かのお祝い事があった特別な時のみ。
そのため、誰か友達と一緒に食事をするといった場合は、ほとんどが「おうちごはん」。自宅に招き、招かれるということがけっこうあたりまえの日常なのです。なので、オランダ人は「ホームパーティの達人」。その技をご紹介します。
■なにかにつけてホームパーティ
まず、ホームパーティといった場合、2つのケースがあります。1つめは5〜6人くらいまでの、招待制の小さな集い。「一緒にごはんを食べよう」というのが趣旨です。
2つめは、それ以上の人数を呼ぶ大パーティ。この前訪れたイースター・パーティもこの類い。バースデイ・パーティや、ハウス・ウォーミング・パーティ(引っ越しパーティ)などもこれにあたります。オランダでは、誕生日の本人が自分でパーティをオーガナイズする決まりなのです。私もそれほど広くない自宅で、20人規模をホストした経験があります!(オランダ在住邦人なら誰もが通る道です)
前者のパーティと後者のパーティで、違いはそれほどありませんが、前者を「おうちごはんパーティ」後者を「大パーティ」としておきましょう。
■「ワリカン」ではなく、「分担/シェア」の文化
招かれた側は、おうちごはんパーティの場合は必ずワインを持参します。バースデイ・パーティやハウス・ワーミングの場合は、ワインorプレゼントを持参します。このまえのイースター・パーティは逆で、ドリンクはホスト持ち、ゲストが「なにか一品、卵料理を持参」でした。私はアイスクリーム・メーカーを持ち込み、その場でアイスクリーム作り。
一般的には18:00から始まるのであれば、夕食つき。19:30以降からであれば、ドリンク+スナックのみ。いずれの場合も、日本のような材料費ワリカン制とか会費制はありません。すべてホスト側のもてなしの一部なんですね。そもそも材料費なんてじぶんで料理を作ればたいした額ではないので、そこをケチケチする文化ではないようです。
ここはオランダ人のカンチガイされやすいところ。英語で「Go Dutch(オランダ式にいこう)」というイディオムはなぜか、「ワリカンしよう」を意味してしまうのですが、実際オランダのカフェやバーではワリカンの場面に遭遇した事はほとんどありません・・・。どちらかというとそんな楽しい場で数字で割ったり、キャッシュをやりとりするのを嫌う文化なのです。むしろ進んで人に奢ります。「これはじぶんが払うよ」「じゃあ次のラウンドはボクが持つよ」。そんな「シェア」の文化。なのになぜ「Go Dutch」みたいなぬれぎぬ着せられてしまったのでしょう・・・。オランダ人がケチで有名だから?
確かにケチです。質素倹約を尊びます。でもだからこそ、ホームパーティなのです。そうすれば、思う存分振る舞えるから。なので男も女もみな、料理の腕を上げる努力をします。「ボクはBBQ系のグリル料理が得意」とか、「私のピザは生地から作るから美味しいのよ」など、披露したい料理がひとつやふたつあるのが当たり前です。
バースデイ・パーティの場合、フードもドリンクもホスト持ち。つまり誕生日の本人が、みんなに振る舞うしきたりなので、そんな得意料理のひとつやふたつないと困るのが現状。こんな規模のパーティをもしレストランやバーでやっていたら、いくらあってもお金が足りないので、自ずと自宅パーティとなるわけです。フードを自分で作れば、ドリンク込みで20人2万円で収まります。大好きな人たちが自分のために集ってくれて、一緒に楽しい時間を過ごしてくれるのであれば、とても安い出費です。そしてホストは、パーティをオーガナイズするイニシアチブをとる時点で感謝され、社会的にもリスペクトを得ます。
そもそもホストは「自分のパーティでキャッシュを出させるなんて、粋ではない」と考えます。なのでホスト側は、会費が発生しないように、かつ自分に負担がかかりすぎないように、あらかじめ役割分担し、頼むものは頼み、バーであれば「21:00まではドリンクフリー」などの上限を明確に設定し、それをゲストとコミュニケーションするのです。あくまでワリカンではなく、「シェア」の文化です。
↑アイスクリーム制作中
■ホームパーティの延長戦で
