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水族館の正しい役割の一つとして「調査・研究」の機能を持っている、もしくは常にそういうことを念頭に入れて活動しなさい、ということが教科書のようなものに書いてある。シーラカンスの生息生態調査とか、不思議生物の飼育研究、または地域の川や海を調べる、など。
他には、水族館がすべきことは自然保護とかなんちゃらかんちゃらと、めんどくせぇことがコレが正しいのだ!と、どうだという感じで書いてある。
オレはフマジメで不良なのでそんなものは守ったためしがないし、真剣に読んだのは生涯で通算2秒くらいしかないのだが、まぁ調査・研究と言うのも大事だな、と思いたって、出かけた。
水族館から車で走ること約45分。場所は『萌えホルモン』というところだった。。。
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…事前調査で、別の地区に「萌え居酒屋」もあることが判明していたが、なぜか同行する調査員A(♀)が「肉が食いたい!!」と、女なのに一緒に行きたいと言い、しかも男子ラグビー部のような顔で肉をたくさん食う宣言をしたので、居酒屋はやめて、ホルモンのほうへ場所が決まった。
メイドホルモン屋。なんだか不気味で気持ちが悪い。怖かった。初めて足を踏み入れる領域。おれはそんなもの楽しいと思わないし、死ぬまで縁のない場所および人類だと思っていたが、調査・研究の一環なのでしかたがない。
その店は隣町の郊外に目立たなく立っていた。メガネでメイドなら世界は平和だという調査員Bを先頭に店に入った。
「ぅおかえりなしゃいませぇぇ~」
と2名のメイドとヘンテコな男が出迎えてくれた。おぉ、コレがメイドの決まり文句というやつだな、ヒルンデしまうぅ。
でもなんだか予想していた決まり文句とテンションが違う。あきらかに「言わされている感」が出ており「本当は言いたくない」というオーラが100段階中100の採点結果。奥の方から「おかえりなさいませぇ~い!」と威勢良く寿司屋のおやじが言う「っらっしゃぁやせぇい!!」というような声も聞こえた。
先が不安である。
思ったとおり店の中は客が少なくガラガラだった。
クツを脱いで、そこでスリッパに履き替えろ、とメイド(のかっこうをしている本当はメイドはやりたくなさそうな女A)が、なげやり早くしろよ的にいうので、ウロタエながらスリッパに履き替えると、5歩あるいたら、座敷にたどり着き、スリッパを脱いで座敷に上がれとメイド(の格好をしている本当はメイドはやりたくなさそうな女A:以下メイドやりたくないヒトA)に言われ、なんだか申し訳ない心境で座敷に上がる。
(スリッパはいらないのではないだろうか)
と思いながら、メニューを見て、3000円飲み食い放題コースを注文。
店の中はなんだか、ソッチ系のはらただしいムカツキソングがにぎやかに流れており、その割には全体の店の雰囲気は障子のふすまや座布団などがあり和風テイストで、「メイドやりたくないヒト」AおよびBがバタバタ歩き回って食材を運んでいる。
「前に潰れた店をそのまま使ってるんじゃない?」
と調査員Bが言った。
間もなく頼んだ飲み物と肉がメイドやりたくないヒトBによって運ばれてきた。Bはメガネをかけているが、格好はセーラー服に緑のネクタイで、もはや格好からしてメイドでもなんでもないじゃないか、という店の意図を疑うような格好だった。
「おいしくなる魔法をかけます」
とメイドAがふざけたことをホザき、一緒にやって欲しいと続けてホザいた。一緒にやって盛り上ろう、ではなくてワタシひとりでやるのはバカみたいで恥ずかしいからキサマらも一緒にやれ、道連れだ、という意味なのだな、ということをコレまでの雰囲気から即座に判断できた。
「おいしくなぁ~れ、萌え、萌え、キュン!」
と言って、飲み物におまじないだか魔術だかをかけた。なにしろ、本人がやらされまくり感100でオロオロしているもんだから、一緒にやれと言われたコッチもオロオロしてしまい、なんだかその場すべてが、やらなきゃ良かった的収集不可能空気が流れ、驚異的なバツゲームのような感じになり、事態は悪化したように思えた。
