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2012/06/05

■スタティック
海から上がった後は毎日ウェットスーツのままプールに直行。間髪入れずにスタティック(息止め)の開始です。私ははついぞ上から眺めることはなかったのですが、これだけの人間が一斉にプールに浮かぶ様子はちょっと壮観というか、異観です。

スタティックは単に息を止め水に浮かぶ、という種目ですがフリーダイビングを行う上での基礎中の基礎。ウンベルトはとても重視していました。そして様々な条件のインターバル、組み合わせのスタティックを毎日行いました。ついさっきまでみっちりと海でのトレーニングをしていたことなどすっかり忘れるくらい、毎日かなりの時間、プールに浮かんでいました。

ウンベルトのトレーニングは工夫が凝らされており、スタティックの前にペアになってリラクゼーションの時間を設け、水に浮かんだままゆさゆさと身体をゆすってみたり、ペアの人に水中で体を回転させてもらったり、などというものもありました。これは本当に気持ち良く、眠ってしまいそうになりました。

実は私はもともと、スタティックが非常に苦手です。最低基準4分間、というこの毎日の「スタティック責め」があまりに憂鬱だったので・・・この時間帯はある意味、身体も頭も使わなくて良い唯一の「安息の時間」と思うようにしていました。

スタティックは身体的なものもさることながら、メンタル面が大きく影響するものです。特に、体を動かさなくても、あれこれと脳を働かせるとそれだけで酸素は消費されてしまいます。スタティックの最中、一種の瞑想状態に入れると、時間があっという間に過ぎて行くのですが、これがやろうと思えば思うほど、出来なくなってきます。

スタティックをやっていると「時間」というものへの人の感覚がいかにいいかげんなものか、ということが良くわかります。例えば「15秒」という時間。日常では意識することがない、ほぼ一瞬の時間です。この15秒間。息を止めていよいよ苦しくなってきた時には、途方もなく長い時間に感じます。特にこの時に自分で時計を見始めたりすると最悪。永遠に時間は進みません。ところが、ふと意識を他に向けると、やはり一瞬で過ぎ去る時間なのです。「A watched pot never boils 待ち湯は長い」ですね、まさに。意識をそこに向けなければ一瞬なのに・・・永遠に終わらないように思える長い会議の最中に時計に念力を送ってもますます会議時間が長く感じるのと同じことです・・・

結局コースの間中私はスタティックに悩まされました。ある朝は、朝食抜きで早朝自主トレも行いましたが、突き詰めようとすればするほど集中出来なくなるという悪循環に陥りました。スタティックは、私にとっての大きな課題です。

ちなみに息止めの練習は、決して一人では出来ません。私の早朝練に美鈴選手は自分も朝食抜きでコーチとして付き合ってくれました。また夜寝る前の瞑想にも付き合ってくれました。一分の寝る間も惜しいハードスケジュールの中なので、これはサクリファイスだったと思います。先輩ダイバーとして、そしてインストラクターとして、またも尊敬する一面を垣間見ました。

■モノフィンレッスン、リラクゼーション、アプネアゲーム、etc…
スタティック道場のような印象が強いこのプールですが、その他にも様々なクラスがありました。モノフィンレッスンや、各種の水泳力のテスト、ダイナミックのテスト、リラクゼーション、そしてチームビルディングのためのアプネア・ゲームといったちょっとクレイジーで楽しい思い出も。また、朝はひんやりと冷たいプール、午後から夕方になると灼熱の太陽でぬるま湯のように温まり、エジプトの強力な太陽の力を思い知りました。このプールは25mプールですが、片方が浅く、片方が深くなっています。浅い方でも1.5mはあり、私は背が立ちませんでした。深い方は2.5m以上。こんなプールで、毎日嫌になるほどフリーダイビングの練習が出来るというのも、東京での日常からすれば贅沢なことです。

 

■山盛りバイキング
スタティックが終わると、ウェットスーツを脱ぐのももどかしく、ランチです!スタティックが終わるのが13時近く、午後のレクチャーが14時からなので、部屋に戻ってテキストを取りに帰って、など所用を済ますと、実質の食事時間は20分ほどしかありません。


このホテルのダイニングはブッフェ形式なので、毎食好きなものを好きなだけ食べられます。もう、猛烈な勢いで、一番大きな皿に食べ物を盛っていきます。この年になって、高校生の部活の合宿か、という勢いです。こんな調子・・・・


お替りを取りに行く時間が無さそうな時には、3層構造に盛ったりもしました。
サラダの下には、肉やパスタが隠されていたり。デザートも毎回モリモリ食べていましたが、時にはケーキの代わりに肉をデザートに食べるような日もありました。

食堂は適当なテーブルに座って良いので、時により色々な国の受講生と一緒にモリモリと。外国人はよくしゃべりながらよく食べるのでそれにつられて、毎回猛スピードで食べるうちに、私の胃は確実にストレッチされて行ったのです・・・。

そういえば、お腹を壊す気配もありませんでした。何とか最後まで体力が持ったのはこの食事のおかげ。美味しい食事と、丈夫な胃腸に感謝します。

photo by Megumi Matsumoto
Atsushi Kawai

2012/06/05 11:51 | yukimuto | No Comments