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2011/06/30

皆さん、おはようございます。

今回は加行のサブメニューである、勤行と食事や施餓鬼について
書いてみたいと思います。

とにかく真言宗に出家した人間は、
ことあるごとに「理趣経」というお経の名前を、
耳にするし、口にすることになると思います。
高野山大学の就職係にお寺の募集のことで行けば、
「理趣経は読めますか?」と二言目どころか、
開口一番言われることは間違いありません。

少なくとも、高野山真言宗では
理趣経が読めてナンボ、という世界が繰り広げられています。
お寺に、行者としてであれ、役僧としてであれ、寺生としてであれ、
入って朝勤行に参加したら必ず読むのが理趣経です。
真言行者たるもの、理趣経が読めれば他のは読めなくても・・・
とは申しませんけれども、
逆に、他の何が素晴らしくできようとも、
理趣経が読めなければ話にならない、というのは
誇張でもなんでもありません。
ここに高野山真言宗のお坊さんが100人いたら100人が、
1万人いたら1万人が、一人の例外もなく
このことについてだけは首を縦に振ってくれること間違いなしです。

そんなわけですから、真言宗で得度したら必ず、
理趣経の読み方を教えられるか、読み方を覚えるよう言われるかするはず。
少なくとも、読めなくてもいい、という先輩は一人もいません。
本来なら、前々回に加行内容の説明として、
「理趣経加行」というものがあることを書きましたように、
その加行をしてからでないと理趣経を読んではいけないはずなのですが、
そんなことはおかまいなしに、下手すれば得度当日から読まされるのが、
この「理趣経」というお経なのです。
理趣経加行とは、108回の礼拝と観音経読誦がメインの行法です。
これを3日乃至1週間行って初めて理趣経を読む資格が認められるのですが、
そんな建前を守っている人は見たことがありません。(笑)

以上、かなりのもったいをつけましたけれど、
この理趣経が朝勤行のメインディッシュとなります。
最も基本的な朝勤行のメニューは、

前讃
理趣経
後讃
至心回向

前讃、後讃とは、仏に讃嘆を捧げる声明、つまり節つきのお経でして、
本来は前讃は四智梵語、心略梵語、不動梵語、
後讃は四智漢語、心略漢語、仏讃の6曲全部をやるのですが、
略式には前と後、各1曲ずつ唱える、ということになります。
ベーシックな略し方としては四智梵語と仏讃なのですが、
行者や学生など、声明を勉強する必要のある人がいる場合、
ローテーションで3日で全部やれるように組んだりします。

そして至心回向とは、
金剛界礼懺というお経の冒頭5節の中の、5節目、
「懺悔随喜(さんがいずいき)」から始まる一区切りを唱えることです。

朝勤行は、この後にいくつかの真言、
というバリエーションがつくこともあります。
本堂での朝勤行の後は、院内諸尊。
持仏間といって、お寺の先代住職達をお祀りしている部屋、
荒神さん、大黒さんを拝んでまわります。
うちのお寺には、お稲荷さんもありました。

さて、夕勤行は朝とメインが変わるくらいで、
メインが、観音経、梵網経、般若心経秘鍵などになります。

食事ですが、いわゆる食事、
つまり食べることの前後には食事作法(じきじさほう)というのが付きます。
般若心経の他に、色々な偈文を唱えるのですが、
かなり速くやっても、食べ物の前に座ってから食べるまで、
5分くらいはかかります。
お昼はうどんやそば、ラーメンやそうめん、といった麺類なのですが、
特にそうめんなど、確実にふやけてえらいことになってます。
というのは、必ず温かい麺類、という形で供されるからなのです。
いわゆるそうめんの出し方ではありませんね。
前日の晩がライスカレーの場合、翌日昼はカレー麺類なのですが、
これがカレーそうめんだった場合、それはそれは・・・・。

で、嘘でも作法ですので、食べる時の恰好は空衣に如法衣、
つまり行法や勤行と同じ盛装です。
もちろんおしゃべり厳禁。
・・・という規則です、一応。
何事にも、かなり多くの例外があります。
まあ、これは毎度の例外でしたけども。(笑)

ちなみに、晩御飯は作法はありません。
というか、実際は一番豪華な食事であるにもかかわらず、
食事でさえありません。
薬石、と申しまして、単なる服薬です。
ですから恰好も作務衣。
直前に下座行、つまり掃除をしていたそのままですね。

夕勤行の後に施餓鬼というのがありますが、
お寺のどこか適当な場所、縁側などに施餓鬼場が設けられ、
そこで、食事作法の時に別皿に取り分け、(出生飯・しゅっさば、という)
一つの蓋付き器に集めておいた餓鬼飯(ご飯粒と水)を
餓鬼、つまり貪りが過ぎて、満足することが許されない境遇に生まれた霊に
施しをする作法を行います。
印と真言で餓鬼飯を加持し、清浄で甘露なものにし、
量も無限に増やしてやり、施すのです。
終わったら後ろを振り返らずに立ち去るのがマナーです。

これが、勤行と食事、施餓鬼の概要です。
今後は、高野山の参拝方法について、
我々行者のやり方をご紹介することで、
皆さんのご参考になれば、と思います。

さて、これからまた7月中は劇場に体をとられ、
7月末までに家の引っ越しをし、
8月にはお盆があり・・・と、
8月20日あたりまでは忙しくしておりますので、
ひょっとしたら更新が出来ないかもしれません。
出来たらしていきたいと思いますが、
保証の限りではありませんので、
悪しからずご了承下さい。

2011/06/30 01:33 | bonchi | No Comments