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日本の川の水槽一つがやや寂しくなってきたので、川へ何か生き物をスカウトしに行かねばならなかったのだが、暑いしなかなか重い腰があがらなかった。何かを自然の中へ(仕事にカラんで)取りに行くという行動は遊びで行く場合と違って、行くまでがなかなか決心が付かない場合が多い。特に暑いときは「今度の休みの日でいいべ」っと何度も思って、休日は毎回グウタラ過ごしてしまい、行く機会を失い最終的に「ウオー!!」とか奇声をあげて一大決心して逆上気味に突撃しないといつまでたっても行くことが出来ない。
でも、行ってしまえば楽しいんだけどね。
今回もそうだった。この暑いのにいい年して川なんて行きたくネェ、とかこのご時世、平日の昼間に川なんかで魚を追いかけてヘラヘラ微笑んでいたらすぐに警察に通報されるとか思って、行っていなかった。
そんな時、ふと思った!あ、「サワガニ」があるじゃないか!
っと言うことで、そうだ!京都行こう!というJR東海的気分で涼を求めて、ぢゃなかったカニを求めて山のほうへ向かった。付いたのはポイントH。何年か前に見つけたサワガニ大フィーバーポイント。
仕事にかかる前にハラが減ったので見つけた蕎麦屋でメシを食うことにしたが、山菜ソバ五平餅付き!という筆文字看板につられて入ったその店は、どうしたらこんなにやる気がなくなるのだろうか、というレベルに達したオババがヨタヨタしながら睨みつけてきて「何もないよ、ソバくらいしかないよ」というのであった。だから蕎麦を食いに来たのだ!と思い、蕎麦を注文したら「えぇ?作るのぉ、マジで?」というような意味のことを小さくホザイて嫌々厨房へ向かいオゴソカに作り始めるので、期待して入ったことを全面的に後悔してしまった。出てきた蕎麦の味はこれまた全面的に普通の味だった。
なんだかブルーになったテンションを上げながら川沿いを車をゆっくり走らせて窓からのぞくと、岩陰に柿色の小さなカニがアチコチですぐに発見できた。よーしよーし。今そっちに行って採ってやるからね。
「サワガニ」は日本のカニで唯一一生を川で過ごすカニで、小型のザコガニ。とは言ってもナメてはいけない。日本にしかいないカニらしく、しかも高級料亭などでは唐揚げや佃煮になって晩御飯の会席の一品として出てくる。ザコガニだけど食える。名前どおりサワ(沢)に住んでいるキレイな場所にしか住めないデリケート繊細ガニでもある。
食えるけれど、さらにここでナメてはいけない。半ナマだったり生だったりすると『肺吸虫症』という寄生虫症になる。カニの体内に寄生している虫がカニとともに人の体内に入って引き起こす。セキ、発熱、血痰などの症状がでる。虫が脳に移行するとかなり危険。数年前に水族の寄生虫の企画展示をやったときに勉強したのだ。寄生虫は気持ちが悪いが、実際気持ちが悪い。でも本などを見て勉強するとヤツらにもヤツらなりの悩みや苦しみや将来展望などがあって、それらが知れるとなかなか楽しいし、知っておいて損はない。得もそれほどないが。
ゾウリで川にドカドカと入っていくと、カニたちはゴジラのようなの(おれのことね)が来た!っとややヒルんで岩の陰などに隠れるが、これを無視してワシワシつかんでバケツの中に放り込んでいく。本気を出すと10分もしないうちに展示に必要な匹数は確保できた。早いもんである。
展示に使えそうなコケの生えた石や水辺の植物なども引っこ抜いて持っていくことにした。川には「ヨシノボリ」というタラコクチビルの人をバカにしたような顔をした底生魚もいたので、つかまえて同時にスカウト。
山のほうなので流れる水がキレイで冷たくて気持ちがいい。サワガニはひっくり返すとおなかに大量の子供を抱えているものもあり、そういうヤツは今度来る時のためにと仏の心を持って逃してあげた。メスはおなかに卵を抱え、抱えられたまま子供は生まれて、しばらくはお母さんの腹にへばりついているのだ。
バケツから発砲箱に入れ替えて車に乗せて水族館に拉致した。今日は朝からサワガニの展示で水槽をイジって、一緒に持ってきた石や草を飾って、あっという間にサワガニワサワサ水槽の完成である!生き物が少なくて寂しかったので困っていたがサワガニたちでにぎやかくなった。日本には「困ったときのカニだのみ」というコトワザがある。いや、ない。