日本が右傾化しつつあると言われていますが、この現象はLGBTの権利擁護運動にとってマイナスの影響を与えるのでしょうか?
そもそも、『右』とか『左』などと呼ばれる政治的信条の様なものが、LGBTの権利擁護運動に何らかの影響を与えるものなのかという点が気になります。
確かに、保守的な考え方からすると、現状の家族制度に風穴を開けようとする同性婚制度などは、到底許容できるのもではないのかもしれません。
保守という定義を紐解いていくと、西欧の宗教的考察に行き着きます。調べれば調べるほど難解で、現在の日本の状況にきちんと当てはめようとすると齟齬が生じる部分もあります。
何となく雰囲気で、右とか左とか、保守的云々といった、感覚的判断をしていて、はっきりとした定義を理解しているわけではない人が多いのではないでしょうか。
LGBTの中にも、当然、保守的な人もいれば、革新的考えの人もいるでしょう。
現在の日本の右傾化と呼ばれる現象は、LGBTの皆さんを見る目を変化させるような要素をあまり持っていない気がします。
日本に在住する外国人のLGBTの方によると、日本はLGBTを保護する法制度は乏しいかもしれないが、とても暮らしやすく、偏見をあまり感じない国だという声をよく聞きます。
以前のレインボーノートにも書きましたが、日本は欧米と違って、宗教的理由でLGBTを排斥するような風土はほとんどありません。法的保護はされていないけれども、なぜか居心地の良い環境でもあるのです。
権利を勝ち取るためには、ある程度の闘争が必要です。そうして勝ち取った権利が法制化されていきます。
欧米では、そうしたLGBTの権利獲得のための闘争が、長い間行われてきたという歴史があります。だからこそ、同性婚制度などの法的位置付けがきちんとなされているのです。
先日、大変興味深いイベントの案内を頂戴しましたのでご紹介します。
3月8日に福岡アメリカン・センターでシンポジウムが行われます。
このシンポジウムに、大阪・神戸のアメリカ総領事館の総領事が参加されるのですが、この方は、男性と同性婚をしている男性です。
そして、その総領事の配偶者である男性に、日本政府は「外交官の配偶者」というビザを発給しました。
同性婚制度のない日本で、海外で同性婚をしているカップルの配偶者を法的に処遇したという大変珍しいケースです。外交官という特殊な立場の人に配慮したものではありますが、このニュースはLGBTの皆さんの間で、大変大きな関心を呼びました。
海外では、社会的地位の高い人物が、セクシャルマイノリティであることをカミングアウトしていることが多いということを、あらためて知るニュースでもあります。
LGBTであるか否かを問わず、自然権として有している人権の根本的概念を理解することで、他者を個人として尊重することの大切さを学ぶことができるのではないでしょうか。
自らが選ぶことのできない理由により、マイノリティという立場を背負った人々を、単に少数者(マイノリティ)として差別したり、マイノリティという括りで取り扱うのではなく、個人個人、一人一人の個性として尊重する考え方を持ちたいものです。