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2012/01/09

M-1グランプリという若手漫才師の頂点を決める番組がありまして、それが昨年惜しまれつつ終了しました。
その後継番組として、昨年の11月末か12月の頭くらいに告知されたのが、
この「KAMIWAZA」という番組。
漫才では無く、パフォーマンスで競い合うというコンセプトの番組となりました。
当然、パフォーマンスと言うと「ジャグリング」もパフォーマンスのワンジャンルですから、僕の周りでもビデオ審査にビデオを提出した人が多かったようですね。
僕も応募してみようと思っていましたが、忘れてしまっていました(笑)

12月の中旬くらいに出場者が発表されてびっくり。
もっと知らないような凄いパフォーマーが出るのかと思いきや、
ほとんど知ってる人!! しかも見たことがある人!!
(主に「大道芸ワールドカップin静岡」で。)
そう考えると、「大道芸ワールドカップin静岡」がいかに凄いイベントなのかを感じてしまうわけですが、ともかく、
「パフォーマンス」に焦点が当たった番組、しかも、
「ワールドクラス」でパフォーマーを集められる番組と言うのはなかなかありません。
特に、台湾代表のウィリアム・リンとチェコ代表のアラン・シュルツは、日本人ジャグラーの間でも人気のジャグラー。
これを見過ごすわけにはいきません。
実はこの日、会社の後輩に誘われて「お見合いパーティー」なるものに出掛けてみようと思っていたところだったのですが、
「ごめん、俺テレビ見るから行けないわ」「ちょwwww」という普通では考えられない理由で断り、さらに僕の家にはテレビが無いので、ネットカフェまで出向いて観賞をしてきました。

前半は出場者一人一人のパフォーマンスを見ての感想、
後半は番組全体の感想です。

■1.アラン・シュルツ(チェコ、バウンスボールジャグリング)
長身で超イケメンの彼ですが、
「大道芸ワールドカップin静岡」に来るような皆様はおなじみのジャグラーの筈ですね。
3→5→7→8とボールを増やしたバウンスボールを使ったジャグリングでした。
バウンスボールのテクニックには、「リフトバウンス」と呼ばれるものと、「フォースバウンス」と呼ばれるものがあります。
「リフトバウンス」というのは、手に持ったボールを、手のひらを上にして「こぼす」ように投げるやり方で、「フォースバウンス」というのは、逆に手のひらを下にして床に「投げつける」やり方です。
そもそも、上に向かって投げるジャグリングと比べると、「ボールが手元でスピードが落ちる」「視界の中に手と全てのボールが入る」という点において、バウンスボールのジャグリングの方が簡単だと言われていますが、それは「リフトバウンス」でやった場合の話です。
「フォースバウンス」は、「リフトバウンス」に比べて球のスピードが速くなり、当然その分難しくなります。
アランの凄いところは、全ての技を「フォースバウンス」と呼ばれる難しい投げ方でこなしていること。特に、7以上の「フォースバウンス」をこれほどまで安定して投げることができるジャグラーは他にはいないのではないかと思います。
そして、尺は5~6分くらいだったと思いますが、その間ノードロップで演技を終えたこと。世間的に言わせると「当然!」と言う風に思うかもしれませんが、ここまで高度なジャグリングをドロップ無しで終わらせることができること自体が「神芸」です。
惜しむらくは、最後が8ボールだったことでしょうか。
静岡では普段、9ボールまでやっています。僕は、運よく11ボールを見たことがあります。まあ、ここはテレビ的に「絶対に成功させられる」レベルの技を選んだのでしょう。
彼が初めて来日したのは2004年。なんと、探してみたら当時僕が撮影した写真がありました(※本人(というかパパ)に写真掲載OKを貰っているものです)

当時は別の凄いジャグラーが日本に来ていて、まったくのノーマークだったのですが、「すげぇのがいる!」と言われて来てみてびっくりしたものです。

因みに、気づいていた人がいたかどうかわかりませんが、画面右の方でノリノリだったのはアランシュルツのお父さんです。(通称パパン・シュルツ)

