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今回は、中橋とゲイの息子さんを持つ佐賀さん(仮名・女性)との対談です。
中「LGBT当事者のご家族との対談は初めてです。今回、対談を快諾して下さった理由からお聞かせ下さい。」
佐「息子がゲイだということを知って5年くらいになりますが、ようやく自分の心の中でそれを受け入れる余裕ができたからだと思います。」
中「息子さんがゲイだということを知ったきっかけを教えて下さい。」
佐「息子が高校生の時に、当時息子がお付き合いをしていた男性とトラブルを起こして、その男性が我が家に押し掛けてくるという事件をきっかけに知ってしまいました。」
中「穏やかではありませんね。トラブルの内容を教えて頂いてもいいですか?」
佐「当時息子がお付き合いしていた男性は、4歳年上の大学生だったのですが、その方のゲームソフトやゲーム機を借りていて、それを無断で売って換金していたんです。それで、相手の方が怒って、怒鳴りこんで来たと…」
中「それはちょっといけませんね。息子さん、どうしてそんなことを?」
佐「相手の男性の浮気が発覚して、それで慰謝料代わりに売り払ったそうなんです。」
中「・・・。高校生だった息子さん、なかなかやりますね(焦)」
佐「息子は、恋人に裏切られて自暴自棄になっていたのでしょうね。それで、ゲームを売り払ったり、相手が押し掛けてきた時に、私や家族に全てを吐き捨てるように話してしまい・・・」
中「カミングアウトのやり方としては、最悪だったわけですねぇ。」
佐「そうですね。私は、息子がゲイだというショックと、実際に男性とお付き合いしているという現実に対するショックと、勝手にゲームを売り払って換金したというショックが同時に来て、もう頭が変になりそうでした」
中「それでどうなったのですか?」
佐「私がお金を相手の男性に払おうとしていると、息子の姉(私の娘で当時大学生ですが)が、相手の男子大学生を一喝して、そうしたら、相手が退散していきました。それっきりです。」
中「息子さんにはお姉さんがいらっしゃるのですね。」
佐「はい。一男一女です。」
中「お姉さんは、弟さんがゲイであるということは知っていたのですか?」
佐「はい。息子が中学生の時に、姉に相談して発覚したそうです。」
中「お母さんだけが知らなかったわけですね。」
佐「はい。うちは母子家庭ですから、私は外に働きに行っていて、帰りが遅いことも多く、今思えば会話不足だったのかなとも。姉が母親代わりの側面が大きかったのかなとも思います。」
中「息子さんがゲイだと知ってしまった後は、どのように息子さんに接しておられるのですか?」
佐「最初は、母子家庭であることや私が家を空けがちなので、そのことが理由で息子がゲイになったのではないかと思い、息子をゲイにしたことを本人に謝っていました。でも、息子や娘から、お母さんのせいではないと言われ、特に娘からは、ゲイに関する様々な事柄を教えてもらい、私のゲイに対する偏見を正してもらいました。」
中「よくできた娘さんですね。」
佐「息子の一番の理解者は、姉である娘なんだと思います。」
中「娘さんのレクチャーで、息子さんのセクシャリティを受け入れられるようになったわけですね。」
佐「はい。でも、実際に受け入れるには時間がかかりました。理屈ではわかっていても、気持ちで受け入れるには葛藤がありました。ゲイが嫌いというわけではありませんが、息子の将来を考えると、険しい人生になるんじゃないかと思い、心配のあまりに、この現実を何とか変えることができないかとしきりに考えていました。ゲイは病気じゃないということを聞かされても、何か方法があるのではないかと思案したり、そもそもなぜうちの息子がゲイになったのかということを考えるうちに、母親である自分自身を責めたり、育て方や現在の家庭環境のことなど、色々なことをグルグルと考えてしまって鬱っぽくなったりもしました。でも、息子と娘が私を支えようと努力をしてくれて、私は『ゲイ』ということへの理解はまだまだ乏しいかもしれませんが、自分の子供への愛情は変わらないので、子供の個性の一つのように理解して今日に至っています。」
中「息子さんを拒絶することはなかったわけですね?」
佐「はい。それは一度もありません。とにかく母親として失格なのではないかと、自分自身を責めていましたから。同じような話を他のお母さんたちからもよく聞きます。」
中「他のお母さんたちというのは、ゲイの子供を持つ母親たちということですか?」
佐「はい。ゲイやレズビアンの子供を持つ母親で、コミュニティーサイトを通じて知り合い、時々オフ会をしています(笑) 同じ境遇の方々に知り合えたのは幸運でした。」
中「当事者でしかわからない悩みがあるでしょうし、そうしたコミュニティと関わりを持てたことは良かったですね。」
佐「息子がゲイであるということを前向きにとらえることまでは出来ませんが、息子のセクシャリティが自然の摂理に反したものであるという現実を踏まえて、そのことのために起きる様々な社会的障害を息子と一緒に乗り越えて行こうと思います。」
中「頼もしいお母さんですね。今後、何か抱負はありますか?」
佐「息子や息子と同じようにセクシャリティの問題で悩んでいる方々のために少しでもお役に立ちたいと、LGBTを支援するビジネスを展開する会社を設立したいと考えています。」
中「具体的にはどういうビジネスなんですか?」
佐「いろいろ考えていますが、まずは、LGBTの方々用に不動産の賃貸について仲介するビジネスを行いたいと思っています。」
中「不動産賃貸の仲介業ですか。なぜ、LGBTの方々向けに?」
佐「例えばゲイやレズビアンのカップルは同性同士で暮らそうとすると、なかなか契約が進まないことも多いのです。そこで、会社として、理解のある大家さんから、同性同士の入居OKな物件を提供してもらい、安心して入居してもらうというビジネスモデルを考えています。」
中「なるほど。LGBTの住居問題はよく耳にします。もし、LGBTの方々が、自分のセクシャリティを気にせずに家を借りられたら便利でしょうね。需要は少なからずあるでしょう。でも、不動産ビジネスは難易度が高いのでは?」
佐「実は私は長年、不動産業界で働いてきました。もちろん、雇われの身ですが、何度か独立して不動産業を営んでみたいと思ったことがあります。そして今が、その時かなと。もう歳ですが、小規模でも人に喜んで頂けるようなビジネスができればいいなと思うんです。」
中「素晴らしいですね。成功されることを心から祈念しております。」
佐「ありがとうございます。頑張ります!!」