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到着した翌日、コースが始まるのは午後からなので午前中はのんびりと食堂で朝食を取ったり、アラブ風の真っ白なコテージが並ぶ敷地内を散策したり。嵐の前の静けさのようなゆったりとした時間を過ごしました。
そして・・・「レクチャールーム集合、14時」
ついに、「Apnea Academy 4th international instructor course 」が始まりました。
Apnea Academyはイタリアを本拠地としたフリーダイビングの指導組織でかつての連続世界チャンピオン、イタリアのUmberto Pelizzari(ウンベルト・ペリッツァ―リ)が率いています。(なお、日本では松元恵さんが2010年にこの理念を受けたアジア支部としてApnea AcademyJapanを発足しました。)
私にとってはジャック・マイヨールと同様に雲の上のレジェンド的な存在だったウンベルト。背も高く俳優のように格好よく、真近で見ても圧倒的な存在感です。が不思議なことに人を威圧する感じがありません。根っからの親分肌というか、口を開くだけで、集団を楽しい仲間にしてしまうような、そんな温かい感じを受けました。
そのウンベルトが、一人一人顔を見ながら、点呼開始。
「アレキサンダー、アレクサンドラ、オレクサンダー・・・」
似たような名前、似たようなスキンヘッドのゴツい人が多く、私は何日間か誰が誰だか全く区別がつきませんでした。が、ウンベルトはこの瞬間から一人一人の名前と顔を覚え、すぐに個性も見抜いていくのです。西洋人にとっては東洋人の顔も名前も覚えにくいはずなのに、坊主頭の「カワイ」「カワムラ」の2名も、全員「キム」の韓国人男性4名もすぐに識別。一流の指導者は凄いな、と感心したのは既にコースが終わった後でしたが・・・。
今回は世界28か国から約50名、講師陣を含めると70名がこのコースのために集合。ウンベルトは現役のトップレベルの選手をインストラクターとして召集しています。良く見るとイギリスのサラ・キャンベル、チェコのアレーナ、フランスのフレデリック・セサ・・・などなど世界大会の表彰台で見るような豪華な顔ぶれがずらっと居並んでいました。
受講生はチェコ・ウクライナなどフリーダイビングが盛んな国からは大世帯で参加。東アジアからは日本人が4名(講師2名)。韓国人が4名。またシンガポールやトルコなど一か国から一名で参加という受講生も何人かいました。日本以上にフリーダイビング人口が少なく練習環境に恵まれない国で、フリーダイビングを広めようと、熱い志と共にやって来ています。
ちなみに、私がこのコースに参加した目的は職業として「インストラクターになるため」ではありません。「フリーダイビングを広めるために、より深く、正しく学び直したい。」ということが目的でした。昨年ひょんなことから自分でサークル「Little Blue」を立ち上げることになったり、ひょんなことからこのコラムを始めることになったり、より多くの人にフリーダイビングを、広く、正しく伝えていきたいという思いが強くなったためです。そのために何と方法がないか、と思っていたので非常に良いタイミングでコースに参加できました。
このインストラクターコースはイタリア語、英語が隔年で開催されるため、参加のチャンスは実質2年に一度。参加者の中には昨年秋からウェイティングリストで待っていた人もいるようです。今回私は、転職と休暇の予定が決まった後にちょうどぽっかり空いたキャンセル枠に運良く入れました。本当にラッキーだったと思います。
ともあれ、今回の参加者は、背景の差や技術の差はあれ全員同様の目的を持っているはずです。これにより何とはなしに形成される一体感。そして初日から全員が持った、ウンベルトへの敬愛の眼差し。これがなければ、おそらくこのやけくそ気味にハードなコースは乗り切れなかったのではないか、と思います。レクチャーの中で指導における「コミュニケーション」の重要さということは学びましたが、ウンベルトは自らのスクールで、初日からそれを実践していました。
かくして、このミーティングの終わりに、ウンベルトから一声。
「ウェットスーツに着替えて全員海へ。今日は軽くだ。無理はするな (注:トレーニングはガッツリ2時間)。戻って夕食、その後レクチャールームに21時集合23時まで。時間厳守、GO!」
え?たしか配布されたスケジュールには今夜は21時以降RESTって書いたあったはず・・・
と、確認する間もなく、海へ・・・・この夜書いた現地からの唯一のブログに繋がります。
このスケジュール、すでに初日以降見るのを諦めました。何故なら万事この調子だったので。
photo by Megumi Matsumoto
Bernard Wong