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薬指の独立…。
このフレーズ、なんかちょっと文学的な香りがします…。
…。
さて。
今回は、「薬指だけを動かすのは結構辛い」というお話をさせていただこうと思います。
今さら「薬指だけを動かすのは結構辛い」なんて言っているようでは、自分の未熟さを露呈しているようでお恥ずかしいのですが…。
薬指だけ動かそうとしても、中指や小指がくっついて動いてしまって、なかなか薬指を独立させるのが難しいんですね。
ここでぼくが知っている、薬指の独立のための練習法をご紹介しますね。
手の指先だけを(5本とも)テーブルに着けて、薬指と中指だけを、交互に持ち上げる(テーブルから離す)、というトレーニングです。
ちょっとやってみてください。やったことのない方には、結構難しいかもしれません。
早く動かせるに越したことはないのですが、ゆっくりでも、一定のテンポでできるようになることが、まず大事なのではないでしょうか。
って、今さら気が付いたのですが、薬指を中指から独立させることより、小指から独立させることのほうが難しいですね…。
トランペットでは小指はまったく使わないので、先の練習法を薬指と小指に置き換えてやってみたことがなかったんです。
こちらのほうが難しいです…。全然、うまくできませんでした…。
で、ここからが真の本題です。
トランペットでは、薬指だけを動かすというシーンは意外に少ない、ということをご紹介してみたいと思います(ちょっと地味な話しだな…)。
前に、トランペットの運指のパターンを解説させていただいたことがあります。
復習させていただきますね。
1・何も押さない
2・1番ピストンだけを押す
3・2番ピストンだけを押す
4・3番ピストンだけを押す
5・1番と2番を押す
6・1番と3番を押す
7・2番と3番を押す
8・すべて押す
以上の8通りです。
ところがですね、上で紹介した「4」の「3番だけを押す」という運指は、基本的には使われることのない運指なのです。
なぜかというと…。
トランペットは、ピストンを押すことによって、そのピストンと繋がっている管に空気に通し、そのことによって音程を換えていきます(音程のメカニズムについては、このコラムと、このコラムをご参照ください。それぞれ長い説明になっておりますことをご了承ください…)。
ピストンを押すことで、管全体の長さを伸ばす(管全体の長さを変える)、という行為をしているわけなんです。
トランペットでは、唇の振動で発生した音が管の中で共鳴して音になるので、管の長さが伸びると、共鳴する音の周波数が低くなります。
大きな太鼓ほど、低い音が出ますよね。乱暴にいうと、そういうイメージです。
で。
3番のピストンに繋がっている管の長さは、実は、1番のピストンに繋がっている管と、2番のピストンに繋がっている管を足した長さと同じ、なのです。
つまり、1番と2番を押したときと、3番だけを押したときとでは、同じ音程の音が出ることになります。
3番だけを押すのは動作的に辛いので、1番と2番を押す運指が使われ、3番だけを押す、という運指は基本的には使われません。
というわけで、3番のピストンは、「1番のピストンと一緒に」、もしくは、「2番のピストンと一緒に」、または、「3本全部押す」、というこの3つのケースでしか使われないことになります。
非常に地味な話しになってしまいましたが、「薬指の独立」がテーマだったのに、トランペットでは薬指を単独で動かすことはほとんどない、ということをお伝えしたかったんです。
といいつつ…。
ここに落とし穴があったりします。
それは…。
このところ、2番と3番を同時に押す音が使われるキーの音階練習を多めにやっているんですね。
2番+3番の運指が出てくるキーは、結構難しいので…。
そしたら、2番だけを押す運指のときに、3番(つまりは薬指)も一緒に動いてしまうクセが顕著に出るようになってしまいまして…。
苦手な、薬指が関係する動きを特訓していたら、それまで簡単だった中指だけを動かすという動作が苦手になってきてしまった…、という、まあどーでもいいと言えばどうでもいい話しなんですが…。
人生でもよくありますよね。
何かを克服しようとトライしたことによって、新たな困難が生まれることが…。
人生において、なぜ、「勉強には終わりがないのか」。
その理由のひとつが見えた気がします。
…。
強引に人生に置き換えて、今回の話しを大きくみせようとしてみました…。
そんなこんなで、ぼくは今日もラッパを吹いて暮らしております。
(「薬指の独立」というキーワードが気に入って書き始めたのですが、こんな内容になってしまって、本当に申し訳ございません。最後までお読みいただけたこと、深く感謝いたします。ありがとうございました)