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2012/01/13

或る日の電車のなか。
「わたしね、自分の身の回りから聞えてくる音を音楽にしたいって思ったの。」
「自分の周りの音??それってどういうこと?」
「うん。この前のコンピュータの授業のとき、先生が音の話をしてくれたの。」
「・・・?」
「ん~、例えば、ほら、今、私たちが電車に乗ってるでしょ?このガタンゴトンっていう音も、夏の暑い日、ジジジジ・・と鳴く蝉の声も、そして、あなたの声も私の声も、ぜーんぶ、音として捉えるの。その話を聴いてすごく感銘を受けたのね。」
「音として聞こえてはくるけど、それを君が言う音?として改めて感じたことがなかったなぁ。」
「今までピアノしかやってこなかった私にとってコレは天地がひっくり返るぐらいの衝撃だったわ。」
「ソレ、大げさすぎない?」
「うん。大げさすぎる。(笑)」
「でもそれぐらいの衝撃があったのは事実。」
「例えば美術に写真などをひとつひとつ切り貼りして糊づけしていくっていう絵画技法があるじゃない・・なんていうのだっけ?」
「コラージュだろ。」
「そうそう!コラージュ!」
「写真、印刷物、映像などを「切り貼り」することによって作られる近代的アートの一種よね。音もそうやってコラージュするの。」
「音そのものもアートよ。音の芸術を作るんだ。」
「音の芸術?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なつかしいなァ。
大学へ向かう電車のなかでの一場面だ。電子音楽に目覚めた頃である。
私はエンジニアではないので技術的な詳しいことは書けないのでそこのところは許してほしい。だが、電子音楽が好きで自分なりの表現で語るのは出来るかもしれないとおもい、ここでコラムを書かせて頂けることになった。また、作曲するうえで自らの物語や詩を音楽として表現することにこうやって書いている途中でも曲のモチーフが浮かび電子音楽がますます好きになることは確かだ。自分のなかでは言葉が音楽に繋がっている。私には言葉と音楽、そして音と言葉は切っても切り離せない大事な要素になっている。
先に自分のことばかり述べてしまったのでここで、このコラムの一番大事なところ、電子音楽とは一体どんなものなのか、を話したいと思う。
電子音楽とは、現代音楽の一種である。一般には、電子楽器や、録音テープを用い、それらなくしては演奏し得ないような技法によって作り出された、前衛的な現代音楽を、録音したテープを切ってつなげたり、走行速度を変えたり、逆方向に走行させたり音素材を自由に組み合わせる。それらをコンピュータによって制御する。   
アクースマティックアートという言葉があるのだがこれは演奏を前提とした狭義の音楽に対し録音による芸術的な制作物のことをいう。このように美学や技法、アーティストが強調したい芸術的姿勢などの理由によって世界中で様々な呼称で存在し芸術音楽以外にも様々なジャンルとスタイルに広がっている。

先日「ミッション・インポッシブル」を観に行った。普段は映画館の中央に座るのだが、混んでいたため右端に座ることになった。

「聴こえてくる音が違う。」

そうか、何台ものスピーカーに囲まれたサラウンドシステムの映画館のなかでは座る場所によって聴こえ方が違うことに気付いた。何か、いつもと違う映画館にいるようだった。
家庭でもサラウンドで音楽が楽しめるようになった。
このようにたくさんのスピーカーを使い音と音楽を楽しめる音響空間を作ると断然、楽しくなる。 そして座る位置を変えただけで違うように聴こえてくるのも不思議だ。そう考えると、主役の音だと思っていたメロディやモチーフがあるけれどスピーカーがたくさんあり、角度を変えたり音量を変えたりするだけで聴こえてくる音、全てが重要な音となりうる。その日、映画館で聴いた音楽はあの有名なサビ部分がモチーフだが、観賞する位置によって印象深い音が変化する。
次回映画を観るときはどこに座ろうか。今から楽しみである。

2012/01/13 10:39 | shiho | No Comments