前回記事で書いた通り、現在、ブータンへ「出張」に来ている。
http://www.junkstage.com/fujiwara/?p=677
先週いっぱい、東ブータンに滞在して、先方の大学とタフな交渉をしたり、
標高3,500m超の山村に滞在したりしていたので、早く報告したいのだが、
そのレポートは少し待っていただきたい。
というのも、11月11日は、ブータンにとって特別な日。
先代にあたる第4代国王のお誕生日、しかも今年は生誕60年ということで、
ブータンの国立競技場にあたるチャンリミタンスタジアム@ティンプーで、
盛大に式典が執り行われることになっていた。
その情報を日本で事前にキャッチしていたので、
11日にティンプーに着けるよう、うまく出張日程を調整することに。
結果として、前回書いたような、意味不明の行程ができあがったのだが…。
なお、日本人でたまに勘違いされている方がいるのだが、
2011年に日本へ訪問されたのが、現国王である第5代国王。
その父君である第4代国王は、譲位によってその地位を受け渡したため、
未だにしっかりとご健在である。
というか、まだやっと60歳になったばかりでとてもお若い。
譲位の理由は、とてもここに書くには紙幅が足りないが、
今は、息子である現国王を陰から支える役回りに徹しているようだ。
それはさておき。
とりあえず、11日に式典がある、という情報のみでティンプー入りしたものの、
そもそも、何時から始まるのかすらわからず、その情報収集からスタートした。
ちなみに、私が情報を積極的に集めていなかったという自戒もあるのだが、
そういう情報がなかなか出てこない、あるいは、正確な情報かわからない、
というのは、ブータンではよくあること。
むしろ、あまり前から分かっていることというのは、大概間違っている、
というか、直前に変更になる可能性が極めて高いので、
積極的に取りに行ってもさほど意味がない、というほうが正しいかもしれない。
そんなわけで、結局、プログラムの情報を手に入れたのは前日夜。
スタートは9時で終了は13時とのことだが、
席を確保するために、遅くとも6時半くらいには行ったほうがいいのでは、
とのこと。
もちろん、国の一大イベントなのでそれくらいの早起きは覚悟の上。
が、問題はもう一つ得られた情報の方。
それは、当日のスタジアムには “No Camera, No Mobile” との通達があった、
というもの。
つまり、写真の類は一切撮ってはいけない、という。
しかも、携帯電話に至っては、朝の7時から、ティンプー市内全域
(もしかするとブータン国内全域)で、一斉に不通にするという。
携帯にうつつを抜かすのではなく、生身の国王陛下に親愛の情を向けろ、
というメッセージ…かどうかは定かではないが、
とにかく、相当気合の入ったイベントになりそうなことは伺えた。
残念ながら、当日のスタジアムの様子を写真でお届けすることができないのだが、
ひとまず、前日のティンプー市内の様子をご覧いただくことにしよう。
軒先のいたるところに国旗が掲げられたティンプーの目抜き通り。
時計塔広場では、9日〜11日まで、毎日ステージイベントが行われていた。
夜のティンプーもお祭りムード一色。メイン通りは終日歩行者天国に。
さて。
とにかく、朝6時半にスタジアムへ向かう。
早速、路上で “No Camera, No Mobile” と叫びながら手荷物検査をする警官たち。
「どうせ持ち込めるだろう」というやましい気持ちがなかったわけでもないが、
そこは第4代国王に敬意を払って、しっかりとホテルに置いてくる。
どうせ、携帯も繋がらなくなってしまえば無用の長物と化すわけだし。
スタジアムの周りは、すでにこの時間で黒山の人だかりができていた。
いくつかあるゲートにそれぞれ人が並んでいて、どの列が正解か全くわからない。
なぜかはよくわからないが、ゲートが開いたり閉まったりするのだ。
このあたりも実にブータンらしい。
結局、並ぶ列を二転三転させられた挙句、最後はなだれ込むようにスタジアムへ。
この時点で7時過ぎ。まだ開始まで2時間もあるのに、すでに疲労困憊である。
友人の伝手を介して、席を事前に確保しておいてもらったため、
見晴らしのよい良席をゲットする。
なんだかんだと世間話をしているうちに、要人も続々と集まりはじめてきた。
そして、9時を少し回ったころに、国王を乗せた車が到着。
先に第5代国王が王妃様を連れて会場入りし、第4代国王をお迎えする、
という形で、セレモニーの幕が開いた。
国旗掲揚、国歌斉唱といったプログラムが続き、
メインイベントとも言える、現国王によるスピーチへ。
このスピーチは、YouTubeに公式動画が早速あがっていたので、
もしご興味がある方は、ぜひ見ていただきたい。
スタジアムの雰囲気も伝わるのではないかと思う。
このスピーチの中で最大のニュースは、「現国王妃ご懐妊」を、
国王自らが発表したことだろう。
2011年のご結婚以来、待望の初子を授かったことになる。
ちなみに、現在妊娠16週目、性別は男性と判明しているそうだ。
このときには、スタジアム中が祝福ムードに包まれた。
その後、祈りの歌が捧げられ、プログラムは後半戦に。
後半は、”Cultural and entertainment programs” と称して、
主に、ブータン各地の伝統舞踊が次々に披露された。
途中、なぜか突然、
「水槽の上に渡した丸太の上に乗った二人が互いに落としあう相撲的なもの」
というイベントがはじまり、会場は大盛り上がりに。
しかも、それを王族の方々が最前列で見学するという、
日本で言えば、秋篠宮家の佳子様が「風雲たけし城」を見学するような、
異様な光景が繰り広げられたりもした。
そして、ブータンにしては、と言っては失礼だが、滞りなくプログラムが進み、
大幅な遅れもなく、13時過ぎに全ての演目が終了となった。
最後に、両国王も参加し、一般参列者も加えて一曲踊り、会はお開きに。
その後、皆、割と足早に三々五々家路についた。
帰りも大混乱になるかと思いきや、意外にもすんなり退場でき、
逆にちょっと拍子抜けした気がした。
以上が、簡単ではあるが、当日のレポートである。
ちなみに、上述の通り “No Camera, No Mobile” というルールだったのだが、
正直、どうせ皆なし崩しに写真を撮りはじめるだろう、と内心思っていた。
が、ところがどっこい、最初から最後まで、写真を撮る人は、
全くと言っていいほど見かけなかった。
第4代国王に対するリスペクトの表れなのかどうかは定かではないが。