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2012/11/05

 

玄関のドアを開けると、

ちょこんと座り私の顔を見るなり、

尻尾をブンブン振り回す、

ビッケが今はもういません、

秋の夕方の西日がさす季節、

いつもソファーにまどろみ栗毛色が輝き出す、

ビッケが今はもういません、

ビッケが神様のお嫁さんになってから、

一週間が経ちました、

奇麗に飾られたテーブルには、

私が山から取って来た秋の花と、

ママ友から送られて来た、

小さなバスケットに飾られた花束が2つ、

亡くなる前の日に、

必死にママに何かを伝えようとしていたビッケの写真、

そして骨壺に入ったビッケの骨が戻って来ています、

 

やっぱりママだったのか、

ここにはたまに誰か人が来るけれど、

私、きっとママが来てくれると信じていたんだ、

今、遠くから私の事をずっと見ている人を感じたの、

その人の涙が秋の日射しに照らされてキラッと光ったの、

そして私と目が合うとその人ったらニコッと笑ったの、

そのとたんにその人の影がが光り輝き出したの、

ママだ、

ママだ、

ママが来てくれた、

ママが私に会いに来てくれた、

自然と私の尻尾がブンブン動き出して、

私、走ったの、

やっぱり私のママだったのね、

絶対にママは来てくれると思ってたわ、

一週間もママに会わなかったから、

私とっても寂しかったのよ、

でもここではメグちゃんもいるし、

昔とても親切にしてくれたバンスもフルールもいるのよ、

食べるものだっていっぱい有って、

こうしていつまででも森の中で遊んでいられるの、

皆と一緒で毎日が楽しかったけど、

眠くなるといつも私の事をなでてくれる、

ママの顔が浮かんで来て泣いちゃった、

ママ、

ママ、

どうしてここにいるの、

今日はパパは一緒じゃないのね、

でもママに会えるなんて、

私とっても嬉しい、

ママ、

ママ、

私を見ててね、

前足も後ろ足ももう全然大丈夫、

あの時は何も食べれなかったけど、

今は毎日お腹いっぱい食べてるの、

ママ、

心配しないで、

ほらママ、

尻尾だってぶんぶんに振り回す事だって出来るんだから、

ママ、

ママ、

ママ哀しいお顔しないで、

私はここで元気だよ、

ママの事忘れてないよ、

ママ、

ママ、

ママ、大好きだよ、

 

いくら目をつぶろうとしてもなかなか眠れない、

いつもだったら気を失うように眠れるはずなのに、

そういえばビッケが亡くなってから、

今日でちょうど一週間なのね、

眠れないまま時間だけが静かに去って行く、

暗い部屋ではパパの寝息だけが私が眠れない時間を知らせてくれる、

起きているのか眠っているのか、

どちらともつかない闇の中に迷い込んでいる気がする、

空から白く光るものが、

じっとその白く光るものを見ていると、

次から次に白く光るものが落ちて来た、

雪かしら、

ここは寝室のはず、

雪なんか降る分けないわよね、

さっきまで赤くて小さな電球が、

部屋の片隅から部屋全体を一生懸命に照らしていたのに、

何でこの部屋は白黒なの、

空から落ちて来る白く光るものだけに色がついている、

白い光は次第に白い線になり、

青色にの線に変わって、

部屋の空からまるで雨のように降り注ぎ始めて来たわ、

遠くの方から犬が駆け寄ってくる、

尻尾をぶんぶん振り回しながら、

私の方に走って来るの、

ビッケ、

ビッケなの、

声に出してビッケを呼んでいるのか、

夢の中でビッケを呼んでいるのか分からない、

まあ、

ビッケちゃんなのね、

なんであなた白黒なの、

でもあなた元気になったのね、

ママ嬉しいわ、

そんなにママのお顔を舐めたりして、

ビッケちゃん、

ママにちゃんとあなたのお顔を見せて、

ママあなたの前足が大好きだったの、

握らせて、

ビッケちゃん、

やっぱりあなたビッケちゃんだったのね、

ママ、あなたが死んじゃって、

哀しくて、

哀しくて、

ママ、

あなたの前足だけはどうしても残しておきたいと言ったら

パパに怒られたの、

それでママはしかたなく、

あなたの前足の狼爪を2つ切り落として、

ママのお守りにする事にしたの、

ほらビッケちゃんあなたの前足を見てみて、

あなたの前足の狼爪、

両方とも無いでしょ、

あなた、

ビッケちゃんなのね、

良かったわ、

ママ、あなたの前足を切らなくて、

ビッケちゃんどうしたの、

急にキスしたりして、

そうなの、

そうなんだ、

分かった、

分かったビッケちゃん、

ママと会えて嬉しいのね、

ママもビッケに会えて嬉しいわ、

ビッケちゃん、

良かったわビッケちゃん、

あら、あなたもう皆のところに戻るの、

ママはこれ以上先には行けないみたい、

身体がこれ以上前には進めないの、

ビッケちゃん、

ママあなたに会えて嬉しいわ、

そうなの、

ここは皆と遊んでいられて楽しいのね、

良かったわビッケちゃん、

 

ママそれじゃそろそろ、

皆のところに戻るね、

ママがここに来るまでずっと待ってるからね、

でもママはまだまだここに来れないんだ、

それじゃママ、

そろそろ時間が来たみたいなんだ、

これ以上ママを悲しませたくないから、

皆のところに戻るね、

ママ、愛してるよ、

 

青い光の中に、

ビッケが戻って行く、

次第にビッケが光り輝き出したのよ、

ビッケったら、

私があそこに行く事を知ってたみたい、

でも、もうこれからは私に会えないって言うの、

そしてビッケったら、

尻尾をブンブン振り回して、

皆のところに戻って行ったの、

いつの日かきっと又ママに会える日が来るから、

それまではもう会えないって言うのよ、

 

パパ、

聞いてる、

昨日見た私の夢、

何だかとてもリアルだったな。

2012/11/05 02:03 | watanabe | No Comments