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2012/11/20

地球の舳先から vol.256
番外編

イスラエルが、結構とんでもないことになっている。

イスラエル西岸、パレスチナ自治区ガザへの大規模空爆が始まった。
これの政治的バックグラウンドがどうなっているか、ということに関しては
色々な人が色々な事を言うのが常なので、ここで政治を云々しようとは思わない。
ガザは、元々が危険地帯なのだが、今回は、各国の大使館があるテルアビブ
(イスラエルはひとりで首都はエルサレムだと言っているが、国際的に認められて
 おらず、首都機能はテルアビブに置かれている。が、つまりテルアビブが首都とも
 明言できないわけで…、とにかく詳しくは「イスラエル首都問題」で検索。)
や、エルサレムでも連日空爆やミサイル攻撃の警報が鳴っているという。

戦局は長引かない、というのがおおかたの予想であるようだが、
イスラエルに限らず中東まわりで一番怖いのは自爆テロ。
いつどこであるかわからないし、現場には人が一人いればできてしまう。
しかもパレスチナ側には武装勢力がたくさんあって、足並みもそろっていないので
政局に関わらず暴走する、という状態(らしい)。
空爆で、パレスチナは怒っているだろう。当然だ。
暴力に対する怒りや意思表示は、素直に考えるとどういうアウトプットになるだろうか?

…そんなわけで、わたしのイスラエル旅行はとうとう
限りなく赤信号に近い黄色信号、でも信号壊れててイマイチ何色かわからないので
渡るも渡らないも自己責任、という立ち位置になった、ということだ。

外務省の安全情報のページとにらめっこをし、
瞬く間に更新情報が上がっていくのを眺めるしかない。
行くはずだった場所が、どんどん、危険を示す濃い色に塗りつぶされていく。
トップページまで、イスラエル祭りだ。

しかたないのだ。
わたしは戦場に飛び込むのが仕事のジャーナリストではない。
旅行者であり、「観光旅行」をするために渡航する身なのだ。
言葉も通じない国へ行くのに、自分の立場を買いかぶってはならない。
それが、トラベラーの自覚と宿命。
旅を続けたかったら、その責任を決して放り出さないことだ。

しかたないのだ。
北朝鮮に行けたのも、イエメンに行けたのも、ただの運だ。
情勢がたまたま良かったのだ。運と、縁だ。そんなもんだ。

しかし、ここまでに要した労力を考えると、ため息は免れない。
今回のイスラエルの手配は、物理的にも精神的にも、わたしにとっては
ほんとうに長い長い長い長い道のりだったのだ。(その話は、来週書こうと思う)

エールフランスに電話をして、キャンセルポリシーを確認する。
フランス語しか喋らないパリのホテルに、「私の行き先はイスラエルでパリは
トランジットでこの状況で行けないかも」と、フクザツな上級フランス語作文をする。
せっかくの年末年始の長い9連休に、どこへも行かないなんて有り得ない。
プランBをあたるため、インドやミャンマーやケニア行きの航空券を調べる。
しかし、代わりの渡航先を複数見ても、どこの国も、霞んで見える。
ショックで仕事が手につかない。
イスラエルにそんなに入れ込んでいるわけでも、はずでもない。
むしろ、嫌いだ。イスラエルなんて嫌いだ。あー!!!!!!!!

「イスラエル ニュース検索結果」をリロードし続けながら、
わたしは、難航をきわめた地上手配をお願いした現地の旅行会社にコンタクトを取った。
まじめなメールが返ってきたが、この騒動があと48時間で落ち着くという説を得る。
これが、相手が相手ならまず信用しないが、返金対応を含め非常に誠意のこもったメールに
わたしはまた、当面10日間、決定を保留することにした。

今、一番欲しいものは、何事にも一喜一憂しない、動じない心である。

2012/11/20 09:10 | yuu | No Comments