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2012/08/24

セクシャルマイノリティの数は、人口の3~5%と言われています。
その根拠は諸説あるのですが、有力なのは、海外の国勢調査の際にセクシャリティに関する設問があり、その統計結果を元にしているというのです。
また、学者の中には、人口の10%程度は存在すると主張する人もいて、かなり幅のある状況となっています。

私はわかりやすく説明するために「1クラスに1人はいる計算ですよ」と答えています。
そうすると、「あ~、確かにそういう人いたかも…」と自分自身の過去の記憶を辿り出す人もいます。
ただ最近は少子化のせいで、1クラスの人数も減っており、私のような表現は不適切になってきているのかもしれません。

セクシャルマイノリティが正確に何人いるのかを知ることは、実際には無理でしょう。
もし、そのような調査をしたとしても、今の日本で、正直に調査上のカミングアウトをする人が多いとは思えません。

セクシャルマイノリティの数が、昔よりも今の方が増加しているのではないかという話もよく聞きます。
確かに、レインボーサポートネットに相談を寄せられる相談者は、ご年配の方よりも若い方の方が圧倒的に多いです。
実際に、その総数が増加している傾向はあるのかもしれませんが、それは、セクシャルマイノリティとして生きていく環境が、昔に比べて整っているため、自分のセクシャリティに正直に生きていく人が増えている結果ではないかと推測します。

セクシャルマイノリティの増加といっても、L・G・B・Tのそれぞれについて考えなければなりません。
私が、増加傾向が顕著なのではないかと思うのは、B(バイセクシャル)についてです。

レインボーサポートネットに寄せられる相談には、バイセクシャル本人からの相談というのは少ないのですが、バイセクシャルと関係したゲイやレズビアンの方からの相談は多いです。
バイセクシャルという存在は、ゲイやレズビアンの方からすると、煩わしいものである場合も少なくないのですが、恋愛関係に至り、やがて破局した場合に、その原因に異性の存在があると、ゲイやレズビアンは大きな精神的なショックを受けることになります。
そういうちょっと厄介な存在が増えているのは、最近の若者のセクシャリティ感がとても曖昧な感覚になりつつあるからなのではないかと思うのです。
『どっぷりハマル』という感じではなく、ファッション感覚というか、興味本位というか、少しセクシャルマイノリティの世界を覗いてみるといった感覚の人が増えています。

ただ、セクシャリティの分類の時に、例えば、興味本位で一度だけ同性と肉体関係を持ったような人を、バイセクシャルと定義して良いのかという問題があります。
これに対しては、そもそもヘテロセクシャルならば、同性に興味本位で肉体関係を持つといった行動に出るわけがないという意見がぶつけられます。

しかし、実際の若い人のセクシャリティの悩みに関する相談では、「興味本位で~」とか「成り行きで~」とか「なんとなく~」といった非常に曖昧な動機で一線を越える人もいるわけです。

また、恋愛関係ではなく、肉体関係だけの行動をセクシャリティの分類に反映しても良いのかという問題もあります。
時々、付き合う(恋愛)のは考えられないけど、体は同性を求めてしまうという方がいます。
セックスの対象と恋愛対象が異なるような特殊事例もあるわけです。

前々から書いていることですが、セクシャリティを分類することの意味が、どうも薄れてきてしまっているような気がします。
あるいは、現在のざっくりとした分類ではなく、さらに細かく分類していく必要があるのかもしれません。
しかし、こうした分類は、講学上の便宜のためであり、当事者の福祉を考えたものであるとは、必ずしも言い切れません。

そうすると、純粋なヘテロセクシャル(恋愛対象もセックスの対象も異性であって、生まれつきの性別に違和感のない者)以外の者を全てセクシャルマイノリティとしてしまえば良いのではないかという「大きな括り論」が発生します。

セクシャリティの話は、マイナー事例を取り上げると、非常に複雑で難解なパズルのようになってしまいます。
確固たるセクシャリティを持つ人と、そうでない人が混在するような現在の社会では、統計学的に正確な数字でセクシャルマイノリティを把握するのは無理なのかもしれません。
セクシャリティは、それ自体がある程度曖昧な要素を包含しているということを知って頂きたいと思います。

2012/08/24 12:01 | nakahashi | No Comments