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いよいよ秋も深まる10月-11月は 真鶴 → バハマ大会 でようやく終了です。
<10月>
●第13回真鶴フリーダイビング・クラシック
10月中旬は東京フリーダイビング倶楽部が主催する恒例のフリーダイビング大会「第13回真鶴フリーダイビング・クラシック」が開催されました。真鶴の海には四季折々の表情があり、10月は透明度も増しながらも水温はまだ高く、潜るには一番良い季節です。私は毎年この大会で一年の集大成を出すべくトレーニングをしていましたが、今年は選手ではなく運営および、セーフティダイバーの任務に専念しました。また、この大会での水底映像「ボトムカメラ」についてはこちらで紹介しています。
<11月>
●冬の真鶴
そしてシーズン最後の11月の真鶴での練習。すっかり海は冬の表情になっていました。いよいよ、今年の集大成であるバハマ大会目前の最後の海洋練習でしたが、このとき「ターゲットダイブ」(自分のmax深度の潜り)が久しぶりだったことに気がつき、少しばかり焦りました。
●トレーニング:辰巳、横浜、代々木公園、シンガポール・・他
実はこのころになると仕事も加速度的に忙しくなって来ました。まとまったトレーニングの時間を取ることなかなかできず、隙間時間でのトレーニングを心がけました。私のトレーニング場所は辰巳国際水泳場・横浜国際水泳場それから出勤前の代々木公園、果ては出張先のシンガポールのホテルのプールなど、でした。
●Vertial Blue:バハマ・ロングアイランド
11月20日から、バハマ・ロングアイランドのブルーホールでVertial Blueが開催されました。私は一年越しでどうしても達成できていない、コンスタント・ウェイト・ウィズ・フィンでの-60mを、この大会で成功させたいと思っていました。-57mが今の自分の公式ベスト記録。-60mは2回失敗していました。「あと少しだけ、息を長く止められる」ようになれば、3mの壁は突破出来ると思っていました。
深度競技の課題のひとつ「耳抜き」に関しては、私は苦労せずとも自然に圧平衡が出来る幸運な体質。また「胸郭の柔軟性」についても、まだ自分の潜る深度で肺に違和感や圧迫感を感じることはありません。なので、自分の課題は「閉息能力(息を止めていられる能力)」に尽きると考えていました。そもそも私は肺活量は人並み以下。フリーダイバーとして閉息能力は高い方ではなく、閉息時間がモノを言うプール競技などが本当に苦手です。そのため、今年はともかくこの能力向上のために地味にトレーニングをして来ました。しかし、バハマ大会では功を奏さず短期間で二度もBlack Outをするという惨憺たる結果に終わりました。
1日目◎成功:CWT -55m white
2日目×失格:CWT -60m red(Black Out)
3日目△減点:CWT-58m(-53m early) yellow
4日目×失格:CWT -58m red(Black Out)
5日目◎成功:FIM -36m white
6日目△減点:CWT -56m(-38m early) yellow
この結果について分析すると・・・(これでも圧縮していますがかなりマニアック。悪しからず)
(1)フィジカル面
●コンディショニング不足
30時間以上の長旅および日常の疲れも取れないまま、事前練習もなく本戦に突入。十分な休息を入れず間髪入れず連日の競技を行ったこと。特に前半は時差ぼけもあったのか常に身体が重くダルかったことを覚えています。冷静な判断力があれば、とてもベストのダイブが出来る状態ではありませんでした。後半は後半で鼓膜に疲労が溜まり、最終日は満足な耳抜きが出来ず申告深度の半分ほどでアーリーターンとなりました。「せっかく遠征に来たのだから」という気持ちを捨て、身体の声を聞くべきでした。
⇨身体あっての競技、コンディショニングは基本中の基本。
●トレーニング不足
日々の地味な閉息トレーニングの結果、プール練習では少しずつその効果が出ていました。しかし、それも十分なものではなく、そもそも深度練習やフィンワーク練習が圧倒的に不足していた。海に行くのとトレーニングとは別物だ、と沖縄大会で痛感していたはずなのですが・・・あとから映像を見返すとモノフィンのフォームがすっかり崩れ、明らかに無駄に酸素消費をする泳ぎ方をしていました。また、フリーフォールを用いてより酸素消費を押さえる潜り方も取り入れるべきかもしれません。
