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2011/11/08


Prologue

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新卒で入った会社というのは、誰しもに1社しかないという点で、特別な存在であるはずだ。
辞めた会社の敷居を跨ぐ、というのは(いつも不遜なことには変わりないのだが)
同じ光景でも、その用件が取材となると、途端に客観的な目線も入って
それまで目に入っていなかったものが、急に見えたりもするから不思議だ。

カンパニーカラーの焦げ茶とミントグリーンがところどころにさし色で入り
こだわり尽くされたオフィスは変わらずに「クリエイティブ・ブティック」という言葉を連想させる。
オフィスのオシャレ度でいえば、おそらく日本屈指だろう。
哀しいかな新卒でこの会社へ入った頃のわたしには「灰皿と椅子が異様に重い」くらいしか感じられなかったのだから、情けないというかクリエイティビティに欠けるというか。

“ROBOT”
CMをはじめ、グラフィック、Webの広告制作以外にも、「踊る大捜査線」「海猿」「三丁目の夕日」
シリーズなど映画界でもその名を馳せるプロダクション。
自分の経歴を話すとき、この社名を耳にした相手の表情が、最近、とみに違ってくるようになった。それはつまり、単純に会社名として認知度が高まったということである。
先日、とある地方都市の大学で講演をした際に、座っていた大学生がこの社名にふと顔を上げ、キラキラした目でうんうん頷かれたのも、印象的である。

入社式の日に渡されたのは、白い紙に、尋常で無い級数(文字の大きさ)でフルネームが刻印され、会社名といえば隅に見えないくらい小さい文字で会社名が書かれた名刺。
どこへ行っても「人で勝負しろってことだなあ。社長の思いが伝わるなあ」と言われ
新卒つまり電話番のわたしは電話口で「はいロボットです」ということに
どうしても抵抗があって「株式会社ロボットです」とささやかすぎる抵抗をしていた。

*     *     *

地上3階、地下1階建て社屋の、中央を貫くように設置された螺旋階段。
デジタル・グラフィック・CF・映画・キャラクターコンテンツ、それぞれの部署とフロアを途切れることの無い螺旋状の階段と透明のガラスの壁がつないでいる、というオフィスの内装が示すコンセプトを、誰に説明されるでもなく初めて感じたのは、このインタビューの後のことである。

“一軒家”
コミュニケーション・プロデュース部の部長、加藤雅章氏――かつての直属の上司に話を聞いて、わたしはロボットという会社をこう再定義した。
ブティック、というよりは、“クリエイティブ・メゾン”。

今回のシリーズは、ロボットというひとつの“家”を少しずつ組み立ててきたなかの一人の話。
そして、“会社”という“一家”は、真っ白でまっさらな0歳のうちからその家で育つのではなく、
様々なバックグラウンドと希望をしょった上で集まってきた個人と個人の集まりなのだ、という話である。

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次回予告/Scene2;
広告人・加藤雅章氏の場合
ゲームメーカーでの7年、視点は徐々に“Consumer”へ。(11月15日公開)

2011/11/08 08:00 | yuusudo | No Comments