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11月27日
手術室に入る時、再三にわたり、名前の確認をされた。
それは「もう覚悟を決めなさい」と言われているかのようだった。
手術台にあがる。
コンタクトも眼鏡もかけていないため、周りがよく見えない。
あたりを見回してみたが、自分が何を見ているのか、まったく分からなかった。
とにかく、目の前が、部屋の中がまぶしく感じた。
医師、看護士、サポートスタッフがたくさんいた。
私以外にもこの手術室で誰か手術を受ける患者がいるのかと思うほどだった。
「目が覚めたときにはすべてが終っているよ」
手を握って、明るく優しい言葉を声をかけてくれた。
皆は毎日のことなのかもしれないが、私にとっては生まれて初めての経験。
同じように笑顔にはなれなかった。
麻酔医が近くに来た。
何か、呼吸器のようなマスクを持ってきた。
そして、注射が用意された。
急にまた私は不安になった。
逃げ出そうとは思わなかったが、麻酔はちゃんと効くのか、不安になった。
途中で目が覚めたりしないだろうか。
効きが悪かったり弱かったりして、ちょっと覚えていたり痛かったりしないだろうか。
麻酔が効くまでどのくらい時間がかかるのか。
手術は3時間くらいと聞いているが、もし長引いたとしても麻酔はしっかり効き続けるのか。
そして、終ったときには、ちゃんと目は覚めるのか。
これは、昨日、麻酔医との面談で説明された事項だった。
すべての質問に、麻酔医は穏やかな口調で答えてくれた。
とにかく寝ていればいい、頑張るのは、私じゃない、執刀医なのに、
それでもまだ私は、なにかこう焦ってしまい、気持ちがまったく落ち着かない。
涙がまたあふれてとまらない。
胸に手をあてた。
そして、腫瘍に触れてみた。
この時が、私の胸にできた腫瘍を触った、最後の瞬間だった。
乳がんかもしれない、と思ったそのときから、いったい何度触っただろうか。
抗がん剤治療を受け、少し小さくなった腫瘍。
・・・これさえなければ。
そう思って、赤くはれあがるまで叩いた事もあった。
それを、やっと、取り除く時が来た。
呼吸器のマスクがあてられた。
そして、注射を打たれた。
・・・1・2・・・・・3・・・・・・・
3を数えるか数えないくらいで、もう、意識はなかった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
急に目の前が明るくなった。
「メグミさん、メグミさーん、名前を教えてください!!」
なんだか状況がよく分からなかったが、名前を聞かれていた。
意識がしっかり回復しているかを確かめるために、名前を聞かれていた。
手術は無事、終わった。
・・・次は、術後〜その後をお伝えします・・・