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広告人・加藤雅章氏の場合
広告は、コンテンツ。それを生み出すための、新しい方法論を。
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広告の仕事とは、何なのか――
「広告は、コンテンツ。」
加藤さんはそう言い切る。それは勇気でもある、とわたしは思う。
コンテンツが“大事”あるいは中心であることを否定する人はいまい。
しかし、「いいものを作っても人が来なければ意味が無い」というロジックで広告“枠”を売るのが広告業のビッグビジネスの一翼を担っていることも確かなのだ。
「サイト作ったから広告打って人を集めますなんて、ナンセンス。ほっといても人が集まる、そういうものを作らなきゃ。」と言っていた、とある先人の言葉を思い出す。
それを真っ直ぐ行けるのは、加藤さんがロボットという会社にいるからだろう。
誰かが作る映画に出資するのではない。誰かが作ったキャラクターに版権を払ってビジネスをするのではない。
自社から生み出し、「広告制作会社」から「コンテンツメイカー」の領域にポジションを取った。
それは、周到な計算に基づくものだったのだろうか? いや、きっと「そっちのほうが、おもしろそうじゃん!」という、一抹の向こう見ずを含んだ好奇心が原動力になったのではないだろうか。ロボットという会社には、そう推して測らせるくらいの、“遊び”がある。
指標と数字にがんじがらめになりつつあるデジタル広告の現在を、加藤さんはどう感じているのだろうか。
「KPIみたいなものは、確かに一方で存在するし、ないがしろにするつもりはない。
でも、それは、みんなが共通言語で語れるからラクだという側面もあって、
実際は人間の感情や行動なんて、そんなに簡単じゃない。よくわからないけれども
『なんとなく好き』、『なんとなくまた来ちゃう』っていうのはすごくよくあることでしょう。
それをつくるのが、僕らの仕事だと思っている。
今はさらにソーシャルメディアが発達してきて、“数”のとらえ方も変化しつつあって。
生活者が良い悪いをダイレクトに評価できるようになったことで、コンテンツの評価軸が
単なる『訪問数』から『共感度数』みたいなものに取って代わりつつある。
だからこそ、ソーシャル上でやりとりされるコンテンツをつくる際に経験やアイディアが必要で、
この領域を表現まで落としこめるかどうか、というところが勝負になってくる。」
何らかの“目新しいこと”を求められ、ロボットとしても試行錯誤しながら作り、次につなげること。
そういった、理想とした流れが多くなってきたともいう。
「“クリエイティブジャンプ”って、昔から言うでしょう。
クリエイティブの力という、長年広告の世界で重要視されてきたものが、
一周まわってまたそこに返ってきたな、という気はしている。」
* * *
Web、それもクリエイティブの専門家という見方を当然のようにされる加藤さんだが、
自分はロボット全体のセールスマンでもある、という。
「ロボットは、グラフィックも映像もWebもキャラクターもアニメーションもアプリも作れる。
この会社ひとつで、エンターテイメントコンテンツのあらゆる要望に応えられる、
そういうところであるべき。」
会社全体のリテラシーの底上げをして、ひとつの一枚岩になること。
もちろん、延長線上には、加藤さんなりの“その先”がある。
今まで、会社が会社として手を出そうとしてこなかった領域。
それは、かつて黎明期のロボット映画部が、「プロダクション方式」という新しい方法論をとって若い監督を自社に擁し、お金も人も管理して映画制作の最後の責任までを負うことで新たなモデルを成立させたことをすぐ目の前で見ていたことも、大いに関係している。
「コンテンツを作り出すための方法論を変えたい。
入り口やマーケットを変えると、やり方はもっとがらっと変えられる。
今までと同じ方法論じゃ、ROBOTが、そして自分がやる意味はないから。」
次から次へおもしろいことが出てくる。ミーハーであり続けようと思っている、と加藤さんは言った。
「よく言われることだけれども、コミュニケーションが変わりつつあって、
いや、ある部分はすでに変わりきっていて。
でもそれを、“苦しみたがる”人が多いじゃない?
そのど真ん中にいるのを、楽しんだらいいだろうと思うんだよね。」
煽られず。しなやかに、前を見据えて。
そのためには、自身のなかに1本の芯が通っていることが不可欠なのだ。
了
加藤 雅章(かとう・まさあき)
株式会社 ロボット執行役員コミュニケーション・プロデュース部 部長。
(株)タイトーにて企画開発等を担当後、1992年に(株)ロボット入社。
2003年、映画『KillBill』Webサイト 東京インタラクティブアドアワード銅賞。
2007年、「 ロングヘアーカンフーマン 」Webキャンペーン Gyaoクリエイティブ大賞、東京インタラクティブアドアワード入賞。
2008年「恵比寿映像祭サイト」東京インタラクティブアドアワード銅賞。
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Special Thanks to M.KATO / ROBOT Inc.