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2013/01/11

こんばんは、酒井孝祥です。

結婚披露宴の司会者が、
「僭越ながら、お二人のご結婚披露宴の司会を務めさせていただきます、酒井と申します。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。」
などという風に、宴席の最初の方で自己紹介をすることがあります。

宴席の司会進行役を承った人間が、ゲストの皆様に対し、自分のことを名乗らないままに進めてしまうのが失礼にあたるから、最初にきちんと名乗るべきだという考えに基づくことかと思います。

しかし酒井は、新郎新婦から特別な要望がない限り、宴中でその様なコメントは入れません。
もちろん、開宴前に御両家の親御様に挨拶しに行く時や、主賓の挨拶や余興をされる方などへ段取り等の確認をしにいくときには、自分のことを名乗ります。

全員の前で名乗らないことには大きく2つの理由があります。

1つは、プランナーさんを始め、キャプテン、サービス、花屋さん、写真屋さん、ビデオ屋さんなど、沢山のスタッフが働く中で、司会のポジションの人間だけが大勢の前で自己紹介をしたくないからです。

お二人とともに長い時間にわたって披露宴の準備を行ってきたプランナーさんも、当日の宴席の進行全体を取りまとめ、お二人が移動するときなど、いつもお二人の近くにいて目に入るキャプテンも、ゲストの皆様の前で名乗る機会はありません。
それなのに、司会者だけ名乗るというのが好きではありません。

司会者は、一番目立つところにいる裏方スタッフだと思っています。
裏方は自分のことを主張しません。

もう1つは、ゲストの前で名乗ることによって、司会者に対して拍手が向けられるのが嫌だからです。

拍手の少ない披露宴は締りのない印象が出てしまいます。
ですから、ゲストからの拍手を誘導するかのごとくに、あえて司会者が率先して拍手をすることがあります。
ときには、拍手を誘導する立場にある司会者に対して拍手が向けられると、まるで司会者が自分に対して拍手を催促してしまったかのような気がしてしまいます。

また、司会者は、新郎新婦の伝えるべきことを代弁する立場でもあります。
通訳の人に対して拍手が向けられることがない様に、拍手は主役に向けられるものであって、代弁者に向けられるものではありません。

新郎新婦退場後の後でも、「本日の司会は○○でした。」と名乗って、主役がいなくなった後で、その日最後の大きな拍手を受けてしまったら、何様だよという話になりかねませんね。

ここまで述べてしまうと、僕が、何が何でも自分のことを名乗らない主義のように思われるかもしれませんが、あくまで基本スタンスです。

新郎新婦お2人が、「司会者も名乗った方が失礼がないんじゃないの…」と少しでも思うようであれば、その基本スタンスに固執したりはしません。

司会者としての基本中の基本中は、自分の主義・主張がどうであれ、お2人のご要望に副えることを第一に考えることです

次回は、「わちきはおいらんでありんす」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。

2013/01/11 04:05 | sakai | No Comments