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痛み止めの薬を飲まずにすむようになり、
腋に繋がれたドレーンから滲み出て来るリンパ液が徐々に減って来た頃、
医師から退院できると伝えられた。
あぁやっと解放される。
嬉しかった。
単純に元の生活の場に戻れることも嬉しかったが、
まだ手術で切除したガン細胞の病理も出ておらず、そんなことは決して誰も言っていないのに
「もうすっかり治ったよ」と、そう言われたかのような気持ちになった。
退院の日の朝は忙しい。
次に入院してくる患者さんの為に、10時にはベッドをあけなければならなかった。
はやる気持ちを抑えて、朝の支度をした。
熱が出ていたら退院が延びてしまうのではと、いらぬ心配をしながらの検温。
続いて回診があり、最後の朝食。
ここまでは普段通りだったが、そのあとが今日は違った。
パジャマから服に着替え、ウィッグをつけ、お化粧をした。
なんとも言い難い、嬉しい気持ちに、自分自身驚いた。
ウイッグは一番お気に入りのものを着け、
入院中には一度も手に取ることのなかった化粧ポーチを開けた。
ベッドの上ではあったがスタンドの鏡に向かいお化粧をした。
ナルシストかしらとも思ったが、鏡に笑顔を向けた。
「うん、大丈夫!」
不思議とそんな気持ちになった。
例えるならば、美容院で髪型を変えてイメチェンし、それがうまくいった、とでも言えるだろうか。
身支度が整い、ベッドの周りのカーテンを開けると、同室の方から声をかけられた。
「こんなに若いお嬢さんだったのね」
(実際、私の年齢が若いかどうかは皆様にご判断いただきたいのですが。。)
「ステキなウイッグじゃない!どこの?」
みんなに私は笑顔で答えた。
このウイッグは医療用ではないこと、
たまには気分転換でファッションウイッグをつけ、髪型の変化を楽しんでいること、
渋谷にあって、高校生もよくいるようなところで買ったこと、
値段や場所まで教えてほしいと言われ、説明した。
大変失礼な話ではあるが、いくつになっても女性は女性だと、改めて感じた。
また、それほど、みんなウイッグには注目しているんだなと感じるとともに、
ほとんどの抗がん剤に脱毛の副作用があるにもかかわらず、
必需品とも言えるそのウイッグが保険適用外だということを
(医療費控除の金額にはカウントできます)
なんとかできないものかと、強く思った。
そうこうしているうちに時間は過ぎ、母と、仕事を休んで車を出してくれた姉が来た。
病室のみんな、またお世話になった看護師の方々に挨拶をし、一階ロビーへと降りた。
待ちに待った、退院。
長くも短くも感じた入院生活が、終わった。
・・・次は、退院後〜その後をお伝えします・・・