シラケタ調査員達をのこし、メードはうすらテレ笑いをして「はい、やれって言われてるからやってやったぞ、はい、終わり、だからイヤなんだよっ」という業務的態度を残して去っていった。たぶん魔術をかけたことによってこの飲み物はもともとそれほどうまくないものが、さらにうまくなくなったのだろうな、と思えたし、魔術を一緒にやらされたことによる、はてしない自己険悪感を味わった。
我々は即座に「メード<肉」に攻撃目標を移し、食いに徹することにした。
食い放題は焼肉とメシが食えるのだが、恐ろしく困ったことに肉の種類は自分で選んで注文することはできず、適当にメードAとBがみつくろって適当な肉を勝手に持ってきて、ホレ、食えよ、と言われるまことに凄まじくズサンで斬新なシステムで、どんな肉が来るのかわからないのである。焼肉屋なのに食いたい肉が選べない、メードはなんだか意味不明な消化不良なメイド。とんでもないところに来てしまったものだ。
豚のタンとかホルモンとか、適当なものをメードっぽいAとBが運んでくる。肉の質は下の中レベル。全面的に後悔の念を抱きながら、話も盛り上らずに出された肉を焼く。
肉も驚くことに同じ皿の同じ種類の肉でも厚みが均等ではなく、バラバラなのだ。本当に驚いてしまったのだが、焼いていると先に網に乗せた厚い肉は焼けずに、後から乗せたペラッペラの肉が先に焼けて、というか焼け焦げてしまう、という後から焼いたのが先のヤツを追い抜いてしまう摂食ペース配分を完全に乱す切り方で、この肉は奥の厨房で保育園の子が切っているのではないだろうか?と思えた。
肉の種類は本当にメイドのサジ加減で決まるらしく、勇気を持ってチョットいい肉を、これはダメですか?と調査員AがメードBに聞くと、BはメードAを呼んで、聞いてAはちょっと悩んで「う~ん、まぁ、いいですよ」と言った。上物の肉獲得。でも普通の焼肉屋に比べたら完全に味は劣る。
腸だか胃だかの部分をメードチックな女が持って来てプリプリしていてうまそうなのだが、1カケラが信じられないくらいデカい。焼くと、メラメラと炎が燃え上がり、会席で出る鍋を個別で机の上で温める用の固形燃料のようにボウボウと火が出てしまう。しかも噛み切れずに、口の中で飲み込むタイミングがわからない。
ジジイが今、口の中にある肉よりもあきらかに小さな大きさのコンニニャクゼリーを食ってノドに詰まらせて死んでいる。若いと言えど、コレをそのまま飲み込んだらオレも死ぬかもしれん、と不安になった。カルピスソーダでノドの奥に流し込んだ。
店は少しづつ混み始めてきた。
そこでまた驚いてしまうのだが、入ってくるお客さんに、メードはたまに素で間違えて普通に「いらっしゃいませ~!」と言うことがあった。「おかえりなさませ」を間違えて普通のいらっしゃいませ、と言ってしまっている。。。もはや完全にメードではなく、メードの格好をさせられたなバイトのネーチャンである。
途中から遅れてメード?Cも加わりメード的ネエチャンは3人体制になり、なぜかその後、マッチョな短髪男も店員として現れ、こいつはメード以前に男である。
メードCは先ほど食った豚タンの舌びらはキサマのものではないのか?と思えるいでたちで、我々の心を逆なでした。しかもコイツが一番メイドとしてのノリが良く、メイドとしては優れているのだが、ルックスで失格なので、残念ながら目の前を通過しても視界からは消えてなくなる運命となった。
そんなコスプレバイト女のサジ加減で運ばれてくる肉を淡々と食った。店はとてもケムタイ。天井に伸びた焼肉用の煙の吸い込みパイプを、なんとなしにたどると、配管の途中でバケツがぶらさがって設置されていたり、完全に大きな穴ぼこが空いていたりしていた。
目をショボショボさせて、うまくない肉をしこたま食って、なんだかかなり疲れてしまって帰ることにした。「いってらっしゃいませぇ~」と言われた。
3人いたコスプレバイトの中で一番かわいかったメードとせっかくなので一人づつ写メを撮って、重い体とココロで帰ってきた。
まぁ、、、いい経験だったよ。。。