■2 ゴールデンパワー(ハンガリー・アクロバット)
確か大道芸ワールドカップin静岡でも見たことがあった筈。もしかしたら別のパフォーマーだったかもしれませんが……。
いわゆる「手と手(ハンド・トゥ・ハンド)」と呼ばれるタイプのアクロバットであり、強靭な肉体とバランス感覚、そして体の柔軟性が必要となるもの。
ただ、特別に個性的な「これは」というものがあったというわけではなく、とてもオーソドックスなハンド・トゥ・ハンドだったと思います。
(まあ、じゃあお前できるんかいと言われたらできないのですが……)
あの格好についてですが、やはり筋肉を強調して、男性らしい姿を誇示するためのものであると思いますよ。
バラエティ色の強い番組だったため、ネタ的に扱われてしまったのが残念。

■3 ロッド・レイバー(イギリス・ピンポン玉ジャグリング)
この人はIJA(ジャグリング国際大会)のビデオで見たことがありますね。
口から噴きだすピンポン玉のパフォーマンスができる人と言うのは世界的に見てもそう多くは無い筈。
勿論技術的な面でも素晴らしかったのですが、
どちらかと言うと、小道具を多く使った、アイディアで感動させていく要素の多いパフォーマンスでしたね。
会場の雰囲気が「凄い技を見たい!!」と言う空気が出来上がってしまっていた中なので、本来ならば顔芸などで笑いをとりたいところで拍手が起こってしまったりと、かなりやりにくかったのではないかと思います。

■4 マスター・ワイ(中国・変面)
「変面」自体は知っていたのですが、この方は多分初見だったと思います。
ジャンル的にはマジックの位置づけだと思いますが、顔につけている面が次々と変わって行く、という内容のパフォーマンス。
本当なら、マントや扇、あるいは後ろに振り返った時などに変えたりするのをメインに繰り広げ、「何かで隠さずに面が変わる」というのは「奥義」としてステージ中1~2回程度しか披露しないものかと思っていたのですが、この人はサービス精神旺盛で、観客席に降り立ち、お客様の目の前で面が変わるということをバンバン行っていましたね。目の前で見ていた人たちは本当にトリックに気づけなかったでしょうか。

■5 ウィリアム・リン(台湾・ディアボロ)
まず台湾という国は本当にディアボロ大国であり、昨年のJJF(日本のジャグリング大会)でもチーム部門と女性部門で優勝をかっさらっていった国です。
そのディアボロ大国である台湾の中でも間違いなく5本の指の中に入るディアボロ使いである彼。日本にも、JJF2008のゲストパフォーマーとして来日したことがありますし、去年の大道芸ワールドカップin静岡に出演しています。
序盤にディアボロが体に当たってしまったところがあり、「もしかしたら緊張しているのか?」と思いましたが、その後ミスらしいミスは最後まで無かったと思います。4ディアボロが最後回収しきれずにバラバラに飛び散ってしまいましたが、それも笑顔で許されていたような気がします。ま、あそこまで凄い技をバンバン見せたら最後がちゃんと終われなかった、程度では気にする人はいないのかもしれません。そもそもジャグリングのコンテストではありませんしね。

ちなみに、3ディアボロをやった時、「3つのディアボロは世界でも数人しかいない…」と、実況の人が言っていて、「いやいやいや」とつっこんでしまったのですが、3つのディアボロを回せる人は日本にもけっこういます。
「4つのディアボロは彼しかできない……」と言っていましたが、うーん……これは微妙なところ。少なくとも「彼しかできない」というのは嘘ですが、あそこまで安定した状態の4ディアボロウィンドミル(という技の名前)をステージ上で出来る人はそうはいない筈。それこそ、「世界に数人」しかいないかと。
どちらにせよ、そう形容されても仕方ないくらい難しい技であるということは間違いありません。

■6 リカルド(スウェーデン・バランス)
一度大道芸ワールドカップin静岡で見たことがあります。
その時も、風船を割ってワイングラスを咥えバチで受け止めるという技からのスタートで、あまりの出来事に、「はぁっ!?」と声をあげてしまいました。
スタートしてから「ああ、この人か!」と思いだしたのですが、
その瞬間に「ああ、この人が優勝するだろうな」と思ってしまったくらい僕の中では衝撃的なパフォーマンスでした。
静岡では今回披露されたこと以外のバランスや、ボールのジャグリングもやっていましたけれどね。
twitterをやりながらの観賞だったのですが、この手のパフォーマンスも見慣れている筈のジャグラーたちからも「やべぇwww」「すげえ!!」「なんだこれwww」という称賛の嵐。
やはり、「ただバランスをするだけ」ではなく、「風船を割る」「バイオリンを演奏する」などの「他とは違うんだぞ」的な演出が感動を起こしていたのではないかと思います。
残っているパフォーマーの名前から見ても、パフォーマンスが終了した瞬間彼の優勝を確信していました。

