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2012/02/24

今回は、ゲイのノブさん(41歳・仮名)と中橋の対談です。

中「ノブさんは、海外でゲイリブ活動に携わっておられるそうですが、具体的にどのような活動をされているのですか?」

ノブ「私はアメリカの某都市で暮らしているのですが、その街にあるゲイコミュニティのスタッフとしてボランティア活動をしながら、セクシャルマイノリティの権利向上のための政治的なアクションに加わったりしています。具体的には、政治家や役所に対する陳情や請願などの取りまとめとか、各種のアンケート調査の実施、会合のセッティングなどです」

中「忙しく活動されているようですが、そういう活動をするきっかけは何だったのですか?」

ノブ「きっかけは大した事ないので恥ずかしいのですが、彼氏がそういう活動をしている人で、その活動を手伝っているうちに、のめり込んでいくようになりました(笑)」

中「日本ではゲイリブ活動に参加したことはあるのですか?」

ノブ「ありません。私は大学生の時からアメリカで過ごしていまして、19歳から現在まで基本的にアメリカ生活です。日本へは年に1回帰国すればよい方ですから(焦) 日本のゲイリブについてはよく知りません」

中「日本でも、パレードが行われたり、LGBTについて啓発するようなイベントが行われたりはしていますが、ノブさんの話に出てくるような、強力に組織立った感じではまだないような気がします。政治でも、国政レベルではまだまだでしょうね」

ノブ「アメリカは、宗教上の理由もあって、ゲイはバッシングされやすい立場にあります。だから、自分たちできちんと集団を作っていないと、身が持たないというか、仲間意識が強いような気がします」

中「意外ですね。アメリカでは、セクシャルマイノリティに対する世間の受入れは良いのではないかと思っていましたが…」

ノブ「もちろん、偏見のない人もいます。でも、アンチが非常に多いのも特徴です。徹底して嫌ってきますね。いくら説明しても理解を求めても、宗教上の理由だとか言われたらお手上げですしね」

中「確かに日本では、あまり宗教上の理由でセクシャルマイノリティが差別される事は少ない気がします」

ノブ「日本のLGBTの皆さんは、それは差別を受けることも多々あるのかもしれませんが、ある意味で欧米よりも過ごしやすい環境にいるのではないでしょうか?」

中「バッシングの程度でいうと、欧米の過激なバッシングや宗教的な疎外度で比べれば、日本はLGBTに寛容な国かもしれませんね。意外な再発見ですが。。」

ノブ「ぬる~い感じですかね。だから現状でもイイヤっていう当事者も多いのではないですか?それが結局、日本でゲイリブが活発にならない理由かもしれません」

中「いわゆる抵抗とか反発とか、そういうニュアンスが根底にあって、権利擁護運動というのは発生するものだと思います。だとしたら、その抵抗や反発のさらに根底にある疎外感や孤独感といった負の感情がさほど強くなければ、ゲイリブの行動へと駆り立てる原動力自体が弱くなってしまうわけですね」

ノブ「そうでしょうね。人は皆、平等だから、LGBTを差別してはいけませんよ。といった教科書的な理論の理解だけでは、ゲイリブを大きく展開していくのは無理でしょう。感情的に込み上げてくるものを共有できるほどの過激な心理状態が、権利擁護運動の大きな原動力となるはずです。その点では、日本のLGBTの皆さんは、幸か不幸か恵まれた環境にいるのではないでしょうか?」

中「アメリカには、過激なゲイリブ活動の歴史がありますよね。映画MILKで描いていたような」

ノブ「そうですね。一種の闘争だったわけで、今でもその精神は続いています。日本には日本的な権利擁護運動のやり方があるのかもしれませんが、静かなる闘争に火が着く火が来ればいいですね」

中「当事者の方にも色々な意見があるので、それを集約していくのは難しいでしょうが、問題意識の共有や解決に向けたアクションを期待します」

ノブ「当事者からの社会への働きかけの方法も色々あると思いますので、日本式でそれを着実に実行していけば、きっと良い結果が期待できると思います」

中「そうですね。貴重なご意見をありがとうございました。また帰国された際には、是非お話をお聞かせ下さい」

ノブ「こちらこそ、よろしくお願いします」

2012/02/24 12:07 | nakahashi | No Comments