よく「お花屋さん」で見かけるカーネーション。
この花には不思議な歴史があるのを私は知らなかった。
私たちが日頃見かけるカーネーションは園芸用の交雑種であり、
原種の所在や栽培起源などは「不明」なんだそうな・・・
日本への園芸種の渡来は江戸時代末期とされており、
「オランダセキチク」と呼ばれていたそうである。
現在、カーネーションはバラやキクと並ぶ三大切り花として室内で観賞用に
広く用いられていて、平成20年産の花卉作付面積と出荷量は
約3億8780万本(農林水産省)とも言われている。
国外では、古代ギリシャ時代に既にカーネーションは観賞されていたといわれるが、
広く栽培される様になったのは16世紀に入ってからである。
10世紀の初め南欧に侵攻したノルマン人が原種を故国へ持ち帰り、
イギリスへ伝えたとする説や、13世紀に十字軍によってヨーロッパーに
持ちこまれた、とする説がある。
16世紀にはイギリスにおいて本格的な育種が始まり、
17世紀の中頃までに基本の花色が出揃った。
八重の花や大輪も既に出現していた。
現在の温室で栽培される園芸種はアメリカでの品種改良に端を発しているが、
その元になる重要な素材は1852年以降にフランスから導入された
“ウイエ・ド・オマン”の系統であった。
1939年アメリカで育成された“ウィリアム・シム”の優れた特性と
300種以上の枝変わり品種群(シム系)の充実により、
やがて世界中に普及していった。
一方、イタリア・フランス・オランダ・イギリスなどでは、1960年頃から新たに
「地中海系」と称される交雑品種群の育成が手がけられ、耐病性や花型など
シム系には無い特性によって、1980年代から急速に普及し始めた。
また、従来のスタンダードタイプ(1茎1花)とは異なるスプレータイプ(1茎多花、房咲)
の育成と栽培が行われ始め、今ではスタンダードタイプをしのぐ生産比率を
占める様になった(武田、1996年1月)。
カーネーションの歴史をたどると原産地不明でありながら、
多くの歴史と社会情勢に影響を受けて、今日私たちが見る
「カーネーション」になったのかと思うと、非常に興味深い。