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2012/06/07

海やプールの実技以外に、毎日フリーダイビングに必要な様々なレクチャーが行われました。基本知識は「マニュアル・オブ・フリーダイビング」というウンベルトの著書で学んでいることが前提。レクチャーはマニュアルのおさらいのようなものはなく、それぞれ専門分野の講師、時には耳鼻科の医師によるレベルの高いものでした。

■呼吸法
イタリアの現役トップアスリート、フェデリコ・マナによるクラス。キラキラというよりはギラギラとした朝の日差しの中、プールサイドで思い思いの場所に座り、ひとりで、またはペアになり、様々な呼吸法と、その指導法を学びました。フェデリコは呼吸・耳抜きといった、言葉では伝えにくい技術のクラスを担当していましたが、本当にわかりやすく伝えてくれます。

diafram(ダイアフラム:横隔膜)
inhel(インへル:吸うこと)
exhel(エクスヘル:吐くこと)

あまり耳慣れなかったこうした単語の意味は、すべてフェデリコのジェスチャーから学びました。また、この呼吸法のクラスは、日を追うにつれとだんだんレベルアップしていき、ある朝は鼻から何が出ても良いように「テッシュペーパー持参」で、といったものもありました。

「息を吸い、息を吐く」という人間が生きるための一番基本的な機能である呼吸。普段無意識で行う生理的反応の一つでもありますが、非常に奥が深いものです。またフリーダイバーにとって呼吸は肺活量の向上、肺と横隔膜の柔軟性の向上、そしてよりリラックスをするためにも必要です。このためトップダイバーの多くはヨガの鍛錬をしています。

フリーダイビングは、「呼吸」を止める競技ですが、正しく息を止めるためには正しく「呼吸」することが大切である、ということ、を改めて学びました。

■イコライゼーション
equalization=圧平衡、いわゆる「耳抜き」のことです。海に潜り、鼓膜が圧迫された時に感じる違和感や痛みを無くす方法です。(高層ビルのエレベーターや、飛行機でも同様です。)。

フリーダイビングの海洋競技にとっては避けて通れないもので、これが出来なければどんなに長く息を止めていようが、潜ることが出来ません。耳抜きはスキューバダイビングでも必要なテクニックですが、フリーダイビングでは垂直に毎秒1-2mという速さで潜っていくため、急激な圧変化がかかります。このために、鼻をつまみ耳に空気を送る「バルサルバ法」というやり方以外にも、実に様々なテクニックが生み出されています。

実は私は、特別に鼻をつままなくても自然に耳が抜けるという、フリーダイバーとしてはラッキーな体質なのですが、その分、自分でコントロールが出来ない、ということが弱点です。また、人に伝えるという意味では「勝手に抜けるから」では済みません。しっかりと新しい耳抜きをマスターしなくては、と思います。



■リラクゼーション

心理学のスペシャリストであるクララ先生のリラクゼーションクラスでは、様々な瞑想法、自己催眠法、などを学びました。スタティックを始め、フリーダイビングすべての種目に共通して必要なものが、このメンタルコントロールです。が・・・。特にランチ直後の、午前中の海とプールの疲れがどっと押し寄せる中、部屋を薄暗くして行うこのクラスは過酷を極めました。決して眠っていたわけではありません。

目を閉じて、リラックスしていただけです・・・・。

■ブラックリスト
そう、眠っていたわけではないはずだったのですが・・・

「Yuuukiii! Stand Up!」

ウンベルトは本当に目ざといのです。私は、レクチャールームの中でも毎回死角に陣取っていたつもりだったのですが、目を開けると、常にウンベルトの視線が、がっちりと真ん前に。こうして、「ブラックリスト」の第一行目に、しっかりと私の名前が載ってしまいました・・・・

ブラックリストは、何かペナルティがあると容赦なく書き込まれるリストです。居眠り、遅刻、携帯電話、レクチャー中のfacebook、などなど。生徒でもインストラクターでも、ちょっと油断しているとブラックリスト入りしてしまいます。最終的には殆んど全員が書き込まれ、私はその後2度めも書き込まれ、ウンベルト自身の名前も書き込まれました。なお、そのペナルティで集めた罰金は、最終日の全員分のビールになりました!

■按摩講座
レクチャーは毎晩夕食後に23時まで行われましたが、最終日前日の夜だけは、フリーとなりました。翌日は最終トレーニングが残っている上に疲れもピーク。あれほど待ち望んでいたはずのフリータイムなのですが、なんとなく、毎日あったものが無くなると物足りない気分になるから不思議です。

するとこの時間に、チェコ人の受講生の一人がマッサージの方法をシェアしてくれる、ということで、希望者が集まりました。プールサイドの一角に敷かれた絨毯の上で始まったのは彼が中国で習ったという按摩術。テーブルの上には豪華な水タバコが置かれ(もちろん、翌日トレーニングがあるので誰も吸いませんが)、チェコ、ウクライナ、日本、コロンビア、トルコ、フランス、ポーランド・・などなど。。各国の受講生が彼を取り囲み、お互いの肩を掴み、トレインのように按摩を始めました。(ついでに猛烈に蚊に刺されながら)

トレーニングで酷使した身体のメンテナンスはとても大事なので、この按摩はとても有意義だったと思います。いよいよ講習も終わりに近づいた夜、エジプトのプールサイドの絨毯の上でチェコ人から中国仕込みの按摩を習うという不思議な光景。忘れられないアラビアン・ナイトでした。

Photo by Megumi Matsumoto
Bernard Wong
Nicolas Largueze

2012/06/07 10:13 | yukimuto | No Comments