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赤いリボンが
メインセールに重り風に流れる
身動きもせずに重り風に流れる
風上いっぱいスタボータックでヨットは風を切り上がる
冬の海風は重く強く私を心地良い世界に誘ってくれる
日に照らされた海面の下では
ヨットのキールが
海の果てしない強さに耐えて
ヨットを僕の進む方向に導こうと
必死になって海水を切って
僕は風上いっぱいに切り上がっていく
もうここまで来ると懐かしい陸地も見えない
僕は完全に一人の中の自由
目に映る総てのものは
海と空
僕をここまで誘ってくれた風さえ見ることが出来ない
ただ海面を
風が優しい指でなぞり
その優しさに感じるように
まるで君の肌のように何かを感じ
身震いしているのが見える
君の膝で寝ているような穏やかな時間
子供の頃のような心地良さ
僕が風の声を感じるには
もっと長い時間が必要なのかも知れない
僕は海の真中でただ風を感じているだけ
君は澄んだ風を感じている
大きな翼にぶら下がり
風を受け流れて行く君が見える
鳥たちの飛ぶ姿を君は探して
聞こえるのは
風の流れる囁き声と
自分の心臓が自分を生かす音だけ
それだけしか感じない時が
一番好きなの
そんな事をいつも君が言っていた
それが2人にとって一番大事な事
今、君は上昇気流を見つけているのを感じる
大きな翼に重く力強い風を受けて
君は翼を旋回させながら上え上え
僕の一番好きな君の笑顔
僕がいつも聞いていたい君の笑い声
僕はもう君の側を
離れる事なんか出来ない
君と始めて会った時も風の中だった
なんだか変な奴だと思ったんだ
その時僕の中にアイディアが
君と別れてはいけない
そんなアイディアが浮かんだ
変だろ
君に恋したとか
君が好きなんだとか
そんなんじゃなくて
君とは別れてはいけない
そんな事を感じるなんて
変だろ
だけど君と目が合った時に
僕の中に最初に浮かんだアイディア
変だろ
今、一匹のカモメが
僕のヨットの進む方向と同じ方向に進んでる
彼は疲れたのか海面の流木に留まったかと思うと
僕に向かってウインクしたんだ
嘘のような話しだと思わないか
カモメが僕にウインクするなんて
変だろ
それでも僕には
カモメがウインクしたように見えたんだ
変だろ
でも時々僕はむしょうに一人になりたくなるんだ
自分ではどうする事もできずに
そんな自分が僕の中に現れるんだ
君の事が嫌いになったとか
総ての事が嫌になった訳でもないのに
君には理解できないかも知れないけど
そんな時
僕は孤独の中で君の事を考えるんだ
変だろ
今、森の中の小さな山小屋で
僕の顔に朝日が当たり
気持ちよい暖かさの中で目覚めたら
どうも僕と君が風の中で
遊んでいた夢を見ていたようなんだ
変だろ
僕はこの森の中にいると
自分が変わっていくんだ
そんな自分と会えるのが楽しいんだ
こんな僕の気持ち
君には分からないのは当然だけど
僕はこの森の中にいると
自分が変わっていくんだ
変だろ
明日僕は君のところに帰る
今、森の中で感じたんだ
約束するよ
君の笑顔が見たくて
君の笑い声が聞きたくて
風の中で遊んでいる時が一番好きと
いつも言っていた君のところに
この森は
僕を変えてくれるんだ