« | Home | »

2011/09/27

彼岸も過ぎ、日毎に色を濃くしてゆく稲の穂の姿に深まる秋を感じる日々を過ごす、百姓になりたい、川口です。
彼岸花の鮮やかな赤と黄金色の稲穂が秋の夕日に照らされている様は実に美しいものです。

さて、私が田舎暮らしを始めるに当っては、様々な不安がありました。
その一つが、車を持っていない事。

何しろ、ここから近隣のJRの鉄道の駅まで歩いたら優に2時間以上はかかります。
ローカル線の駅までは一時間程度で歩けますが、この路線には電車が一時間に一本も走っていない。
幸いにして、コミュニティーバスが近くの道路を走っていますが一日4~5本のみ。
一時間に数本走る基幹のバス路線の停留所まででも歩いたら一時間近くはかかるのです。
都会の感覚では、殆ど実用に耐えません。

そんな所で、私は愛用の自転車だけを移動手段にこの田舎暮らしを始めたのでした。
周りの方々に言われるまでもなく、自分でも無謀な事ではないか?と想っていたものです。

しかし、そろそろ4年目も後半に差し掛かった私の田舎暮らしで実際に車が無くて困ってしまった、という場面には、幸いにして殆ど出会っていないのです。

と申しますのも、、、

私にはここ以外の「勤め先」というものはありません。
私には子供が居りませんので、幼稚園や学校に子供を連れて行ったり駅まで送り迎えする、という事がありません。
私は所謂「農業」、即ち、農作物を大量に作って大量に販売する事、はしておらず、かつ我が家の田畑山は全て歩いて行ける範囲にある為、農機具や大量の肥料や農薬、収穫物といった物資を車で運ばねばならないという事がありません。
そして、日常生活においては、滅多には買い物に出掛ける事もありません。

ですから、気が付いてみたら車など要らなかった、というのが実態なのです。

田舎暮らしを始めて暫く経った頃こんな事がありました。

東京から友人たちが車で遊びに来てくれたので、ご馳走しようと近隣の港町の魚屋さんまで車を走らせてもらったのです。

普段でしたら勿論、自転車で往復して魚を仕入れに行っているのです。が、その時には友人に留守番をしてもらうよりはとドライブがてらに付き合ってもらいました。

車で行っても片道10㎞は優にある道程ですから、友人は随分と驚いた様子で、
彼: 「毎度、こんなに遠くまで買い物に行かないといけないのですか?一体、自転車だと何時間かかるんですか?」と訊きます。
私: 「そうだなぁ、一旦出掛けるとついでに色々と買い物もしたりするようにしているから、2~3時間は費やすね。でも、純粋に自転車で走っている時間は往復でも精々一時間半程度だから。」と応えます。
彼: 「(深い溜め息を吐きつつ)はぁ~、それは大変ですね!私にはとても無理ですよ。。。」
私: 「でも、そんな事は一週間に一度も無い事なのだよ。たまには自転車を走らせるのもとても気持ちが良い事なんだ。」
彼: 「いや、それにしても買い物するのに自転車で往復一時間半は無理でしょう?」
私: 「だって、一か月に数回の事だよ?」
彼: 「えっ?買い物行かないのですか?食べ物とか・・・?」
私: 「だって、全然買い物する必要がないから。食べ物は頂き物もあるしね。食べきれない位なのだよ。」
彼: 「それでも往復一時間半って僕には無理ですよ…。」
私: 「えっ、どうして…?僕も東京で勤めていた頃には毎日数時間以上かけて通勤していたから、それに比べれば楽なものだよ。ちなみに君だって毎日の通勤には時間を使ってるでしょう?」
彼: 「… 。 2時間以上、ですね・・・。」
私: 「僕にはその毎日の通勤時間というものは無いからね、たまにそうして移動するのは寧ろ愉しみなのだ。」
彼: 「…。 何だかムカついて来ました!」

そう言って彼は笑ってくれてはいたけれど、きっと少しムカついていたのだろうなと想います。

毎日、通勤に費やす時間を想えば、たまに自転車に数時間乗って買い物をするだけだなんて、贅沢としか言いようが無いではありませんか?!?

そんな訳で、今も、私も妻も、自転車だけで田舎暮らしをしていますし、これから先も、車を手に入れようという気は全くありません。

え?おカネが無いのでしょうって?
はい、勿論、車に使うようなおカネはありませんよ!

だって、こんな事もあるのですから。

我が家から自転車で一時間半ほど川に沿って登った辺りに、素晴らしい珈琲を出してくれるそれは素敵なカフェがあります。
とても素晴らしいお店なので、来客があると必ず紹介しています。時には彼らの車に同乗させてもらって訪ねる事もあるのです。

が、間違いなく、車に載せてもらって訪ねるよりも自転車で風を切って一汗掻いて登って行ってから頂く一杯の珈琲の方が間違いなく遥かに美味しいのです。しかも、有難いことに、この田舎のカフェでは自転車、バスでの来訪者は50円引き!!!

やはり、田舎暮らしには自転車さえあれば十分なのです。

いえ、これは決して負け惜しみでは・・・。

何しろ、私は運転免許もとうの昔に捨ててしまっているのですから。

2011/09/27 12:25 | kawaguchi | No Comments