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久しぶりに森の奥地に入った。
雪の上には小動物の足跡があちこちにある。
大木を見つけるたびに上を見上げ、フクロウやモモンガが営巣しそうな樹洞を探すが、
そう簡単に出くわすものではない。
だいたい、いつも動物との出会いは偶然や不意が多いもの。
でも、今回はある動物に出会う為にこの森へやってきた。
果たして出会うことはできるのだろうか・・・。
カンジキで森を歩いた後は日没を待って車の中に寝袋を広げてひと寝入りした。
目を覚ますと午後5時。窓の外は夕日の残照がゆっくりと闇に変わっていくところだった。
三脚に望遠レンズをセットしている時、少し先の木立の中に小さな動物が走り去るのを
見たが、その後しばらくなにも起こらなかった。
いつのまにか空には丸い月が浮かび、星が瞬き始めてている。
そう、こんな時は動物への期待は捨て、きれいな夜空でも眺めていよう。
山奥で一人静かに満点の星空を眺めるとは、なんて贅沢な時間だろうか。
30分、1時間・・・。
日常とは違うこの時間の流れの中で自然のことや、これから自分がやりたい事などたくさん
の事を考え、いつのまにか撮影の事など忘れて想像の世界へと入り込んでいった。
やがてちらちらと雪が降りだしてきて、ふっと我に返った。
長い時間雪の上に寝そべっていたせいで、すっかりと体が冷えてしまった。
さて、そろそろ戻ろうかと体を起こしてみると・・・、
なんと、ずっと待っていたあの動物が雪の上に立ち止まってじっとこちらの様子を見ている
のだった。
一体いつからこちらを見ていたのだろう・・・。
しかも、近くにもう一頭いるようだ。
“エゾクロテン”
イタチの仲間で愛嬌のある顔に似合わず、実は肉食でかなり獰猛な動物だ。
これまで偶然何度か目にすることはあったが、夜行性で通常は滅多に人前に姿を現さない
為、今まで本格的にカメラを向けることがなかった。
やっと出会うことができたという喜びを抑えながら、落ち着いてすぐに撮影を開始する
が、これまた難易度が高い。
はじめから想像はしていたが、闇の中で素早く走り回る彼らを写真に収めるのは容易
なことではなかった。
しかもストロボ光源は眼の反射が起きてしまう為に正面からは当てられない。
ストロボ2灯をそれぞれ別な三脚に取り付けて斜め方向から光が当たるように置いて、
カメラのシャッターにリモートで発光するようセットする。
これで決まればきれいに写るのだが、なにせ彼らはとにかく走り回るので、ストロボの位置
を何度も置き換えての撮影となった。
そんな状態で撮影は夜中まで続き、結局最後まで彼らに遊ばれたまま終わりとなった。
クロテンが目の前から姿を消し、再び辺りが静まり返った。
天を見上げると今も無数の星が輝いている。
今日は山奥深くで素敵な物語を見ることができた。
それだけでココロが充分に満たされていた。
また次回の出会いを楽しみに思いながら寝袋に潜り込んだ。