■7 レイ・フィリップス(フランス・ハットジャグリング、クラブジャグリング)
この二人もどこかで見たことがありました……生では無いにせよ、何かのテレビ番組だったと思います。
素早いハットのチームジャグリングから始まった後の、お客様を舞台にあげて、クラブを使って煙草を飛ばすというパフォーマンス。
ううーん、ただ、この手のパフォーマンスって(起源はどこかは知らないのですが)割と広まっているので見慣れてしまっているんだよなぁ……。
もう少し、このチームにしかできないような、輝くものがあったらもっと素晴らしいと思うのですが。
……やはり、そういう風に思ってしまうのは、僕がジャグラーであり、ジャグリングパフォーマンスを見慣れてしまっている所為なんだろうなと思います。もう少し純粋な目で見ることができていたら面白かったと思いますが。
最初の高速ハットジャグリングは目新しくて面白かったですね。

■8 シー&ジャオ(中国・影絵)
声帯模写&影絵というパフォーマンス。これは初見でした。
影絵自体のパフォーマンスは別のパフォーマンスでも見たことがありますが、彼の場合は、体の部位だけで表現しているのが良かったですね。(過去、ハリボテのようなもので背景を表現したりするチームのものも見たことがあったのですが、「果たしてこれは陰絵である必要があるのか?」と思ってしまったことがあります。)
髪の毛を鳥の巣に見立てたところなどはアイディアが凄いなと思いますし、アヒルが犬に食らいつくところも面白かった。
最後の人の顔も、二人の指だけで本当に多種多様の姿を見せてくれました。
最初の鳥のシーンはものすごくストーリー性があって大好きだったのですが、ちょっとその後の世界観には入り込めなかった感じです。

■9 ハン・ソルヒ(韓国・マジック)
韓流イケメンマジシャン。
初見はyoutubeだったと思いますが、その時はDJのスタイルなど、ストーリー性のあるものでした。
カードならまだわかるんですが、あそこまで次から次へとCDをばらばらと出してくるのは圧巻でしたねぇ。今回は、ストーリー的な演出が無かったのが惜しかった。
モニタを通してみると良さがわからないんだろうな的なパフォーマンスです。凄く動きますし。
やっている最中に、CDが飛び散っていたのが気になりました。

■10 蛯名健一(日本・ダンス)
パントマイムやマジックの要素をふんだんに取り入れた凄くオリジナリティあふれるダンスでしたね。ストーリー性もあり、素敵でしたね。
大技としてやっていた「逆再生」も気持ち悪くて(誉め言葉)よかったですね! あそこまで体を自由に使えたら楽しそうだなぁと思います。
我々ジャグラーと言うのは、モノを使って初めてパフォーマンスが成立するのですが、肉体一つであそこまで表現することができるのは凄いと思います。

やはり、こうやって書きだしてみると、
思い入れの強いジャグリングについて多く語ることになりますね。(笑)
他のパフォーマンスについては、詳しく語れるほど知識が無いためでしょう(^^;

勉強不足ですね……もっと色々なパフォーマンスを勉強しなくては。

そんな勉強不足の僕が、こんな「○○は良かった」「○○は残念だった」だなんて書いていいんだろうか。
ううむ。

しかし、厚かましい話だとは思いながらも、
文字にすることで自分のためにもなるのではないかと思いますので、敢えてちゃんと書いておくことにしましょう。

因みに、僕の中では優勝はリカルド、次点がアラン・シュルツだったのですが、実際の結果とは異なるものになりました。
この結果については、まあ賛否両論あると思いますが、それは後半の「番組について」の中で書こうと思います。

長くなりそうですので一度ここで切りたいと思います。

2012/01/09 01:43 | ryuhan | No Comments