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2012/02/13

「アクースマティック」という言葉は、もともと音楽のスタイルを示すものではなかった。Akusmaという聴的な感覚を示すギリシャ語が語源で、音が発せられる原因を確認できない聴取環境を意味する。

紀元前6世紀ごろピュタゴラスの講義に弟子たちの集中力を高めるためにカーテンの向こうに自分の姿を隠し暗闇と静けさのなかで講義をした環境のことを「アクースマティック」と呼んだ。20世紀にピエール・シェフェールは『音楽的オブジェ論』のなかでスピーカーを通して聴く、つまり発音源を見ることなしに聴く環境下で制作、伝搬されるミュージックコンクレートの特徴と、このピュタゴラスの講義の状況を結びつけ、この言葉を再登場させた。

その後1974年に、作曲家で当時のINA-GRM(フランスの国立視聴覚研究所音楽研究グループ)の代表であったフランソワ・ベルがシンセサイザーや電子楽器のライブ演奏や楽器を含んだ作品(ミクスト作品)を含む電子音響音楽や「雑音の音楽」という狭義のスタイルを利用することに思いつき、この研究所のコンサート・シリーズや世界で初めて「アクースマティック」と名付けられた芸術祭(FUTURA・国際アクースマティック・アートとメディア・アート・フェスティバル)を開始し、現在に至っている。

アクースマティックのCDはアマゾンやフランスのサイトで購入できるようになっているがジャケットの美しさ、奇抜さにも注目してもらいたい。アクースマティックの曲を聴きながら何の音が聴こえてきたのか、それは自然の音なのか、人工的な音なのか、それとも人間の声なのか、どんな音素材が使われているのかを考えながら聴くのも楽しいかもしれない。

ここで、前回のアクースマティックの曲の種明かしをしてみようと思う。

1ハピネス4しあわせの何か の音素材は何かわかりますか?

ハピネスは人の声とドラムマシーンとピアノの音だけで出来ています。人の声は自分も忘れてしまったぐらいたくさんの人々の声が入っています。年齢も様々です。曲を創ろうと思ったらそれらの取材をしてそしてそこに伝えたい音は何なのかを考え音素材を録音します。

 

しあわせの何かは私、一人の声とピアノ即興の音です。ラジオドラマ風に作っていますがこの曲を創ろうと思ったときに自然に出てきた言葉を使用しています。1時間ぐらい防音室にこもり、マイクに自分の声を録音しました。ピアノの音はもっと長い曲なのですが、その曲のなかのほんの一部分しか使いません。その時にもっとも「伝えたい音」を使用するのです。人の声があちらこちらから聴こえてきますが、あれは、私の声を加工しています。リバースしたり一瞬の声だけを使用したり、声のトーンを変えてみたりしています。他、2曲は次回にしますね。

2012/02/13 08:11 | shiho | No Comments