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2012/01/09

番組全体の感想を書く前に、一つだけ。

お客様を満足させるために必要なパフォーマンスの要素は、僕は大きく分けて3つあると思っています。
・驚き ……見ている側の想像を超えた出来事。
・笑い ……「いやいやいやいや!!」と思わずつっこみたくなるような出来事。
・共感 ……行われているパフォーマンスの世界観に取り込まれて、心を動かされる出来事。

パフォーマーによって、「どれが得意」というのはあると思います。
今回の出場者を、僕が勝手に分類をしてしまうとしたら、

・驚き……アラン、ウィリアム、ハンソルヒ、マスターワイ、リカルド
・笑い……レ・フィリップス、ロッド・レイバー
・共感……シー&ジャオ

といったところ。
ゴールデンパワーと蛯名健一の2組については、「驚き」と「共感」の中間かなと思います。
(しかし、僕みたいなぺーぺーがこんな分類をするのは凄く厚かましいと思います……)

つまり、この番組自体、「驚き」押しであり、見ている観客をガンガンに驚かせるようなパフォーマンスが歓迎されていたのではないのかなと思います。
少なくとも、僕はそういう空気を感じました。

このKAMIWAZAは、第一回目の放送ですし、凄く手探り状態ではじまった番組なのではないかと思います。
番組が始まってすぐに感じたのは、会場の異様なまでの緊張感。
司会のお姉さんはむちゃくちゃ噛み倒していましたし、今田耕司氏もM-1グランプリの時とはまた違う感じの緊張をしていたのではないかと思います。

それでは、番組全体を振り返ってみて疑問に思ったことを徒然と書いていきたいと思います。

■実況は必要だったのか?
1番手のアラン・シュルツがパフォーマンスを始めた時、
「さあ、3つのボールを投げ始めました!」という実況が突如入り、
僕のtwitterのタイムラインには「実況いらない」という異口同音。
ただパフォーマンスをやるだけでは画面映えしないから、という措置だったと思いますが、
出場しているパフォーマーは世界を股にかけている人たちばかりですから。
正直実況は余計だったと思います。
特に、ゴールデンパワーやシー&ジャオなどの、雰囲気を大切にするパフォーマンスは、静かに見たいものです。

むしろ、必要とされているのはパフォーマンス後の解説です。
「アラン・シュルツのバウンスボールは●●で××だから凄い」
「ウィリアムのディアボロは●●で、世界的に見ても珍しい」
という、パフォーマンスが終わった後、コメントできる人が誰かいればまた雰囲気も違ったのではないかと思います。

ただ、後半になるにしたがい、耳ざわりだった実況があまり気にならなくなってきました。
これは、我々が慣れてしまったのか、それとも、実況が空気を掴んできたのか、あるいはその両方なのか。

■パフォーマーの人選は良かったのか?
まず、今回出場したパフォーマーは、誰もが例にもれず、世界の第一線で活躍しているパフォーマーであることは間違いありません。
人選としては最高のメンバーだったと思います……が。
「そういう雰囲気」が作れていなかったような気がします。
特にそれを感じたのは、1番手アラン、2番手ゴールデンパワーと出てきた後、ロッド・レイバーがパフォーマンスをした時でした。
観客は「驚き」を求める姿勢が出来上がっていたのに対し、ロッド・レイバーは面白い顔で「笑い」を取りに来ていた筈です。ところが、観客は笑うどころか、手拍子を返していました。
その辺りで、少しパフォーマーと観客席との間にちぐはぐさを感じてしまったかなぁと思います。
ロッドレイバーの直前にバッファロー吾朗が出てきて、会場を和ませたのもその目的だったのかなぁとも思わなくはないですが。

■審査員は適切な人が勤めていたのか?
これについては「うーん」です。
番組の途中、シルク・ド・ソレイユのディレクターが観客席にいることが紹介されていましたが、
その時のtwitterのタイムライン、「この人に審査員をやってもらいなよ!」の異口同音。
2番目のパフォーマーに早くも満点がついてしまって、
「この後もっと凄い人が出たらどうするの」的な雰囲気もありました。
ただ、テレビ的なコメントっていうのもあるだろうし……うーん。

