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2012/06/18

10年勤めた会社を辞めたら、なんだかやたらと身軽になってしまった。
とにかく時間だけは有り余るほどあった。人生初の料理も体験したし、慣れない土いじりなんかもやってみた。クロスワードやナンクロ、数独にも挑戦した。
でも、まだまだ時間は僕には消費しきれないほどたくさんたくさんあるのだった。

会社員時代は、毎日朝早く電車に乗って、パソコンとだけにらめっこして、偶に電話をしたり受けたりして、終電で帰った。判を押したように日々は続き、永遠にこんな日が続くんだろうと思っていた。与えられた仕事はそれなりに楽しかったが、10年もやっていれば確かに飽きる。でも、その飽きの部分も含めて仕事というものを理解していたはずで、不満はないはずだったのだ。
けれど、この話が来たとき、チャンスだと思わなかったわけじゃない。
アパートの管理人を変わってほしい、と父に言われたのは正月に帰ったときのことだった。僕の両親は田舎にここを含めて5棟のアパートを持っており、このところ急に増えた入居者のトラブルに手を焼いていたらしい。
――最近の若い人のことはよくわからんし、お前代わりにやってみないか。
その一言に頷いた僕は、三月末で退職し、このアパートに管理人兼入居者として引っ越してきたのだった。

が、ここまで時間を持て余すとは正直考えても見なかった。
管理人といってもルーチンでやる仕事は実はさほど多くない。見回り、雑草抜き、玄関の掃除。どれも一時間前後あれば終わってしまうような少なさで、僕はここに来て意外と自分が前の仕事を好きだったと言うことに気が付きさえした。なにしろ「やらなければならないこと」が、これしかない。入居者のほとんどは学生とまだ若い社会人で、父が言っていたような無理難題は今のところないものの、特段の接触も持ってこなかった。

だから、暇つぶしにガーデニングを始めたのだ。
アパートの敷地内には、ちょっとした花壇が出来そうなスペースがある。もともとは母の趣味で四季折々の花を植えていたそうだけれど、高齢になってそれも面倒になったらしく、越して来た時はほとんど雑草の天国だった。
今のところ、暇な時間の大半を費やして、雑草を抜き肥料をまいたおかげで初めてながらも花壇はなんとかそれらしくなっている。時期が悪くて春には間に合わなかったが、来年はチューリップでも植えてみようかな、と思っている。
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*今回の画像は「Photolibrary」さまからお借りしました。

 

2012/06/18 09:30 | momou | No Comments