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2012/11/30

明日はいよいよJunkstageの6周年記念パーティですね! 読者の皆さま、そしてライターの皆様にお会いできること、心より楽しみにしています。確か私、記念冊子にも寄稿していたかと。パーティ詳細はこちらです:http://www.junkstage.com/fromstaff/?p=524

さて。今日のテーマは「じぶんらしく生きること」。必ずしもそれがよいというわけではない、というお話です。

よく巷の書店では「じぶんらしく生きる」的なセラピー本を見かけます。わたしもセラピー本は好きなので、幅広く目を通すのです。しかし私には、あまり役に立たないんですよね。というのもたぶん、私は根っから「じぶんに素直に」「じぶんらしく」生きているからではないでしょうか。そして、そんな生き方をしていることに気づかされるのは、特に日本に帰国したときです。周囲から明らかに浮いているように感じるときがそれです。

アーティストという人種は、私の定義をここに述べるとすれば、じぶんの自由な発想や思想をいろんな手段で表現する人です。つきつめれば、「生きるとは何か」ということに対して、オリジナルな美的価値観を持って表現する人です。オリジナリティ高ければ高いほどよく、つまり他人がやってることを真似しないことが最低条件ですね。表現手段はなんでもよく、極端にいえば起業することであったり、店を持つ事であってもいいのでしょうけど、五感的なメタファーを伴う方がダイレクトに伝わりやすいので、美術とか音楽とか舞踊とかの形式が存在しているのだと思います。

アーティストがそうあるように、ほんとうにじぶんに素直に生きたら、苦しいですよ。辛いですよ。他人と違うことをやる人への風当たりは、激しいからです。その負の部分を、セラピー本系は完全に端折っているように思えます。むしろ、アーティストになりたくてそうなったアーティストって、少数派ではないでしょうか。みんな、正直に、素直に生きて来た結果、それしかできなかったのです。

私もそんなひとりです。いろんな目的意識のアーティストがいると思いますが、私はひじょうにピュアでストイック。作品制作においてもなかなか頑固で、展示の機会があってもなかなかyesとは言わず、まず条件交渉をします。そこにはフィーなどの金銭的な交渉も含まれますが、まずはコンテキスト。私の意図やコンセプトを相手が理解してくれ、作品へのよいバイブレーションを生めそうな空間や展示であると判断したときにしかyesを出しません。コンテキストが合えば、その規模が大きくたって小さくたって、ノー・フィーでyesを出すことさえあります。逆にコンテキストが合わなければ、いくら札束を積まれてもyesを出しません。(実際に積まれたことはありませんが・・・笑)

そのため、あまりグループ展などに出しません。ロッテルダムのアートシーンでも若い頃は、「あいつは頑だ」と思われた節もあるかもしれません・・・。最近はわりと、経験と実績が伴ってきたことで、上手にじぶんを通せるようになりましたが。コミュニケーションのスキルも上がったのでしょうね。

仕事においてもこうであるから、プライベートでもなかなか頑固ですよ〜。じぶんはただ「じぶんに素直に」「じぶんらしく」生きているだけなのですけどね。

たとえば、長年患っている土地性のアレルギーのため1年半前、オランダに子どもを置いて日本に帰って来てしまった件。一般的にいえばほんとうに「ひどいお母さん」で、風当たりも強く、長年助け合う関係にあった人たちさえ離れていきました。

じぶんに素直に動くと、こうして敵も作ります。周囲に亀裂を生むからです。辛かったり苦しかったりですが、そこは強くあらねばなりません。しかしそれを辛抱すれば、じぶんを認めてくれる新しい人間関係にも恵まれます。違う見方をすれば、ある種の「人間関係のデトックス」なのかな・・・?

オランダを離れた当時は、風邪引き始めのようなダルい状態が年の半分を占め、鼻炎が原因で嗅覚障害が発生し、仕事にも支障をきたしていました。ときに判断力が鈍ったりもしましたが、「こんなふうに日々鬱々と暮らしているのは、私らしくない!」というじぶんの根源的な部分からのメッセージにより、決意し、実行したのでした。

あのままオランダに残り続けていたら、嗅覚を失っていたと思います。今もまだ鼻炎は残っていますが仕事に支障はなく、喘息もかなり良くなりました。気持ち的な回復には時間がかかりましたが、じぶんに素直に動いてよかったと思っています。結果もついてきたし。

「じぶんらしく」「素直に」「正直に」生きるのに、向いている人と向いていない人がいると思います。そもそも、そんな人ばかりの社会だったら、収集がつかなくなると思いませんか? 「じぶんらしく生きていない」と思う人の人生だって、かけがえのないものだ・・・と思う今日この頃です。

(写真は、先日東京でおこなわれた味覚と嗅覚のワークショップ。スープを蒸留し、「スープの香水」を作りました。詳細はこんど私のブログ「魔女の実験室」に書きますね〜)

2012/11/30 04:12 | maki | No Comments