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2011/02/18

電車に乗ったら座席が一列全部空いている。
あなたならどこに座りますか?

なんだか、飲み会でよくある心理テストのようだけれど、習慣のハナシ。

多くの人が、両隣りに他人が座ってきて密接するのが嫌だから、と端の席を選ぶのだと思う。
それに、広い空間にぽつんと座っているより、横になにかしらがある方が、
なんとなく落ち着く、っていうのもあるだろう。

まさにアメリカに行く前の私の回答も なんとなく 『端』 だった。
そしてアメリカに行ってからもしばらくそれは変わらずだった。

NYに引越ししてから1年目だったか2年目だったか、ある日地下鉄に乗った。
割と混んでいて、私はドア横の端の席に座っていた、か、もしくはドアを背にして立っていた。
そこからは向かいの席のドア際の端に座っている女性が見えた。

列車がホームに滑り込み、止まる。
ドアが開いて、降りる人、乗る人の流れ。満員ではなかったけれど、それなりに混んでいる。
出発の合図、ホームのベルではなくて、リンゴン、リンゴンという列車が鳴らす音。

なにげなく景色として見ていた人ごみと向かいの女性、その横に立っていた小柄な男性。
ドアが閉まる瞬間に、彼が彼女の首から金色のネックレスを剥ぎ取りホームへと飛び降りた。

一瞬のコトで、そしてドアは閉まり列車は走り出す。
その出来事に車内はざわざわしていたかもしれない。
女性の隣に座っていた誰かが、大丈夫かと言っていたかもしれない。
でも私の記憶にその音はなく、ただびっくりして唖然となり、とにかく首を押さえる女性の顔。
目は見開いていて、鯉のように口が開いてはしまり、開いてはしまる。

その時私の頭の中は、あのネックレスは金色だったけど、純金だったのだろうか、、
もしメッキだったら、あの青年はこんなリスクをしょってまで奪う価値があったのだろうか、、、
なんてどうでもいいことがぐるぐる回っていた。

そして、あんなことができるんだ、あんなことをやるんだ、という衝撃が襲う。

その事件から端に座るのをやめるようになった。しばらく電車に乗るのも怖かった。
そして意識して真ん中に座るようになる。習慣で踏み出した足を、真ん中に向ける。
純金のネックレスなんて持っていないのに。

日本に帰ってきて東京に住んでからは、そうそうがらがらの電車に乗ることなんてないけれど
それでもたまにがらんとした電車に乗ると、戸惑いはしないけれど、ぎこちなく真ん中に座る。
座ってから、ぼんやりあの時のコトを思い出し、
それから、寒くないし、うるさくないし、真ん中に座るのもいいもんだと、と勝手なコトを思う。

更に月日が経てば、何も考えずに真ん中に座るようになるのだろう。

『電車に乗ったら座席が一列全部空いている、あなたならどこに座りますか?』
と聞かれれば
『真ん中です、だって広々してるじゃない』 なんて言うようになって
私という人格は結果変貌を遂げているに違いない。

2011/02/18 11:19 | masaki | No Comments