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ジャグリングというものを初めて見た人から、良く聞かれる質問のひとつに
「こういうのってどこを見ているんですか?」
というものがあります。
今日の記事は、それに対する回答です。
ジャグリングをするときには、視界の中には道具を捕らえていることが多いです。
しかし、道具以外にも、ジャグラーは自然と色々な情報を「見ている」ようです。
初心者のジャグラーは、どうしても視界の中に「手がボールを投げている様子」を入れたいため、
その為に、どんどん腕の位置上がってきてしまう傾向にあります。
しかし、実際には、ボールの軌道が描く「弧」の頂点付近さえ見ることができれば、
落下地点が予想できるため、ジャグリングを続けることができます。
そのように初心者に指摘をすると、今度は手元にあるボールを意識的に見ないようにしようとして、
それにつられて、空中にあるボールすら見ようとしないような人もいます。
ボールは確実に見なくては続けることはできませんが、
脳がまだジャグリングに慣れていないためにこういうことになってしまいます。
背中の後ろや、首の後ろを通したり、一回転をする技を行う時は、視界から道具が完全に消える瞬間があります。
しかし、キャッチの直前に一瞬でも視界に捕らえることができるなら、その技を続けて行うことができます。
また、「どこに道具があるのか」という情報は、視界の中に入っていなくても「見えて」いる状態です。
よく、バスケットボールやサッカーで、選手のポジションを上から「見る」ことができる、という人がいますが、(「イーグル・アイ」と呼ばれるものですね)
あれと同じで、背中の後ろや首の後ろを通った道具は、「どの位置にあるのか」ということは、頭の中の想像で「見る」ことになります。
そして、キャッチの直前にその位置を今度は視界で「見る」ことにより、正確な位置を把握し、
キャッチにつなげる、ということを無意識のうちにやっている、というのが僕の考えです。
手馴れたジャグラーになってくると、「道具がどこにあるか」という情報さえあれば、視界の中に道具を捕らえていなくてもジャグリングを続けることができます。
具体的に言うと、投げたボールなどを体に当てるなどして、ボールに「触れている」状態であれば、
視界に捕らえている状態ほどスムーズじゃないにしても、目を瞑っていてもジャグリングを続けることができます。
中には、本当に目を瞑った状態で、体にもボールを当てず、その状態でジャグリングを続けられるような人もいますが、
それは正確なスローの賜物であり、普通のジャグラーでは真似ができない芸当です。
ジャグリングをしている時の視界について、僕の経験からもう一つ面白いと思われる話を。
雲ひとつない青空の下、広々とした河川敷でジャグリングをした時、普段よりもジャグリングが続かないという経験をしたことがあります。
このとき、かなり強い風が吹いていたので、その所為で道具が流され、手元が狂ってしまったのかなと思っていました。
また、ある日、とある公民館で公演の依頼があり、仲間数人でジャグリングをしに来たとき、
ウォーミングアップでジャグリングをやっていると、やはりどうも手元が狂うような、続けにくい状態だったのです。
どうやら、それは僕だけではないらしく、
「なんか、目のちかちかする天井ですね。」
後輩の一人がそう言いました。なるほど、確かに、天井が市松模様のような細かい規則性のある様子で、
照明の数も少なく、ジャグっていると視界一面で捕らえられる天井の模様が変化無く一様な状態でした。
その時は気がつかなかったのですが、
改めて思い返すと、どうやら僕は、道具と、道具の背景となる天井や空の模様を無意識のうちに比較して高さを把握しているようなのです。
河川敷でジャグリングをしている時には、周囲に一切高い建物が無く、ジャグリングをすると、見上げる空が青一色になっており、
高さを比較する対象がまったくない状態でした。
また、天井がワンパターンで照明も少なかったりすると、これも比較をすることが難しくなり、雲ひとつない青空と似た状態になって
手元が狂ってしまう、という状況に陥ります。
青空なら雲が一つでも浮かんでいれば、天井でも火災報知機のようなものがあればまた話は変わってくるのですが、
目から入ってくる情報にかなり依存しているので、ジャグリングしづらい「空」の下でジャグリングをしなくてはならなくなった場合、
いつもより慎重にジャグリングをしなくてはならなくなります。