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2012/11/17

初めまして、酒井孝祥です。
まずは自己紹介を…

日本の古典芸能には、外国の俳優が羨む様な魅力が沢山つまっているのに、日本人でありながらそれを知らない俳優が多い現状…それは、単純に勿体無いことだと思います。
だったら自分は、日本の古典芸能における表現方法などを学び、それを様々なジャンルの舞台に活かすことの出来る俳優になろうと思いました。

古典芸能を鑑賞することは勿論、浄瑠璃の音声表現と日本舞踊の身体表現を習得するため、それぞれの師匠の下で稽古を続けながら、小劇場などで演劇活動を行なっています。
また、ブライダル司会者という別の顔も持っております。

こちらのサイトでは“古典芸能俳優”という仰々しい肩書きを名乗らせていただいておりますが、これは、酒井が古典芸能を専門的に行う俳優ということではなく、古典芸能に学ぶ俳優であるという意味合いでのネーミングです。

さて、今回は演劇における着物について語ります。
演劇の公演を観に行くと、その当日パンフレットには、大量に他の公演のチラシが折り込まれていることがよくあります。
その中には、時代物の作品のチラシが少なくありません。
特に、新選組が登場する様な幕末の作品が小劇場などで人気がある様です。

日本の時代物の作品を上演するにあたっては、演出が特殊でない限り、衣装として着物を着ることが必要となります。
僕が小劇場などで時代物の公演を見ていてとても残念に思うのは、着物をちゃんと着れていないままに板の上にいる俳優があまりにも多いことです。

着物には、着物を着た状態で、格好良く美しく見せる方法があります。
もちろん、それを崩して斬新な着方をするというのもありかと思いますが、きちんと着る方法を理解した上でそれを崩すのと、単に着方を知らないために崩れているのとではわけが違います。

今回は男性限定ですが、僕が実際に舞台で目にしたことがある、これはやめた方が良いと思われる着方、技術的な問題ではなく、明らかにおかしい例をいくつか挙げてみます。

・着物の下に襟つきの襦袢を着ていない。

→柄の悪い役柄を演じるのであれば、ありかもしれませんが、任侠映画みたいになってしまいますね。

・痩せているのに、お腹にタオルなどを入れて補整していない。

→男の着物は、お腹が出た人にフィットする様に出来ています。
お腹のところに肉がなかったら綺麗に着られません。

・馬乗り袴ではなく行灯(あんどん)袴を履いている。

→ズボンの様に両足を別々に通せる“馬乗り”の形状ではなく、スカートの様な“行灯”の形状だと、立ち座りのときにフワリと空気が入ったりして格好悪いです。
立ち座りが全くないなら、それでも良いかもしれませんが…
行灯しか手に入らなければ、数千円で馬乗りに加工してくれるお店もあります。

・袴の後ろ側がぺったんこ。

→そういう着方もありますが、袴の後ろは厚みがあった方が格好良いです。
厚みを出すために、帯の結び方は一般的な“貝の口”ではなく、“文庫結び”などにした方が良いです。
アクションのある芝居では転んだときに危険なのでお勧め出来ませんが、袴の厚みを出すために作られた専用の板も売っています。

・足袋がブカブカ

→足袋は、自分の靴のサイズより小さいサイズのものを履くのが基本です。
きつめの足袋を苦労して履いて、足にぴっちりしているのが格好良いのです。

折角芝居が良くても、着物の着方が格好悪かったら台無しになってしまいます。
和物の舞台に立つのなら、日本舞踊的な所作を意識すること等も勿論大事ですが、着物を格好良く着る意識を持つことがスタートラインです。

2012/11/17 10:45 | sakai | No Comments