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それは冬の夜の話し、
誰もが寝静まった山小屋の外では、
猪達か迫り来る冬に備え椎の実を探し土を掘り返しています、
立ち枯れたピラミットアジサイは、
今では白い花を紅色に染めてただ立ち尽くしています、
薪ストーブの前では炎は揺れ、
冬は深夜にそっとこの森にもやって来ているようです、
子供達はふわふわの布団の中で夢にくるまれて暖かそうです、
きっと山の庭で野うさぎ達と遊んでいるのでしょうか、
布団のなかでもぞもぞと身体が動いています、
冬の深夜の森は静かに静かに寝息を立て始めています、
森の中ではゆっくりと冬の時間だけが流れ、
森の生き物達は皆それぞれ違った時間を生きているようです、
山小屋の外でかすかな音がします、
まだ冬眠する前の虫達を起こさないようにそっと、
何の音か知りたくて、
耳を澄ませて窓の外を想像すると、
まだ枝にしがみついていた枯れ葉が、
北風に誘われて、
地面を色鮮やかに飾っています、
いつの間にか舞い降り積もった枯れ葉は、
月の明かりに照らされて紅葉に変わって行きます、
まるで熟した果物のように色鮮やかに、
それぞれの人生を精一杯生きたように、
それぞれ違った色に染まっています、
野うさぎが、
月の光に照らされた色鮮やかな紅葉を、
果物と間違えて、
落ちてくる枯れ葉に飛びついています、
秋を惜しむように、
命を輝かせる為に、
夢にくるまれた布団から子供達が目覚ますと、
昨夜枝から旅立った色鮮やかな紅葉を、
まるで秋の贈り物のように庭に出て積んでいます、
小さなトレイに奇麗に奇麗に積んでいます、
朝のテーブルに付くと、
色鮮やかな紅葉が、
トレイに盛りつけられています、
春の色鮮やかな花束のように、
夏の緑濃いハーブのように、
秋の甘い香りを漂わす果実のように、
朝陽に色鮮やかに紅葉が輝いています、
色鮮やかな秋の忘れ物が、
テーブルの上で輝いています。