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2012/03/31

ザ・シークレット・サービス
【IN THE LINE OF FIRE】1993年
大学時代、自分の進む道を決めようとしていた頃。

老齢となったクリント・イーストウッド【Clint Eastwood】が
老いたエージェントのフランク・ホリガン【Frank Horrigan】役を、
まるで彼のその時をそのまま演じるかのような姿が衝撃的だった。

世代交代とか役者の厚みとかを意識し始めたのは
恐らくこの映画からだったのだと思う。
20代からそんなこと考えてたんだと、自分ながらにびっくりする。

特にDVDパッケージやポスターにもなっているシーンが象徴的である。

大統領の警備を務めることとなり、
車に片手をついて息切れ切れになりながら走るホリガンの姿は、
どこまで演技で、どこまで本音なんだろう、と考えさせらた。

もちろん役作りの上であろうけれど、その姿にはひどく心を打たれ、
今見ても、そして今だからこそなのか、やはり同じように心揺れる。

この映画の良さはそれだけではなく
老いたホリガンに合わせるような淡々としたストーリーの進行や、
敵役となるジョン・マルコヴィッチ【John Malkovich】の名演ぶり
と、ムダなところがない。

割と堅苦しい感じで進行するこの映画、
1シーンだが“老齢”を全面に出した、ジョーク的な和やかカットがある。

必死になって駆け足で大統領の車と併走するホリガンのシーンの後、
一変してばたばたと救急隊員がオフィスに駆け込んでくる。
“ホリガンが心臓発作に!”
慌てて救急隊員を追うようにホリガンがいる控え室に飛び込む同僚達。

救急隊員『大丈夫か』
ホリガン『何事だ?』
救急隊員『心臓発作だと』
長官『大丈夫か?』
ホリガン『昼寝だ』
(その場の皆が安堵から笑う)
ホリガン『そうか チクショー! 誰のいたずらだ!』

staffs: Hey, pal, are you okay? Hey, take it easy.
Horrigan: Get the hell out of here. The hell’s going on?
stafs: I got a call here was a cardiac case.
officer: You all right? Frank?
Horrigan: Yeah, I’m on my break here.
(laugh)
Horrigan: I get it. You bastards. Who’s the wise guy?

皮肉にしろいたずらするのは“wise guy”
つまりずる賢いヒトってことなんだな、と素朴に思った。

お世辞にもかっこいいとは言い難く、
ふざけんな、と言ってもおかしくない状況をただの負け犬の遠吠えにせず、
俺より賢いやつは誰だ、とジョークにしてしまえるのは
歳を重ねた故の余裕の対応だな、と。賢い。

+++++++

コラムを書く為に改めて監督やキャストを調べるのだけれど
毎回、え、こんな所で、あ、これもこの監督が!という発見がある。

この映画の監督ウォルフガング・ペーターゼン【Wolfgang Petersen】も
私が物語が好きになったきっかけとなったミヒャエル・エンデの
ネバーエンディング・ストーリー【The Neverending Story】の映画化版や
コラムにも書いているアウトブレイクを手掛けている。、
結局自分の好みの作品はどこかでつながっているモノなんだ、と納得。

2012/03/31 09:03 | masaki | No Comments