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2012/05/22

地球の舳先から vol.239
東北/被災地 定点 vol.6(全7回)

「バイパス混んでるから、違う道通っても大丈夫?…被害のあった、真ん中なんだけど…」
気仙沼市に入ると、タクシーの運転手さんがそう言った。暖かな気遣い。
毎度毎度のことではあれ、胸が熱くなるとともに、ああ気仙沼へ来たんだなあ、と思う。
更地の目立つ南気仙沼地域をリアシートの窓越しに眺めていると、
「見るもの、なんもないでしょう」と言われて、否定も出来ずに黙ってしまった。
4月初旬の季節はずれの雪をうっすらかぶった光景は、あまりに寂しい。

 

2度目の気仙沼、宿泊は高台の気仙沼プラザホテル。
ランドマークにもなっている三角の塔の真ん中の部屋だった。
海を臨む温泉は美しく、対岸には新しく建てていると思われる水産工場。
夜の外灯も5か月前とは比較にならないほど明るく、確実な歩みを肌で感じる。

 

翌日は朝から、気仙沼駅前の観光協会でレンタサイクル(500円)を借りていた。
ギアもない、懐かしささえ漂うママチャリだが、街をめぐる足としては最適かもしれない。
ただし、気仙沼のゆるキャラ「ほやぼーや」がついていて、少し恥ずかしい…。

かさ上げしてあり歩道がない道、大きな砂利道も多く、車に気を使いながら走る。
これから観光面でも復興すべき所。観光客が増えて交通マナーが…なんて言わせたくない。
以前来たときよりも、格段に信号が増えている。小さな変化も、大きな一歩。
この旅は仮設だがいくつもできた商店街巡りと決めていた。さっそく、出発。

●福幸小町・南が丘通り
気仙沼市南が丘1-2-2 / 事務局 090-4550-9750

 

まずはホテルからエースポートを抜け、気仙沼駅周辺へ向かう。
前回来た時はプレハブの骨組みだけだった、大規模な商店街がオープンしていた。
わたしは、そこから真っすぐ、わずか数十メートルのコーヒーショップ「ヴァンガード」で朝の1杯。
地元のおじちゃんたちが、復興計画や堤防計画について熱く話している。
黙々とコーヒーを淹れる大将。コーヒーの味なんてわからない、と思っていたのだが
見事に覆された。なんだ、この美味しいコーヒーは。

 

●南町 紫市場
気仙沼市南町1-1-15/ 事務局 090-8612-6031

  

日曜日の朝にも関わらず、はるか遠くからも大音量のジャズが聞こえていた。
そういえば、昨日の晩も聞こえていた、この音の正体は何なのだろう。
音に吸い寄せられるように進むと、一軒の店先に大型スピーカーが設置されていた。
クレームを気にしなくていいのは、もうこのあたりに住んでいる人がほとんど居ないからなのだろうか…?
一番大規模で50店舗以上が入っているという、南町商店街。
ここでお寿司を食べそびれたのが、今回の旅の反省点である。

●東新城 かもめ通り
気仙沼市東新城1丁目6-6/ 090-9039-6177

 

こちらには、前回訪問時にインタビューをさせて頂いた茂木さんの味屋酒店が入っている。
店長の茂木さんが迎えてくれた。お店はお酒はもちろん野菜や花もある。
土地は皆で5年契約で借り、上物は市の補助で建ててもらったそうだ。
以前、店のあった鹿折とは、駅を挟んで逆の地域になるが、早期の出店を目指した結果だった。
つい先日も市の説明会があったというが、茂木さんのかつての家と店舗があった場所は
「Cランク」と設定され、住んではいけないとされる区域なのだという。
しかし、そのランクのラインは説明会のたびにころころ変わり、真に受けられないと言う。

日本酒の「福宿」と「酔仙」を買った。自転車だといったら、丁寧に包装してくれた。
このあたりは津波の被害もほとんどなく、ギアの無い、いつもの半分位のスピードの
自転車運転に、思わず鼻歌などが漏れる。
ただし、道行く人々がわたしの自転車のほやぼーやを見ている気がしてならない。

●気仙沼 さかなの駅
気仙沼市田中前2丁目12-3/ 0226-21-1231

 

評判がいいと定評のあるこの市場。5ヶ月前に来たときはまだ、なかった。
小腹が減ったので、市場の前のキッチントラックで串焼きを買う。
美人女将で有名な斉吉商店でも、買い物をした。にしんの南蛮漬け、他。
野菜やお茶も売っていて、確かに値ごろ。
市場の場内を思わせる活気は、商店街とはまた違う賑わいがある。

●復幸小町 田中通り・田谷通り
気仙沼市田中前4丁目2-1・田谷11-1/ 事務局 090-4550-9750

 

前回取材をさせていただいた安藤さんの磯屋水産や、
人気コーヒー店、アンカーコーヒーが入っているのはこちらの田中通り商店街。
夜明けの灯台や早朝の漁師など、海街らしいネーミングとパッケージの商品を買い込む。
前の晩に横丁の屋台でご一緒した、関西から来ている2人組のチャキチャキお姉様コンビと再会。
また森川さんとも偶然にここで再会し、気仙沼名物というクリームパンを頂いた。
そのままでもおいしいが、家に帰って少しトーストしたらまさに絶品だった。
酒や魚はもちろんとして、コーヒーやパンまで美味いとは、この街はどうなってるんだ。

 
(アンカーコーヒーにて。)

●復興屋台村 気仙沼横丁
気仙沼市南町4丁目2-19/ 事務局 080-1692-8000

5ヶ月前と同じく、気仙沼横丁で昼食を取る。カニ。
自転車なので、ビールは控えた。
「おいしい?」店員さんが入れ替わり立ち代わり同じ事を聞くので、こちらもボキャ貧になる。
気楽会に参加していた、外国人の2人組と一緒になる。
ちなみに彼らとは東京へ行く新幹線まで一緒だった。
旅の理由を聞くことはできなかったが、何にしてもありがたい話である。

●鹿折 復幸マルシェ
気仙沼市中みなと町107-1/ 事務局 080-5225-5151

 

ひときわ凄惨な雰囲気が漂っていた鹿折地区も、随分とがれきがなくなった。
車道が整備されただけでなく、幅の広い歩道までできている。
手付かずの部分が目立つ最海側、ヤヨイ食品の倉庫は大型鳥類の楽園になっていたが…。

鹿折の商店街は団平うどんが有名と茂木さんから聞いていたので、それを食べる。
気付けば2時をまわっており、暖簾も内側に仕舞ってある。
「閉店です」なんて言わないのがこちらの人らしく、そそくさ立ち上がって、お店を辞した。

こうしてお土産を、スーツケースと自転車のかごいっぱいに買い込んで
気仙沼駅でほやぼーや自転車を返しながら、一関へ行く電車を待った。
気付けば、2012年4月時点での商店街を制覇したかもしれない。
気仙沼にこんなにたくさんいろんなお店があったとは、「以前」を知らないわたしには
ちょっとした驚きでもあり、またしても暖かい出会いもたくさんあった。
とはいえ食べ逃したものもたくさんあるので、次回は綿密な計画で食を究めたいと思う。

VIVA! 気仙沼。

2012/05/22 12:00 | yuu | No Comments