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2013/01/10

ネイルの歴史は決して古くない日本、
ネイルが現在の社会的地位になってからの日はまだ浅いわが国で
なぜその技術やマーケットがここまで広がったのか。
今では、日本のネイル技術産業は世界トップクラスともいえます。
今回は私なりに考察してみたいと思います。

ネイルをお洒落として楽しむ文化の発祥はアメリカです。
上流階級層のみならず大衆文化としてすぐに広まりました。
産業の発達が背景にもあるでしょうが、
プラスお洒落に対する意識(装飾美意識)が発達していたゆえだと考えます。
そして人工爪については、その民族の身体特徴も少なからず影響しているのではないかと思います。
欧米人の爪は、横幅が広い形が多いのです。
優雅な細長い指先への憧れが潜在的にあるのではないでしょうか。
細長い形を手軽に実現させる人工爪が、抵抗感少なく受け入れられたと考えます。

対して私たちアジア人の爪は、縦長に細長いのが特徴です。
人工爪をあえて付ける必要性は低いように感じます。
装飾美意識も欧米のそれに比べると保守的でした。
何より清潔であることを良しとする民族意識がそれを上回っています。
謙虚さが美徳とする観念も手伝い、お洒落はイコール派手であるという意識が高かったのです(まだまだ現在進行形でもあります)。

日本にネイルサロンが登場したのは、もう数十年前になります。
しかし長い間、爪のお洒落は一部の富裕層か特殊なお洒落を要する職業の人、
または派手好みの人(失礼!)がそのターゲットでした。
大衆文化には程遠い扱いでした。
バブル期を通して、お洒落イコール派手という敬遠意識が薄くなり
個性や自由といった今や当たり前の主張を歓迎する傾向が強くなりました。
私の記憶でも、この頃の女性ファッション誌に登場するモデルが人工爪をさりげなく披露していることが多くなっていました。
また、簡単に着脱の出来るネイルチップが輸入雑貨店で多く見かけるようになったのもこの頃だったと思います。
ネイルサロンという存在も都心ではちらほらと見られはじめ、私たち大衆や若い世代(当時です)にも徐々に身近になりつつあったのだと思います。
ただし、その価格はまだまだ高価なもので、とても一般の女性が通えるような存在ではありませんでした。
手に入るマニキュアを除いたネイル商品もほとんどが輸入物でした。

話が少し脱線しかけました。

それから15年ほど。
もうご存知のとおりの発展を遂げています。

時代が変わり、美容文化が発達発展したという背景の他に
日本人の手先の器用さ、クラフトマンシップ的な要素がたぶんに強く働いたのだと考えます。
一概には言い切れないのを前提にしますが、
私たち日本人(も含めアジア人)は繊細で細やかな作業が得意です。
根気よくコツコツと細部にこだわる律儀さも持ち合わせています。
そして、技巧を突き詰めようとする職人気質も強いようです。
色覚に関しても、ニュアンスの違いを認識する能力に長けています。
箸を使う文化とかはっきりした四季の風土とか、
その背景や由来に関しては専門家のご意見に判断を任せるとして…。

作る側のそういった気質、受け入れる側の美意識、時代の移り変わり、
そういった要素が短期間でここまでの発展を叶えたのではないでしょうか。
時代の移り変わりには、不況も含まれているようです。
学歴や大手企業在籍に身を委ねるといったこれまでの職業観念が崩れ、
自分の身は自分で、といういわゆる「手に職」の自立した発想がこれまで以上に広く定着しています。
ネイリストが職業として社会的地位を確立しつつあるのもこういった理由のようです。

いちネイリストとしては嬉しい限りです。
私のようなカリスマでも何でもないただのネイリストだとしても、
これまでの経緯を振り返るとそれなりに発展途上の様子を思い返せます。
今となってはずいぶん変わったものだな、と。
次回は、そんな「あの頃は…」と懐かしいエピソードを少しご紹介していこうかと思っています。

2013/01/10 09:55 | makiko | No Comments