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2011/02/08

皆さん、おはようございます。

では今回は源信の「往生要集」を基に、
「十王経」なども援用しつつ、
日本の仏教で説かれていたあの世を描いてみましょう。

人は死ぬと、死出の山をとぼとぼと歩くことになります。
整備され、迷わないようにはなっているようですが、
山道を延々、7日間歩かされるのです。
7日目に秦広王という裁判官に裁かれることになります。
この裁判官の正体は不動明王で、
主に殺生の罪を裁かれるといいます。
次の裁判は14日目にあるのですが、
その前に三途の川を渡らせられ、
その川岸で着物をはぎ取られ、
衣領樹という木の枝にかけられて罪の重さを量られます。

やってきた法廷の裁判官は初江王、
正体は釈迦如来で、盗みの罪を裁かれます。
以後、7日ごとに裁かれていくのです。
21日目に文殊菩薩が正体の宋帝王に邪淫の罪を、
28日目に普賢菩薩が正体の五官王に妄語(嘘)の罪を、
35日目に地蔵菩薩が正体の閻魔王に映像で罪を見せられ、
42日目に弥勒菩薩が正体の変成王に罪状を決定され、
49日目に薬師如来が正体の泰山王に判決を下されて生まれ変わります。

十王という割に、7人しか登場しませんが、
後の3人は転生後の再審判事です。

生まれ変わる先が大きく6つの世界に分かれることから、
輪廻転生が俗に、六道輪廻と言われています。
下から地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人間、天界の6つです。

ちなみに、仏教の北伝、南伝など、
派によって、餓鬼と畜生、人間と阿修羅の上下が入れ替わります。

まず、地獄を概観してみましょう。
軽い順、つまり物理的に上位であり、
罪の程度も軽く、それに従って苦しみも少なく、
刑期も短い順に説明していきます。
これは、熱地獄(熱と痛みの地獄)です。

1:等活地獄
 主に殺生の罪です。
 殴り殺されたり、切られたりして死んでいきますが、
 サッと風が吹いてくると、死ぬ前と「等しく活き返る」ことから、
 その名前がついています。

2:黒縄地獄
 主に盗みの罪です。
 墨をつけた糸で体に縦横の線をつけられ、
 線にそって鋸で挽き殺されることからその名前がついています。

3:衆合地獄
 主に邪淫の罪です。
 亡者がまとめて、迫りくる山などに圧殺されることから
 その名前がついています。

4:叫喚地獄
 主に飲酒の罪です。
 この世で飲んだ酒が、そのまま溶けた銅の汁に変化し、
 無理やり飲まされることになります。

5:大叫喚地獄
 主に嘘の罪です。
 そう、幼少の頃から教えられたように、
 舌を抜かれるのです。

6:焦熱地獄
 主に仏教に反した教えを実行する罪です。
 文字通り、想像を絶する火力で焼かれる地獄です。

7:大焦熱地獄
 主に戒律を守る僧侶や尼僧に乱暴したり誘惑したりする罪です。
 焦熱地獄よりさらに恐ろしい熱による責め苦が加えられます。

8:阿鼻地獄
 主に五逆(父母殺害、阿羅漢殺害、仏陀傷害)の罪です。
 これまでの地獄は死ぬことで一息つけましたが、
 この地獄だけは死ぬことが出来ず、
 間断なく(アヴィーチ)責め苦を受け続けます。
 アヴィーチの音写が阿鼻で、意味は「無間地獄」です。

これら8つの地獄の外に、それぞれ16の別地獄があります。
いわば付属の地獄ですね。
また、熱地獄とは反対に、寒冷の地獄もあります。
北極、あるいはそれよりも寒い空間に、
裸で放り出されたらどうなるか、考えてみて下さい。
凍傷の極度にひどい状態で苦しむ地獄です。

さて、地獄の次が餓鬼の世界です。
これはサンスクリット語でプレータといい、
低位の霊という意味です。
念で成り立っている世界で、
だいたい幽霊とか怨霊とか言われている存在は、
この世界に生まれ変わったということです。
恨んでも恨み足りず、欲しても欲し足りず、
決して満足することができない世界なのです。

次は畜生、つまり動物の世界です。
極めてシビアな弱肉強食で成り立っています。
その苦しみと恐怖は、皆さんもアフリカのサバンナなど考えれば、
よく理解できると思います。

次は阿修羅。
阿修羅王の配下として生まれ、
常に武術の訓練をし、闘争し続ける存在です。
嫉妬心が背景となっています。
努力して相手を超えるのではなく、
相手を蹴落とす方を選ぶタイプですね。

次は人間。
これは一番ご存知の世界。
説明の必要はありませんね。

そして天界。
この世界もいくつもの段階に分かれていて、
形状、能力、志向性などに違いがあります。
物理的な天界から、イメージだけの天界、
それすらもない心だけの天界、多種多様です。
さて、長々と説明してきましたが、
これが日本の仏教で説かれてきた死後の世界の概略です。
何かお感じになりませんでしたか?

まず、徹底した因果応報の世界なんですが、
それが、ある権力者による判決、
つまり、褒美だったり罰だったりする世界観なのです。
しかも、その罪状が、人間世界の価値観の中では、
ごく些細な、罪とも思えないようなことがあの世では罪として扱われ、
思いのほか思い罰を食らってしまう、ということなのです。

特徴として、「これをやったらこういう報いを受ける」
という、ある意味法治主義的な世界です。
非常に支配的であり、脅迫的です。
お上が下々を支配する姿そのものといえるでしょう。

では、次回はチベット死者の書を取り上げてみましょう。
基本的な世界観は変わらないんですが、
少し転生のシステムが違います。

2011/02/08 03:24 | bonchi | No Comments