⇨トータルでバランスの取れたトレーニングを!トレーニングは計画的に。
(2)メンタル面
●戦略不足:
今回の自分の本命ダイブは「-60m」(成功したらそれ以上)と決めていました。が、これをどこに持ってくるかが重要でした。2日目にいきなり-60mを申告した理由は「身体や耳に疲れが溜まる前に目標の本命ダイブを済ませてしまおう」という考えからでした。しかし2日目のBOは心身にネガティブに作用し立て直しが難しくなりました。もう少し心身に余裕のある深度を積み重ね、良い感覚を染み込ませてから本命ダイブに挑めば、違った展開になっていたかもしれません。
⇨これはIFの世界なのでなんとも言えませんが・・。
●暗さへの嫌悪感:
ブルーホールは素晴らしい場所だ、とどのフリーダイバーも言います。しかし今回の私は「ブルーホールではなくてブラックホールだ・・・」「海ではなくてただの真っ暗な穴だ・・」と感じていました。-50mを超えたあたりからの暗さ。ボトムプレートは下からライトで照らされており、それが余計に周りの闇を濃くしているように感じました。大会期間中は自分でそんな考えは認めませんでしたが「今日もあの暗い場所にたった一人で行くのか・・・」という憂鬱にも似た気持ちが芽生えていました。
⇨海は心を映す鏡。こんな時こそメンタルコントロールを意識的に!
●集中不足:
色々やりすぎた2012年後半、バハマ大会は忙しい年末にもあたり「本当に今、行くべきなのだろうか・・」という迷いを抱きながらの遠征になってしまいました。その場に集中するというより、「早く大会をこなしてしまおう」とでもいう、どこか落ち着かない気持ちがありました。その後、帰路に出張でサンフランシスコに降り立った時の安堵感。さらに、成田に帰って来た時の安堵感。やはり自分の気持ちが潜ることに集中しきれていなかった。これは大きなマイナス点でした。
⇨2013年は自分の活動の選択と集中・・!
と、フィジカル、メンタルともに反省点が山盛り。苦いバハマでしたが・・・
結果として、やはりこの大会に参加出来たこと、ここで沢山の課題を得られたことは、あっさり60mを達成する以上に大きな収穫だったと思います。また、トップ選手たちの驚異的なダイブを間近で見られことも得難い経験です。ロシアのアレクセイの世界記録-127m達成、日本人では平井美鈴選手の-90m(世界の女性で4番目に到達)、福田朋夏選手の-80m(日本人で男女合わせて7番目に到達)。どれも本当に、素晴らしいパフォーマンスでした。
最後に、これは私が唯一成功した初日の-55mダイブの映像です。
「情熱大陸」にも出演した公式ビデオグラファー二木あい氏が撮影・編集してくれた素敵なムービーです。自分の潜りに関しては修正点やツッコミどころ満載なのですが、ふと考えると、一流のスタッフに囲まれてこんな風に潜れる、こんな最高な機会を何故もっと純粋に楽しまなかったのか?という疑問が浮かびます^^;
ともあれ、ブルーホールは「最高の準備をしてきた人にとっては最高の場所」であると思います。いずれチャンスがあれば、今度こそ最高の準備をして、心から楽しんで「青い穴」に潜りたいと思っています!
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2012年海の旅のまとめはこれにてやっと終了です。真鶴、三陸、エジプト、尖閣諸島、八重山諸島、沖縄、葉山、ニース、御蔵島、バハマ・・私としては数年分に匹敵するぐらい、色々な場所で色々な経験をしました。緑、青、水色、コバルトブルー、群青、濃紺、黒・・様々な色の海に潜りました。そして海を通じて日本各地・世界各地で沢山の出会いがあり、仲間と一緒に素晴らしい時間を過ごすことができました。仕事とフリーダイビングが両立出来る環境、ハードスケジュールに耐えた自分の身体に感謝します。
ただ・・私には一年間ではとても消化しきれないほどの経験でした。撮りためたビデオを一度も見返していない、読みたい本を買い漁って積んである、授業を受けて復習していない、そんな感じがしています。2013年は少し落ち着いた年にしようと思っています。そして2012年の沢山の経験をゆっくりと消化して、血や肉にし、何かを実らせていきたいと思っています。
まとめ、終わりです!
photo by Tomohiro Noguchi
Tetsuo Hara
movie by Ai Futaki