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2011/08/25

大分間があいてしまいましたが、「僕のジャグリング史」のカテゴリです。
2002年のJJFもチャンピオンシップに挑戦したり、「日本ジャグリング協会」の理事に就任したりと、
色々あったのですが、あまり熱心に書いても面白いことはあまりないだろうなぁと思ったのではしょります(笑)

今回書こうとしている話の時期は、2002年~2003年ころの話です。
2001年に、IJA(国際ジャグリング協会主催サマーフェスティバルのこと)のチャンピオンシップに松浦さんという方が日本人で初めて出場したことを記事にして先日投稿いたしましたが、翌年2002年には、18歳未満のみのジャグラーが出場できる「ジュニア部門」にて、矢部亮くんが優勝という偉業を達成します。

矢部君はディアボロ(中国独楽)を使用したジャグリングを得意とする人なのですが、この頃の日本のジャグリングの世界では、彼を筆頭に、ディアボロのレベルが飛躍的に向上しはじめ、世界でも屈指のディアボロ先進国になっていたのではないかと思われます。
それを象徴するのが、ジャグリングショップ・ナランハより、世界に向けて発売された「コンプリート・ディアボロ」というビデオ(当時まだDVDはあまり流通していなかった)でした。

この頃は、youtubeのような動画コンテンツはまだ存在しておらず、動画などを見たいと思ったら、ジャグリングショップでビデオを購入する、というのが一般的でした。
当時、ジャグリングの世界のワールドワイドで人気があったのが、以前記事に書いたことのある
アンソニー・ガトージェイソン・ガーフィールドといった、世界トップクラスのジャグラーにスポットを当てた超絶技巧集のビデオ。

また、peapotというグループの作成した(このグループにも有名なジャグラーが所属している)、一つの道具にスポットを当て、新しい使い方を紹介するようなビデオもありまして、僕の周囲では超絶技巧ビデオよりもこちらの方が人気があったように思います。

そんな中発売された「コンプリート・ディアボロ」は、「超絶技巧」かつ、「一つの道具にスポットを当てた」ビデオでした。
何しろ、当時、ディアボロといえば当然のごとく扱う数は1つ。最後のフィニッシュ技として2つが行われる程度の道具だったのですが、当たり前のように2つを用いる複雑な技が紹介されており、さらには3つのディアボロまで回しているのですから、世界的に驚愕を持って受け入れられたのではないかと思っています。

そんなディアボロの華々しい活躍を横目に見つつ、ふと思うことがありました。
「日本のシガーボックスだってレベル高いよ?」

その当時、やはり、シガーボックスという道具は3つで行うのが当然で、「伝統的な道具」というイメージが定着していた所為か、シガーボックスのテキストに書いてあること以上の技は求められていないようでした。
そもそも「シガーボックスの巧い人」というのが、全世界でも数えられるほどしかいなかったような気もしますし、「ジャグリングの道具」としてはメジャーな位置づけではありましたが、反面、そんなに人気のある道具では無かったように思います。
(ちなみに、当時の日本では「しあわせ家族計画」などのテレビ番組のおかげで、知名度だけはあったような気がします。)

しかし、周囲を見渡してみると、6つのシガーボックスで技をやる人はいるわなんか変態的な技をやっている人はいるわ、自分の身内だからというひいき目を加味しても、間違いなく世界トップクラスの技をする連中がいます。また、僕自身も、人がやらないような技を開拓することに熱中していましたし、
「『コンプリート・ディアボロ』のシガーボックス版を作ることができるのではないか?」
という思いが日に日に増してきました。

それを、シガーボックス仲間に提案したところ、やはり同じ考えを持っていたようで、早速メーリングリストを作成、撮影場所を準備したり、編集機材を準備したりと、あれよあれよと準備が進み、あっという間に撮影当日。遠くは青森、新潟からはるばる大阪に足を運んでもらい、早速撮影開始。

もとより気の合う連中が集まったこの日は本当に楽しかった(笑)

コンセプトは「シガーボックスの技を知っている限り詰め込もう」というもので、簡単な技から、難しい技、まだ一度も成功したことがないけれど理論的にはできる技(それを成功させちゃうのも凄い)、マニアックすぎて誰もやらないであろう技(しかし、現在はやっちゃう人もいたりする)などを徹底的に詰め込むという内容。
集まってみて面白かったのが、出演者5人が、まるで違うシガーボックスの使い方のベクトルを持っていたところでして、5人いるにもかかわらず、オリジナル技がまったく被らないんですよ。
当初、この日の撮影1日だけで済むと思われたのですが、「これも追加したい、あれも追加したい」と、後日撮影したパートがさらに増えてどんどんと膨らんでいき、結果的になんと収録された技の数は400以上 (←「これギネスに申請しようか……」という話もあった) 編集してくれた出演者の一人、ボーダーさんはさぞ大変だったろうなぁと、心から思います。

ビデオに使う音楽も、音楽編集ソフトを使用して自分たちで作成する(これも、ほぼボーダーさんが担当)など、著作権的にもクリア。
もう試作品の段階を見ただけでにやにやが止まらなくて、「このビデオは凄いぞ!!!」と、自信を持って周囲に言える作品になっていました。

タイトルは、ストレートに「十八番」。シガーボックスのビデオだということがわかる、まさにこれ以上ないタイトル!
宣伝用ページなんかも用意。
宣伝トレーラーも準備しました。youtubeにも挙げてみましたのでもしよろしければご覧くださいませ。

(あ、やっぱり当時の僕若いですね:笑)

ジャグリングショップとのやりとりが巧く行かなかった部分もあったのですが、最終的にはビデオ販売にこじつけました。
もう、その予感は販売前からあったのですが、発売されるや否や、好意的な評価を色々なところから受けまして、海外のジャグリングのフォーラムや、ジャグリング雑誌にも取り上げられたり、英語のメールで、僕に「どこで輸入できるんだ!?」と問い合わせが来たりと、凄くうれしいことになりました。

我々日本のシガーボックス使いが世界に誇れるレベルだということは、幻想では無く、本当だったことも証明されたといっていいでしょう!

残念ながら、一昨年ボーダーさんがお亡くなりになってしまったため、もうこのメンバーで集まれないのですが、編集をしてくださったボーダーさんのおかげで、今見ても充分面白い映像に仕上がっていまして、本当にこのビデオは誇りにしていて、このビデオの出演者の一人となっていることを凄く自慢できます。

今でも「十八番」を手に入れることはできます。
流石にもう、このビデオを「世界のトップレベル」と言うのはおこがましくなってきました(それだけ世界も、日本もジャグリングのレベルが向上しているのです)が、それでも、このビデオに収録されている技の数々が、今の進化したシガーボックスの礎になっているものと確信しています。

このようなビデオが、今後作成されることは少ないだろうなぁ、とも思います。
今や、youtubeやニコニコ動画など、動画を気軽に公開できるコンテンツがあるので、敢えて「ジャグリングショップで販売」という方法を取る意味が無くなったんですよね。
世界中の色々なジャグラーの動画を気軽に見ることができるようになりましたが、情報が溢れているだけに、本当に良いものにたどり着くことが難しくなりました。

2011/08/25 12:00 | ryuhan | No Comments