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2012/05/17

すごく難しい話しでもあるので書くのをためらっていましたが、挑戦してみますね。

トランペットの運指は8タイプしかないのに、なぜ音階を表現できるのか、ということについてです。

前に説明させていただいたことをおさらいさせていただきますね。

トランペットにはピストン(バルブ)が3本あります。運指の形は8通りです。

・何も押さない。
・1番のみ押す。
・2番のみ押す。
・3番のみ押す。
・1番と2番を押す。
・1番と3番を押す。
・2番と3番を押す
・すべて押す。

ピストンを押すことで、そのピストンに連結している管に空気を通すことができます。押さないと、連結している管を通りません(スルーさせるわけです)つまり、「ピストンを押すか押さないか」という行為で空気が通る管の長さを変化させているわけです。

言葉だけだと分かりづらいので、ぼくの年季の入ったラッパの写真を添えてみます。

こちらの写真は、ピストン(バルブ)に、管がつながっているということの紹介のために。

こちらの写真は、ピストンを抜いたところです。穴が開いていますよね。ピストンを押すことで穴の位置をずらし、空気の通り道を変えてやるのです。

トランペットは、唇を振動させて発せられた音を、管の中で共鳴させて音にします。管の長さを変えることで、共鳴する音の周波数を変化させることができるのです。

さて。

トランペットの運指は8タイプ。それによって生まれる管の長さも8タイプです。

しかし、音は1オクターブの中に、13種類もあります。ド、ド♯、レ、レ♯、ミ、ファ、ファ♯、ソ、ソ♯、ラ、ラ♯、シ、ド。

トランペットでは、大体2オクターブ半くらいを通常の演奏で使う感じです。ということは、ざっくり言って30種類くらいの音を出す計算になります。

しかし運指は8パターンだけ。

やっと本題です。

あ、本題に入る前にもうひとつ…。

自然界の音は、基音と倍音によって成り立っています。

例えば、ギターのチューニングで使われる5弦の開放で鳴らすラの音。

周波数でいうと、440Hzの音です。

このラの音も、厳密にいうと440Hzの音だけで成り立っているわけではなくて、440Hzに対して整数倍の周波数の音も含まれています。それが倍音です。

440の2倍=880Hz、440の3倍=1320Hz(1.32kHz)という具合です(倍音は、理論的には無限個あります)。

ちなみに、2倍の音は、1オクターブ上の音です。

さらにちなみに、ここでいう440Hzの音は、倍音に対して「基音」と呼ばれます。

今度は、ドの音で考えてみます。

ドの音は、平均律(後で説明させていただきますね)でいうと261.626Hzなのですが、説明のために、仮に260Hzとして計算してみます。

260Hzに対して2倍=520Hz、3倍=780Hz。

2倍の音は、オクターブ上のドの音。3倍の音はさらにその上のソの音です。

4倍の音は1040Hzで、もう1オクターブ上のドの音です。4倍なのでイコール2倍の2倍、というわけで、最初の音より2オクターブ上の音になるわけです。

5倍の音は1300Hzで、その上のミの音になります。

6倍の音は1560Hzで、その上のソの音。7倍の音は1820Hzで、その上の シ♭の音、8倍の音は2080Hzで、最初から考えて3オクターブ上のドの音、ということになります。

8倍の音というのは、4倍の音の2倍、というわけです。

というように、倍音は高くなればなるほど、音程の間隔が狭くなっていきます。

整理しますね。

260Hzの音をC3と名付けたとして(数字はオクターブの高さを表します)、
第2倍音、第3倍音、第4倍音、第5倍音、第6倍音、第7倍音、第8倍音、それぞれの音は、

C4、G4、 C5、E5、G5、B♭5、C6。

というわけで、例えばピアノのドの音を弾いても、その音はこれらのような倍音成分をまとっている、というわけです。

ちなみに、倍音成分が、音色を決めると言われています。

で、やっと本題(結論?)です。

トランペットでは、ドの音を吹くときの運指(そのときの管の長さ)で、エアーをコントロールすることにより(唇の振動具合をコントロールすることにより)、それぞれの倍音が基音となる音を出すことができるのです。

つまり、ドの運指で、C3、C4、G4、 C5、E5、G5、B♭5、C6、これらの音も出せるのです。

そして、それぞれの音のオクターブ下も出せるんです。

C3のオクターブ下は基本的には出せませんが、G4のオクターブ下のG3、E5のオクターブ下のE4、というように出せる、というわけです。

なので実際は、C3を出すための運指で、

C3、G3、C4、E4、G4、 B♭4、C5…、というように…。

音名で言えば、ド、ソ、ド、ミ、ソ、シ♭、ド…、というわけです。

簡単に言ってしまうなら、結論はこうです。

「トランペットは、倍音のメカニズムを利用して音階を出すことができる」。こう理解してください(結局、荒っぽくまとめてしまいました…)。

ところで、実際にはやっかいな問題もありまして…。

平均律、という言葉を最初のほうで出しました。

半音階を構成するのに、すべての音の間隔の比率を等しくとった音律です。

ピアノの調律は多くの場合、平均律で行われています。

しかし、トランペットの音階は、平均律で割られているのではないのです…。

今まで倍音を説明するのに、簡単な整数比で説明してきましたが、音程の周波数比を簡単な整数比で示す音程は『純正音程』と呼ばれます。

トランペットの音階は、『純正音程』が基になっています。

しかし『純正音程』では、半音階を構成する音の間隔の比率が等しくないのです。

つまり、平均律で割られた音程と純正音程で割られた音程には、誤差が生じているのです。

なので、トランペット奏者は、それぞれの音を平均律で調整された音と高さ(ピッチ)が合うように、音程を微調整しながら演奏しなくてはいけない…。

なんだそれ…。そんな難しい楽器だったのか、と、自分自身でもがっくりくる話しです。

というか、ビッチが微調整できるということは…。

油断しているといくらでも変なピッチで演奏ができてしまうという危険性をはらんでいるわけです…。

平均律、純正律については、微妙な要素もあるので、踏み込んでしまったことを少々後悔していますが、ともかく、トランペットは平均律で調律されているピアノとはピッチに誤差があり、さらにそもそもピッチは微調整できる(狂わすことも簡単…)くらいにご理解ください…。

(※各所、荒っぽい説明にもなっています。説明として言葉足らずな個所が多々あるとは思いますが、概ね、こんな感じ、という程度でお読みください)

いかがでしたでしょうか…。分かりにくくてすみませんでした…。またの機会で、いろいろと補足していけたらとは思っています…。

とりあえず、へー、くらいな感じでお読みいただけてましたら幸いです…。

そんなこんなで、ぼくは今日もラッパを吹いて暮らしています。

2012/05/17 12:55 | ohta | No Comments