私はこの大パーティの延長として、じぶんの結婚式もすべて自らオーガナイズしました。料理も自らしました。お好み焼きを約80人分、花嫁衣裳姿で焼いたのです(笑)! お好み焼きの材料費は安いもので、確かぜんぶで1万円くらいだったかな。結婚式の朝に、花嫁みずから自転車で市場にキャベツ10玉買いに行きましたよ。式が始まる2時間前には、花嫁はサラダのドレッシング作り、花婿はスープ作りに勤しんでいました(笑)70年代風ラウンジスタイルのクラブを貸り切って、会場・ドリンク・食器レンタルなども併せてぜんぶで20万円弱の格安パーティ。もちろん会費はとりませんよ!さきほど述べた通り、そういう文化ではないんです。
さすがに新郎新婦の手料理を振る舞うパーティは、オランダ広しといえどもあまり聞いた事がなく、みんなの記憶に残るウェディング・パーティだったようです。(笑)
お金に余裕があればケータリングが普通です。それか、料理上手な人をあらかじめ頼んでおくとか。そこで呼ばれるシェフはたいていセミプロで、パーティ料理の達人。私はこれまであらゆるパーティで、この類いの料理上手な人にレシピを聞きまくり、パーティ料理の腕を上げてきました。
■訪れる側のマナー
そこに集まる人たちに共通するのは、みんなホストと友達だということ。逆にいうと、そこにいるメンツでだいたいホストの人柄や興味、社交テイストがわかってしまいます。招待された側のマナーは、そこにいる誰もと交流する気持ちで訪れること。まず着いたら自ら、そこにいる全員と握手して軽く挨拶します。これがわからなかった移住当時、日本人的に恥ずかしがって誰かが話かけてくれるのをずっと待っていたなんてこともありましたっけ・・・(笑)新参者は、努力せねばならないのが世のきまり。
私のアーティストとしてのキャリアは全て、この類いのパーティで築いてきたと言っても過言ではありません。地縁が全くない私にとって、見知らぬ誰かにじぶんから話しかけることを地道に繰り返すしか、人脈を築くことができないわけで・・・つまりお酒好きなのが幸いしたわけですね。
■ホスト側の準備
じぶんでホストしながら料理したりサーブしたりする場合「決して慌てない」ことがコツのようです。「早く出さなきゃ」と慌てると、緊張感が走り、その緊張感を家人も察知してしまうので、雰囲気がギスギスしてしまいます。まずはお客さんに酒とつまみさえ出しておけば、だいじょうぶ。鼻歌うたいながらじぶんの世界に没頭する、くらいの余裕が大事だということですね。
オランダではベジタリアンが多いので、最大公約数的にベジタリアン食を作ることが多いです。材料も安上がり。つまみに肉や魚を入れれば十分ですしね。サラダ、スープは事前に用意しておいて、主食のパスタはその場で作り、デザートは人任せか、チーズを用意しておく、というのが私のいつものパターン。量は作りすぎないのも重要で、余ってしまうと見栄えがしないので、七掛けくらいの量がちょうどいいですね。
こういうパーティでは、男性がちょこちょこ動く方が映えます。奥さんはくつろいで呑んでばかり、というくらいでもいい。ダンナさんがホスト役を投げ出していいのは、シンデレラタイム以降(笑)。私は料理だけはしますが、他の部分、たとえば買い物、客の出迎え、選曲やBGM、見送り、片付けなどはぜーんぶ男性に丸投げで、呑みます!
そもそもオランダのパーティではビールをクレート単位で買うので、その時点でもはや女性の仕事ではない。人数が多いときは、ビールサーバーをレンタルしたりもしますが・・・。そのくらいオランダ人は、ビールを水のように飲むのです(笑)
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最近、花粉症で体力が落ちてしまってからは、じぶんの5月の誕生日にパーティをやることができなくなってしまいました。そのかわり、息子がパーティの年頃になってきたので、毎年パーティをやってあげています。7、8歳のころからホスト役は息子に一任するようになりました。私はただのアシスタント。オランダの子達は、このようにパーティ・トレーニングされ、大きくなっていくのですね。