アシカの仲間の「オタリア」というのが南米のチリからやってきて、結構な月日がたった。公募で「ラブ」という名前も付いた。
今ではそんなことはないが水族館では「オタリアは獰猛」というのが昔からのウワサで、最初は、やっぱり獰猛でスラム街の不良のような悪そうな顔をしていたが、今はすっかり落ち着いて、性格にトゲがなくなり、目玉はクリクリでかわいらしくなった。育て方で性格はある程度変わるようだ。
誰でも顔で判断してはいけない、性格が一番大切だ、というが、性格は顔に出るので、やはり最終的には顔で判断したほうがいいんじゃないか。
導入当初は「いつだって噛んでやる!噛み付いてやる!噛み散らかしてやる!!」という好戦的態度でしたが、今は噛み付くことはほぼない。まぁコッチ側も噛みつかれないように注意できるようになったのもある。
噛み付いてはいけないっていうのを覚えたみたい。頭がいい。ボクがアシカだったらいつも噛み付くだろうなぁ。
噛み付く心配がなくなってきたので、ブハハハハ、オノレ思い知ったか!という悪代官風態度になり、ついにオレも本格的にアシカのお兄さんだ!ひゃっひゃっひゃっ♪ と、上からコバヤシなって油断していたら、すんなり余裕で噛み付かれそうになった。いかん、猛獣だ。油断できん。
それでも、エサを唯一の相手と関わる共有できる通行手形としてうまくつかい、拍手や伏せ、飛び込み、ジャンプ、握手、その他いろいろ覚えて、サインを出すとやるようになった。
うまくできるとご褒美にご飯を上げる。ご飯欲しいからやる。やったらご飯あげる。やるからメシくれ。やったらメシやる。やらないけどメシ欲しい。それはダメだ。じゃぁやる。じゃぁメシやる。がんばる。がんばれ。おまえもがんばれ。
これが彼らとの会話であり、わかりあう手段です。
オタリアという動物は、アシカに似ているけど、なんだか仕草や考え方が、今まで関わってきたアシカたちに比べて人間味がある。様子を見に行って扉をあけると、ゴロンとお腹を見せてリラックス状態で横になって、ひっくり返っていることもあり、目が合うと、ヤベッ!って顔をして起き上がりテレ笑いしている、とかいうこともよくあり、オマエはオヤジか!と突っ込んでしまう。背中にファスナーが付いていて中になにか別の未知生物、もしくは小さいオッサンが入っているのかもしれない。
動物としてみるとこれはいいことではないかもしれないけど、これから一緒にショーをやっていくパートナーとして見ると、おりこうさんで、かわいい。
一生懸命、サインを覚えて、かわいい顔で小さいながらも必死でやるので、萌える。
少しくらい出来が悪い時でも、言うことを聞かない時でも、顔や仕草をみると 「んもぉ!こいつぅ!愛くるしいヤツぅ~!!」と、笑顔になり、かわいさで体がよじれてしまい、ついつい、いっぱいエサをあげてしまう。トレーナーとしては失格だ。でもいいのだ。まだ小さいし、トレーニングはゆっくりでいい。今はただただ抱きしめたくなる。カワイイ。とにかくカワイイ。愛くるしい。
そんなオタリアに、朝一番、足にベッタリと大量のウンコをつけられた。
殺そうかと思った。