■審査は演技後即発表でよかったのか?
これは個人的には、全パフォーマンスを見た後に審査結果発表、という方式の方が良かったと思います。
1番手に出てきたアランシュルツ。あれだけ高度なジャグリングをしながら、得点だけで見ると最下位になってしまっています。最初の方に出場しているパフォーマーと言うのはただでさえ忘れられがちなのに、不公平のような気もします。
気持ち良く演技を終えてさあ得点が出るぞ、と言う時に「残念、リカルドさんの勝ちです」とか言われてもなぁ……とか思いますし。 まあ、ここら辺はパフォーマーの中で気にしている人はいないかなぁ……とも思います。

■途中のバッファロー吾朗とFUJIWARAの原西の出番は必要だったのか?
どうなんでしょう。
個人的にはFUJIWARAの原西は大好きなのですが、流石に世界一流のパフォーマーの幕間にネタをやるのはきついような……

■最終的に日本人が優勝したことについて
第一回KAMIWAZAは、日本人の蛯名さんの優勝で幕を閉じました。
正直に言いますと、蛯名さんのパフォーマンスが終わった後、司会者の3人が「いやー、これはリカルド(最終パフォーマーがやるまで暫定一位だった)あぶないかもわからんね」と言い始めたところあたりから、うっすらそうなるのではないか、いや、そう決まっていたのではないかと感じ始めていました。

このことを、好意的に捕えてみるとするならば、日本人のパフォーマンスというものが面白いぞということを、テレビと言うメディアを通して、世間一般に知らせてくれたのかなぁと。

途中途中、ビート武氏が、
「いやー、もうこれ、優勝とか決めるのやめねぇか?」
「かわいそうだろ(順位をつけるの)」と、しきりに言い始めたのも記憶に残っています。

僕のtwitterのタイムラインにも、
「パフォーマンスに順位付けすること自体がおかしいのでは」という意見も出ていました。
しかし、それは僕は意見が違います。

皆さんは、普段パフォーマンスを見る時、どういう気持ちで見ているでしょうか。
皆さんにとって、目の前に起こっている物が面白いか、面白くないかということのみ感じているのではないでしょうか。
「他のパフォーマンスと比較する」ということはあまりしないのではないかと思います。
目の前のショーを純粋に楽しんでいるのではないかと。
しかし、「順位が決まる」となると、出場したパフォーマーに甲乙をつける必要が生じ、見ている側も「誰が優勝するのか」ということを予想しながらテレビを見ることになるでしょう。
すると、「この人はここが良かった」「この人のここは駄目だった」という踏み込んだ見方ができるようになってきます。

つまり、よりパフォーマンスというものに興味を持ってもらうのであれば、ただ単純にショーを見せるだけのものよりは、順位の決まるこういった賞レース的な物の方が有効だと考えるわけです。
そういう意味で、「順位をつけること」というのは僕は良いと考えています。

とはいえ、今回出場したパフォーマーは誰もが超一流のパフォーマーであり、そんな方々を相手にやれお前のパフォーマンスは雰囲気に入り込めないだの、CDが散らばったのが気になっただの言っている僕は本当に無礼千万だと思っているわけですが。

あまり考えがまとまらないうちに文字を打ち始めたので、すごくとりとめのない話になっているような気もしますが、、
逆に、この番組の、この結果を受けて、逆にこれを利用して日本のパフォーマンスシーンを盛り上げ行くぞくらいの気持ちでパフォーマンスを行うこと、
それが日本のパフォーマーたちに託された使命ではないかと。

最後に、今回のKAMIWAZAではないですが、
海外のショー番組がどのように行われているかの雰囲気を見せるために
一つ動画を紹介しておきます。

今回のリカルドに負けずとも劣らない超絶バランスのパフォーマンス。(これをジャグリングと言うかというと多分違いますが:笑)
観客席も静まり返り、パフォーマーの息遣いまで聞こえてきそうです。

そうそう、あと、もう一つ言いたいのは、(動画を紹介しておいてなんですが)
パフォーマンスはモニタを通して見るよりも、生で見た方が面白いですよ、という話。
もし、KAMIWAZAを見て、パフォーマンスに興味が出てきた人がいるとするならば、
是非とも町やイベントに出掛け、様々なパフォーマンスを見てもらいたいと思います。

2012/01/09 03:20 | ryuhan | No Comments