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2011/10/31

この秋、谷間では霜がやや遅れているお蔭で、最後のトマト、茄子、胡瓜、ズッキーニなどの名残の味をまだ愉しませて頂いています。百姓になりたい、川口です。

昨日、谷間は雨の日曜日でした。将に、「霜降」の次候、「霎時施」(小雨時々降る)らしい一日。

田畑山には行けませんので、思い立って久しぶりに石臼を廻してみました。

昨春に収穫して保存してある粒小麦を、石臼の上の穴から少しづつ落とし入れては臼を廻します。

低い「ごろごろ、ごうごう」と音が響き粒が擂られてゆっくりと粉になって行きます。なんともいえぬ、のんびりとした趣ある響きです。

石臼はかなり重く、廻すには中々力が要ります。
僅か2合程の小麦粒を挽くにも慣れないと30分程も懸ってしまうでしょうか?
粉を食べて得られるエネルギーと、臼を廻すことで消費するエネルギー、収支が赤字になってしまうのではなかろうか?などとあらぬ心配までしたくなります。

それでも、急がず慌てず根気よく、只ひたすらに、粒小麦を少しづつ加えては石臼を廻しておりますと、やがて臼の周りに細かく挽かれた粉が落ちては積もって参ります。

その粉を集めて篩いにかけ、肌理の細かい白っぽく胚乳と胚芽が多い全粒粉と、やや粗目の衾(小麦の皮の部分)が多く茶色っぽい粗挽き全粒粉とに篩い分けました。

粗目の全粒粉には塩とオリーブオイル少々と水を加えて捏ねて玉にし、しばらく寝かせてから丸く伸ばして鉄板で焼きました。
所謂、「チャパティ」(発酵させない平らなパン)です。焼き立ての熱々にバターやオリーブオイルを塗って、お好みのジャムなどを載せて戴きます。簡単ですがそれは美味しいものです。

昨日の挽き立て粉で作ったチャパティは、実になんとも言えない良い香りと風味が満ちてサクサクで、いつにも増して実に実に美味しいものでした。

白っぽい粉の方は、我が家で普段からかけ継いでいる天然酵母を加えて捏ね、今日までゆっくり発酵させてからパンに焼きました。
我が家では2~3日おきにこの天然酵母パンを焼いていますが、やはり挽き立ての粉だからか、いつに無い香ばしいパンが焼けました。

こんなに美味しいと、そろそろ種蒔き時を迎えた今年の小麦栽培に向けて気合が入ってしまうというものです。

とはいえ、日々食べているパンやパスタを、自分で石臼で挽いた粉で作ろう、と決心するに至るにはまだしばらく躊躇しそうです。
お米の籾も摺らなくちゃいけないし、棉を繰って糸を紡いで布を織ったりも…。竈を作ったら薪集めや薪割りも…。
願わくは粉挽きには水車の力を借りたくもなるのであります。まぁ、水車が出来れば籾摺りや精米だって、更には糸紡ぎだって出来ちゃうようになりますけどね…。

でも、そんな暮らしが出来たらささやかながら大きな喜びになるだろうな、とも思う私です。

2011/10/31 08:28 | kawaguchi | No Comments