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アメリカの生活と日本の生活、どちかが良い? と、よく聞かれる。
もちろん、食生活や家族が皆日本にいて、週末会おうと思えば会える
という意味では、日本の暮らしになんの不満はなく、
どちかの甲乙をつけるのは難しい、と答える。
けれど、だいたいいつも 『ただし・・』 と続く。
『日本の生活の方が、若干文化的なモノが足りないかな』、と。
私にとって文化的なモノ、とは、ボストンバレエや、ボストン美術館に始まり、
NYブローウェイのミュージカル鑑賞、リンカーンセンターのオペラ鑑賞、
セントラルパークでのクラッシク・コンサート、ホィットニー・ミュージアムや
だだっ広いメトロポリタン・ミュージアムで過ごす週末。
つまり、多くが芸術的なモノを鑑賞する、というもの。
坂本龍一を初めて生で見たのは、セントラル・パークの無料野外コンサートで
舞台の真ん中にピアノがどーんと置いてあって、そこで坂本さんが
‘Merry Christmas Mr. Lawnce’を弾いていて、空に響くその音にすごく感動した。
最近のブロードウェイもオペラも、少し良い席で見ようと思えば
価格はやっぱり1万円前後で、日本より格別安い!というワケではない。
けれど、散歩していたらたまたま公園で野外コンサートをやっていて、
皆思い思いに芝生に座り、ワインとサンドイッチでピクニックしていたり、
演奏を聴きながら日光浴していたり、みたいなことや、
リンカーンセンター前を通りかかり、今やっている演目が目に入りチェックしたりと
そういう楽しい遭遇が、ボストンでもニューヨークでも多かった。
日本の公園の芝生の多くが、整備上の関係か『立ち入り禁止』になっているが
戻って来た当初、そして今でも、本当に意味が分からない。
話が反れたが、とにかく普通の生活動線上にそういう文化的なモノたちがあった。
地理的にボストンもニューヨーク(シティ)もぐっと範囲が狭く、
何もかもがコンパクトにまとまっていた、という立地条件もあるだろうけれど、
それでも人々の芸術への感心が高く、文化的なイベントが
ナチュラルに多く、街の中で行われていたように思う。
美術館も規模が大きいものから小さいものまでたくさんあって、楽しかった。
一番のお気に入りは『イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館
【Isabella Stewart Gardner Museum】』。
ケンブリッジにあるハーバード大学内の『フォッグ美術館【Fogg Art Museum】』
も好きだったが、大学に近くて良く通った、という点で
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館の方が思い入れが深い。
ニューヨークに移り住んでからも、ボストンに行く機会があれば必ず寄った。
私邸のように建てられた3階建ての美術館で天窓まで吹き抜けの中庭もあり、
行くと異次元の世界に来たようで、世の中の喧噪を忘れ、時間を楽しめた。
もちろんレンブラントやフェルメール、ラファエロなどの著名な作品もあったけれど
特に好きな絵画やコレクションがあったわけではなく、むしろ、
邸宅全体の雰囲気が好きで、学割もあったので気がつけばふらりと通っていた。
この‘意味もなく美術館に通う’というのが
今の私の渇望する‘文化的な生活’の原点なのだろう。
‘ふらり’と出かけた先で、
自分の人生に関係なくずっと流れ続けている‘コト’や‘モノ’を確認し
そしてまた自分の生活に戻る。
そういう場所がまだ東京にはできてないなーと、と最近そう思う。
いつか巡り会えるものだろうか。
イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館はボストン美術館のすぐ近くなので、
ボストンへ行く機会がある方は、ぜひに覗いてみてもらえると嬉しい。