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歌舞伎の市川団十郎人気にあやかって、家紋である三重の四角形、
三つのマスを重ねた紋ですが、これを名前にした「三枡・三増」、
それから洒落で名乗る名前、紋所を着物に刺繍したり、
染める仕事があった時代の「紋入れ」の家業からとって、「紋弥」など。
師匠の家に入門の挨拶に行った時に食べていたおかずから命名するとか、
容姿から名づけた「源氏」、なかには「擬音・擬態語」でついている人もいます。
さてこの秋に、曲独楽の世界でも、150年振りに名前が復活する事が、
先ごろ新聞発表になりました。
博多小蝶という名前です。
この名前は、途絶えていましたが、ゆかりの地である博多の曲独楽、
筑紫珠楽さんの家が、代々の名である珠楽を次代に襲名することに伴い、
当代珠楽さんが博多小蝶と、改名することが決まりました。
女性の芸人というのは、なかなか昔から評判になった人が少なくて、
第一、結婚してから継続して現役でいるという人が、あまりいないのも、
名前が記録に残りにくかった原因のようです。
平和な状態が続いてこそ、このように歴史がある名跡を
復活させる事も可能になるわけですから、
現在の曲独楽の状況も、長い目で見ていくと、今がもしかしたら一番、
恵まれているのかもしれません。
全国で公演する芸というのは、お呼びいただく地域の方の、
ご縁がその栄養源となっているのであり、
地域での祭りや、結い、無尽、講などが元々盛んな場所に伺うので、
訪れる場所ごとに、驚きの出会いや発見があるものです。
距離が離れているのに、同じ節回しの言葉を使っている、などは
毎回のように経験する楽しみですが、
港の漁業や山の木地師の文化、
遍路や戦国の世での人の移動の名残りだったりして、
生き抜くことに全力を尽くしてきた日本の人の情景が見えることがあります。
博多小蝶は、江戸末期から明治にかけて活躍し、
博多はもちろん全国規模での公演をし、
各公演の記録も多く残る、とても貴重な女性の曲独楽芸人です。
芸一途に、結婚する事も(多分)無かったので、
後継がいなかったのですが、
同じ博多の珠楽さんが、この名前を復活させるのが、
本当に私は嬉しくて仕方が有りません。
博多の曲独楽は、独楽の製作も独自に続けているので、
なかなか全国公演には、大変だと思いますが、
江戸由来の裃姿での曲独楽、
今年の11月に襲名披露があるようですので、
興味を持っていただけると嬉しい限りです。