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こんばんは、酒井孝祥です。
昔、ある結婚式場のプランナーさんが、新郎新婦に対して「それでは新郎新婦、〇〇までご案内いたします。」と呼びかけたスタッフのことを指して、「あの人は言葉遣いが分かっていない。普通“新郎新婦”じゃなくて“ご新郎ご新婦様”でしょ。」と言っているのを耳にしたことがあります。
しかし、式場の会場スタッフの間で、よくそういう言い方がされるものの、実は、“ご新郎様”とか“ご新婦様”という呼称は、三重敬語とも解釈出来ます。
“新郎”や“新婦”自体が既に敬称なので、それに“ご”をつけてさらに“様”をつけたら、“お先生様”“お先輩様”などと呼ぶのと同じようなもので、くどい印象があると僕は感じています。
そういうわけで、僕が司会をするときには、お2人のことを“ご新郎様”“ご新婦様”とは呼ばず、“新郎”“新婦”と呼びます。
でもそれよりも、“お2人”とか、“〇〇さんに〇〇さん”と個人名のファーストネームを使うことの方が多いかもしれませんね。
個人名で呼ぶ場合、非常に注意しなければいけないのは、1日に2件の披露宴の2件目のときに、誤って1件目の新郎新婦の名前を言わないようにすることです。
それを言ってしまったら、下手すれば会場出入り禁止ものです。
余談ですが、「本日は〇〇(会場名)へようこそお越しくださいました。」と言うときに、誤って似たような雰囲気の別の会場名を言ってしまった人などもいるそうです。
そういうミスは本当に洒落になりませんね。
しかし、いくら日本語的に考えて過剰な敬語であったとしても、他のスタッフが皆“ご新郎ご新婦様”と呼ぶのに、司会者だけが“新郎新婦”と言っていたら、当のお2人にしてみれば、呼び捨てにされている感が出てくるかもしれません。
ですから、その会場で“ご新郎様”“ご新婦様”という三重敬語がスタンダードになっているようであれば、“ご新郎”“ご新婦”もしくは“新郎様”“新婦様”という風に、二重敬語に留めて呼びかけるようにもしています。
とは言うものの、年輩のゲストなどで、日本語の言葉遣いに敏感な人がいるかもしれないことを考えれば、やはり過剰な敬語は使いたくないものです。
出来れば打ち合わせのときに雑談的にでも、“新郎新婦”というそれ自体が敬称なんですよと話をして、決して呼び捨てにしているわけでないことを事前にお2人に教えておきたいものです。
“ご新郎ご新婦様”に限らず、結婚式場内でおかしな日本語が飛び交っていることが時折あります。
サービススタッフがビールやコーヒーのことを“おビール”や“おコーヒー”という風に、本来“お”をつけるべきではない外来語に“お”をつけたりですとか、案内スタッフが「“右手側”にお進み下さい。」と、“右手”だけで右の方向を意味しているにも関わらず、さらに“側”をつけたりしているのを耳にします。
僕がゲストとして披露宴に列席するときなどは、日本語の使い方を理解しているかどうかで、その会場スタッフの教育レベルを密かにジャッジしております。
この手の話題として、結婚式場特有の“忌み言葉”もネタになるかと思いますが、それはまた別の機会にて…
そして皆様、もし皆様が参加する披露宴で司会者が「新郎新婦」とお2人を呼びかけても、決して呼び捨てにしているわけではないことをご理解下さい。
次回は、「早替えという演出」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。