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2012/07/20

JunkStageをご覧のみなさま、こんばんは。
まずはじめに、先日大きな被害をもたらした豪雨にて避難を余儀なくされている方、そして大切なものを失われた方々に、心よりお悔やみ申し上げます。
私自身、東日本大震災では自然の猛威を肌身に感じた一人でもあります。
自然というのはこのように恐ろしく、ときに牙を剥くものでもあるのですが、その一方で私たちに大きな恩恵を与えてくれる存在でもあります。
良くも悪くも人と自然との関わり方について考えざるを得ない日々が続く中、そんな自然に常に目を向けている、今日はこのライターの方をご紹介したいと思います。

 

■vol.12  北の写真家・山田雅幸さん


――僕達にはきっとまだまだ知らない自然の世界がある。
  私達が自然に惹かれる一番の理由とは、人間界とは違う時空の中に存在する
  生命の不思議さなのかもしれない。(山田雅幸)

 

自然写真家。札幌で生まれ育ち、20代前半で改めて地元北海道の自然に感慨を受け、撮影活動を始める。自身が大雪山等の山に登り、森を歩いて自然や野生動物の姿を記録している。
http://www.junkstage.com/yamada/

 

* * *

 

山田さんがJunkStageに参加することになったのは、2008年の冬のこと。
以来、現在に至るまで平均月2回のペースで写真入りのコラムを掲載し続けています。
発表された写真は100枚を超え、そのどれもが北海道の山を歩き、自ら見つけた「自然」の姿。地元であるということを差し引いても、この量・質ともに揃った写真の素晴らしさはJunkStageの主催した公演やcaféイベントでも多くの方の関心を惹いていました。

その写真の魅力は、被写体である北海道の時に厳しく、ときにあたたかくある雄大な自然だけではありません。
サラリーマン時代の楽しみは仲間とのドライブだったという山田さんですが、その頃は「人間の気配のない野生の世界」という視点を意識して写真を撮っていたのだそう。
そのスタイルが変わったのは、大雪山公園で出会った、一匹のナキウサギの姿を目にしたときからでした。


(写真引用:自然との出会い

この愛らしい野生動物に魅かれ、追いかけ続けた山田さんはナキウサギそれだけでなく「原始自然」とも言うべき山の姿に魅かれ、またその存在を常に感じる生活がしたいと強く願っている自分に気付きます。
そしてそれは、自然を通して自分自身を知りたい、という願いにも繋がっていきました。
その山田さんの決意を端的に伝えるこの記事から一部抜粋させていただきます。

「「自然」を見つめながら「人間」というものを知る。僕はこの2本の線の交わるところに浮かび上がる、なにか本来の人間にとっての大切な「心」というものを、今後も深く感じてゆきたいと思います。」

* * *

 重さ30kgにも達するザックを背負い、標高2000mの山に昇り続けるうち、「生かされている」という感覚を得た山田さん。自然の中に身を置くことで、自分の力で楽しみを見つけだし、自分の力で身を守るという人間本来の本能の様なものがよみがえってくるのだと語るこの記事には、その素直な感動が率直に綴られています。

そんな山田さんの数多い写真の中から、もう一枚、わたしの好きな写真を紹介したいと思います。


(写真引用:動物にとっての「春」と人々にとっての「春」

暦の上では春が近づいてきてもまだ寒さ厳しい2月の、キタキツネの深い眠り。
身をぎゅっと縮めて眠るキツネの姿は、北海道という土地の冬の厳しさ、春に焦がれる気持ちを端的に表して見る側の感情にダイレクトに訴えてくるのです。

* * *

 だからこそ、山田さんの写真は、本当に自然に近い。
物理的にも、心理的にも自然によりそうファインダー越しの視線が観客にも伝わってくるのです。
そして、写真と合わせて掲載される言葉の豊かさといったら!
饒舌であることがすなわち感情を上手に伝えると言うことではない、と思わざるを得ない、シンプルかつ、実感に溢れた言葉が綴られたコラムは、自然と自分との関わり方を考えさせる確かな力があるのです。

2012/07/20 10:11 | sp | No Comments