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静寂の海に突然音もなく浮上してきた大きな背びれ。
水面に高く持ち上げられたそれは2m近くあるだろうか。
次の瞬間、まるで潜水艦のような黒くて大きな頭が呼吸孔から吐き出される大量の泡と
共に浮上し、辺りの静寂を破った。
その瞬間を狙って高速連射のシャッターを切る。
シャチはマイルカ科の仲間で最大の種。
白と黒の巨体と目の上にあるアイパッチといわれるの白い模様が特徴的だ。
そもそも最近まで日本の海域にシャチが生息していることはあまり知られていなかったが、
歴史を辿ると遥か昔からその存在が認められていたことが明らかになる。
古来アイヌの世界では「レブンカムイ」(沖に住む神)として崇められ、各地でシャチの骨も
出土しているという。また文献によると1960年代頃までは三陸沖から北海道オホーツク
近海にかけて継続的に捕獲されており、肉は食用にされていた他、良質の油が工業用原
料として利用されてきたとある。
以前、アラスカの氷河海域で船の上からシャチの姿を見て「これぞアラスカ!」という思いを
抱いたものだが、今ではここの船長が「羅臼の海が世界一」という程までにたくさんのシャチ
が観察されるようになり、その事を知ってから僕も度々撮影に訪れている。
近頃は外国人観光客や修学旅行生までもがはるばるシャチを見にやってくるという。
ここ知床羅臼の海はシャチの他に多くの海洋生物が観察できる魅力的な海だ。
実際に船で沖に出てみると、無数の海鳥達が海面で羽を休め、ほぼ高い確率でイルカや鯨
類を見ることができる。また、流氷の訪れる冬季には世界は一変し、アザラシやトドの海獣
類の他、たくさんの海ワシ達の楽園となる。
これらの光景はまさに日本離れした「日本の風景」。
この海を知って改めて北海道の自然の豊かさに圧倒されるのである。
北海道は小さな島であるが、その中に詰め込まれた圧倒的な自然を求め写真で記録したい
と思い、長年撮影の旅を繰り返していてもなかなか思い通りの作品を掴めない。
どうやら芸術の世界には「石の上にも三年」という言葉は全く通用しないようだ。
明日からいよいよ長期で大雪山に入る。
今年は素晴らしいヒグマの絵が撮れるようにがんばろう・・・。