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私は芸歴というものは何をきっかけに、どこから数えるんだろう?と疑問です。
例えば、役者でもいろいろジャンルはあるけど、舞台役者なのか、ドラマや映画俳優なのか。
初舞台から数えるのか、スクリーンデビューから数えるのか。
モデル出身で今、役者のタレントはやはり、モデル活動を始めた時期からなのか。
ある女優さんは「芸歴は長いんですよね?」という質問に対して
「幼少時代の○歳から児童劇団の養成所に通いだしたので、そこから考えると○年ですね。」と答えていた。
確かに…下積みのチョイ役でも立派なデビューであり、仕事ですから。
モデル、舞台、TV,映画、音楽その他もろもろひっくるめて、芸能界と考えるのであれば??
なぜかクラシックの舞台は別に考えるのが一般的なんだろうけど。
…私には昔からわからんのです。
もうひとつの、たわごと。
私は音楽大学出身ではないけど、‘運が良かったのか’入所試験をパスしプロのオペラ養成所に通う身になって2年と少し経ちまして
順調に進級もして、最終年に突入しているわけです。
‘運が良かったのか’研究生の身でありながら、決して大きな舞台ではないけれどもオペラの舞台にも乗せてもらえるという経験もできました。
ただ、クラシックの世界では私は‘半人前’、いい言い方をすれば‘若手’であり、‘声楽家の卵’なわけです。
当時、プロ声楽家として受けた初仕事。一番の悩みは、この役を全うできるか…というよりも
「はたして、私の姿を観にきてくださる方はいるのだろうか?」ということでした。
つまりはチケットを買ってまで私の姿を、声を聴きにきてくださる人がいるのか…という不安に襲われました。
決して、自分に自信が全くないわけではなかったのですが(じゃないと、プロ養成という熱湯に飛び込んでないだろうし)
それでも、私の今の実力に能力に金銭的価値があるのか?という自問自答を毎日していました。
私は、歌わせてもらえる場所があれば、どこへでも行って歌わせていただこうという姿勢で日々を過ごしてます。
それは、半人前だけどありったけの自分の姿でそれを聴いていただきたい、観ていただきたい、という気持ちが大きく
要するに、相手が‘私’を要求していないのに、半ば無理やり「よろしければお聴きください」という引け目をもった気持ちがあるからです。
以前も、「とある施設のエントランスでコンサートをやってほしいのだけれど、出演料どのくらいお支払いしましょうか?いつもどのくらいで受けてますか?」という質問に対し、とても困惑したことがあります。
自分はまだまだ出演料を指定してまで頂ける身分ではないと思っていました。
「1ステージこれだけは必ず」という基準、それだけの仕事をする自信が当時の私に備わっていたなら、また気持ちは変わっていたでしょう。
学生時代に、アーテイストのバックコーラスや結婚式の余興、映画やCFの挿入曲などの仕事をさせてもらったこともありますが、
その頂く出演料に見合うものを提供しなければならないという気持ちがありました。
しかし、当時は「アマの私たちに出演を依頼しているから能力の良し悪しは了承済み」ということに甘えていた部分もあったかもしれません。
なぜ、今回こんなことを思い出したかというと、直接は活動期間がかぶっていない学生時代の先輩が、
サークルの練習で使用していた教会ホールでリサイタルを開催するというお知らせをいただいたことがきっかけです。
その先輩も、私と同様に音楽大学を卒業したわけでもなく、プロの音楽家として活動しているわけでもなく普通に会社員として過ごし、
束の間の休みは音楽を嗜んでいる方なのです。
先輩は以前にも、同じ門下の仲間たちとリサイタルを開くという経験のある方で、その時にも感じていました。
もし、自分が先輩のように個人的なリサイタルを自主開催する立場であったら
「演奏会、リサイタルの開催は喜ばしい。だけど、今の私の演奏を聴きにいらっしゃるお客様ははたしているのだろうか?」
この不安は若手ならではの不安だと思います。
きっと私だけではないと思うのです。
昨年の話、あるプロデューサーが言ったのです。
「CDデビューは簡単なことだ。自主制作でだってCDは制作できるし販売もできる。
だがはたして君のCDをどれだけの人たちが、まずは手にとってくれるか?
そして買ってくれるのかな?」
私は何も答えられませんでした。
自分を売り出すため…というよりは自分の存在を知ってもらうことの術を知る。
自分を知ってる人に興味を持ってもらうためには、
外見もや能力を含め人間性を好きになってもらう必要がある。
そしてこれが、初オペラの仕事を受けた瞬間、ぶち当たった壁でした。
「それだけのお金を払ってまで観る価値のあるものなのか?」
「それだけの仕事を全うしきれるのか?」
宣伝をするたびに思いました。
二日開催だったのを、1日目を観て2日目は観る気がなくなったと正直に言ってくれた友人もいます。
ショックで、相当悔しかったですが…でも自分にはいい鞭でした。
この不安はきっと、しばらくはぬぐい去ることはできないでしょう。
自分の仕事に完全なる自信を持つまでは。