レズビアンの加奈さん(仮名・26歳)は、パートナーの智子さん(仮名・24歳)と同棲生活を始めました。
東京と大阪の遠距離恋愛でスタートした二人の関係は、交際2年目に大阪の智子さんが加奈さんの東京のマンションに引っ越して、同棲生活へと移行したのでした。
同棲生活を始めて間もないある日、二人はまだ片付けの終わらない智子さんの引っ越し荷物を一緒に整理していました。
そして、たまたま加奈さんが手にしたのは、智子さんのアルバムでした。
何気なくそのアルバムを開けてみると、今より少し若いころの智子さんの姿が写っています。加奈さんは興味津津にそのアルバムをめくっていくと、1人の女性とのツーショット写真がいくつか出てきました。大変仲の良い様子で、お互いの顔を密着させたり、温泉旅行やテーマパークへ一緒に出かけたと思われる写真等がありました。
「この人が元カノかぁ」加奈さんは、話には聞いていた元カノの写真を目にしたのでした。
そして、写真の中には二人のキスシーンなどもあり、加奈さんは、だんだんと気分を害していきました。
たまたま他の部屋に行っていた智子さんが戻ってきて、アルバムを手にして突っ立っている加奈さんに「どうしたの?」と声をかけました。
加奈さんは、過去の事だとはわかっていても、元カノの写真を発見してしまって気分を害した事、なぜ元カノの写真を今でも保管しているのかという事、元カノに未練があるのではないかという事を、智子さんに吐き出すようにして言葉をぶつけました。
智子さんから帰ってきた返事は、元カノとの思い出の物は全部捨てたと思っていたが、たまたま残っていたアルバムを加奈さんが発見してしまったので、それは、すぐに処分するというものでした。そして、未練などは一切なく、別れてからは連絡を取ったこともないし、二度と会うことはないと言うのです。
智子さんの説明を聞いて、加奈さんの動揺は少しは治まりましたが、どうも釈然としません。ふとした瞬間に、智子さんが元カノとラブラブ状態で写っていた写真の事が脳裏に浮かんで、怒りというか、悲しみというか、まるで現在進行形で浮気でもされているような気分になるのでした。
過去に嫉妬する自分はおかしいと思いながらも、その気持ちを上手く整理することができずに、レインボーサポートネットへ相談のメールを寄せられたのでした。
さて、実は、この加奈さんのような相談は少なくありません。
加奈さんの場合は、彼女の元カノの写真を発見しただけでしたが、他の方の相談では、彼女(彼氏)が、元カノ(元カレ)と友達として頻繁に会っているのが嫌だというものがありました。
どういう事かというと、ビアンバー(ゲイバー)で知り合ったカップルが別れた場合、そのバー通いだけはそれぞれ止められず、新しい恋人ができても、そのバーに通い続けるので、バーの中で元恋人に再会しているという状況です。そして、別れた元恋人とは友達になっていて、恋人ではなく友達関係は継続しているという場合です。
恋人の過去の人への嫉妬は、アリかナシか?
相談者の一番の希望は、『嫉妬心の処理の方法を教えて欲しい』というものです。
中には、嫉妬心を持つこと自体に罪悪感を感じていて、嫉妬をする自分を責めてしまっている場合もあります。悪いことと思っているのに、嫉妬心を拭い去ることはできずに困っているという状態なわけです。
さて、嫉妬心というのは、自然に湧き上がってくる感情なわけで、それを感じてしまう事自体を防ぐ事はおそらく不可能なのでしょう。
恋人への嫉妬は、愛情への裏返しでもあります。それだけ相手の事を愛しているという証拠でもあります。
度を超えた束縛や嫉妬で、実際に恋人を傷つけてしまうことは大いに問題ですが、内心の段階で止まっているのであれば、それは許されるものでしょう。
嫉妬心の処理の方法としては、そういう感情を抱いているという事を、穏やかに恋人に相談してみることで、かなり解決できます。
嫉妬心を抱いた人だけの問題にせずに、カップル2人の問題としてとらえて、そのカップルなりの解決方法を見つけるということです。
それでも解決できないときは、お互いの価値観などの考え方の違いを再認識するわけで、それが原因で別れが訪れることはあり得るでしょう。
人は、過去の経験を踏まえて現在があるわけで、未来志向的な言い方をすれば、過去の事は問わずに、今の二人の関係を築いていく心構えが必要です。
しかし、過去を知って今を疑うような状況から抜け出せないときは、未来に向けた関係を諦める(別れる)覚悟も必要でしょう。
過去へのこだわりを持ち続けるのか、未来に向けて今これからを見ていくのか、この選択は自分自身でしなければなりません。
過去への嫉妬はアリだと思いますが、その事を今現在の二人の関係にどの程度影響させるかは、当事者自身に課された試練です。
相手の全てを自分のものにしたいという支配欲・独占欲は、強度な愛情の裏返しでもありますが、戻ることのできない過去の事実に関しては絶対的に及ぶことのできないことなのです。
自分の力ではどうすることもできないから、そのこと自体がストレスになり、恋人の過去の事実の存在へのショックとも相まって、嫉妬の炎は燃えるわけです。
恋人と話し合う等のコミュニケーションと、二人で過ごしていく時間の経過の二つをもって解決するしかない問題です。
それほど人を好きになるのは、素晴らしいことでもありますね。ただ、自分勝手な恋愛はNGです。悩める恋人たちに、永遠の幸せが訪れる事を祈っています。